胆石の本質(胆石はなぜできるのか)

胆汁は肝臓で作られ、胆嚢(たんのう)に送られ、胆嚢に蓄えられて濃縮されます。
胆嚢は小さな袋状をしていて、この袋が収縮する事で、胆汁を押し流し、胆管を通って
十二指腸に送り出されます。この胆汁の成分が胆嚢や胆管(胆汁が通る道)で、固
まったものが胆石になります。胆石はできる場所によって分類されます。胆嚢の内部
にできるものが「胆嚢結石」、総胆管にできるものが「総胆管結石」、肝臓内部の胆
管にできるものが「肝内結石」になります。

胆石は必ずしも症状が出るわけではありません。痛みや症状が出やすいのは総胆
管結石で、胆管から十二指腸の出口に結石が詰まると、上腹部に激痛が生じます。
発熱し黄疸が起きやすくなります。胆嚢結石の場合は、胆嚢が収縮する時に石が移
動して出口に石が詰まると、痛みが起きます。右の上腹部やみぞおちに激しい痛み
が1~2時間続いた後に消えていくのが特徴です(胆石発作)。油っぽい物を食べた
後には、胆石発作が起きやすくなります。それは消化のために胆汁をより多く分泌し
なければならないため胆嚢を急激に収縮し、その勢いで石が移動するからです。胆
嚢の出口に胆石が詰まった状態が続くと急性胆嚢炎を起こしやすくなります。

では胆石がなぜできるかと言いますと、それは胆嚢の袋の内部や胆管内に石を作り
置く事で、胆汁の流れを守ってくれているのです。その石が流れ出て、胆管の口を塞
いだり、移動して胆管を詰まらせてしまうために、一時的に痛みが発症します。
水の流れに例えて説明してみます。小川の流れの真ん中に大きな石を置くと、流れ
がせき止められその両脇は狭くなり、流れが急流になります。また、水道にホース
をつなぎ、水を流したとき、ホースの口をつまんで細くすれば、水の勢いは強くなり、
遠くまで水を飛ばす事ができます。
次に水の圧力で説明してみます。2つの同量の水風船を用意し、一方の内部にピン
ポン玉位の固形物を入れると、それが入った方は、容積が増し大きくなり、内部の水
の圧力も高まります。両方の水風船の口を開いて、同時に水風船に圧をかけてみると、
固形物の入った水風船の方が中の水を勢いよく噴出します。これは慢性の胆嚢炎等
で胆嚢の袋が腫れている時の状態にたとえられます。腫れて炎症が起きると、袋の
収縮がうまくできなくなるので、胆汁の噴出が弱くなってしまいます。この場合、内部に
石という固形物を形成する事で、袋の内部の水圧を高めていきます。これにより弱い
収縮でも、胆汁を勢いよく噴出することができるのです。
以上のような原理が胆石にもあてはまります。つまり胆汁の流れを速くするために、
胆石は作られているのです。

もうひとつの胆石の役割は、胆汁の濃度調整をしているという点にあります。胆汁
の最も重要な働きは、濃い苦味の成分にあります。この極めて苦い成分が、体内
の炎症を鎮め、血液の熱を冷ます作用を担っているのです。胆汁は漢方薬の苦寒
薬、西洋医学の抗炎症剤に相当する大事な働きをしています。胆嚢機能が低下す
ると、十分な濃度が保たれなくなります。濃度が薄くなると、炎症を鎮め血液の熱を
とることができなくなってしまうのです。

胆汁から作られた胆石は、胆汁成分の貯蔵機能の役割を果たしています。それ故
胆嚢機能が低下し胆汁の濃度が薄くなると、体は故意に石を形成し、胆汁でその石
を少しづつ溶かしながら濃度調整をしていくのです。アイスコーヒーを飲む時に、
水で作った氷を入れてしまうと、氷が溶けてきた時にアイスコーヒーは薄くなってし
まいます。けれども、あらかじめアイスコーヒーで氷を作っておき(いわゆる氷コーヒ
ー)、その氷コーヒーをアイスコーヒーに入れて飲むと、氷が溶けてもコーヒーは薄く
ならず苦味の風味が保てます。胆石にはこのように、胆汁の濃度調整の役割も担っ
ています。

胆石は石を作る事で、胆汁の分泌を促し流れを速くし、また胆汁の濃度を濃くする
ための必要な対応だったのです。故に安易に胆石を薬で溶かしたり、衝撃波で砕い
たり、手術で胆嚢を摘出してはいけません。(化膿性胆管炎は命に関わることがある
ので緊急入院が必要な場合もあります)。
胆嚢を全摘してしまうと、胆嚢という袋がなくなってしまうので濃度を濃くする事がで
きなくなります。また胆汁を必要な時に必要な量を分泌することができなくなり、薄い
胆汁が垂れ流し状態になってしまいます。この状態が続くと、胆嚢と共に消化を担う
膵臓や胃に大きな負担をかけていきます。胆嚢を摘出した場合、膵臓や胃に機能低
下が起きるのにはこうした理由があります。また胆嚢をとってしまうと、苦い成分に
よる、体内の炎症を鎮める作用と、血液の熱を冷ます作用がなくなってしまうため、
体の免疫力が急激に低下していきます。

血液の熱を冷ます作用が低下すると、血液は熱を帯びます。そして熱変性による
赤血球の連鎖(くっついてドロドロの状態)を生起させます。これは血液の質の低下
の起点になり、様々な血液疾患にも及びます。血液の質が低下すると、本来の血液
の働きを失い、体の免疫力を低下させるだけでなく様々な病気を発症させます。
また赤血球の連鎖は全身の毛細血管の流れに停滞と詰まりを生起し、心臓にも大
きな負担をかけていきます。

では次になぜ胆嚢が機能低下していくのかを説明していきます。胆嚢が機能低下
する要因は肝臓との関係の中から発生しています。機能低下をもたらす最大の要因
は、 精神的ストレスの持続になります。精神的ストレスの持続は、脳を酷使し、脳内
の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費させます。これらの物質のほとんどは
肝臓で作られ、脳に送られ、また肝臓に還り分解されます。この持続が肝臓に負担を
かけていきます。肝臓が機能低下すると、肝臓に内包されている胆嚢の働きも低下
していきます。

肝臓が機能低下すると胆汁を充分に作り出す事ができなくなります。少ない胆汁を
早く分泌していかなければならないので、胆嚢の収縮作用に負担をかけていきます。
胆嚢の機能低下はこのように精神作用とも深く関わっています。昔から胆石を作る人
は、意志が強固な人がなりやすいと言われています。責任感が強く、物事を諦めず、
最後までやり抜く気質です。こうしたプレッシャーや精神的ストレスは、脳に熱を発生さ
せ、脳に炎症を引き起こしていきます。この脳の熱を冷ます対応として、苦い胆汁を出
し続けるのです。この状態の持続で胆嚢機能は低下していくのです。

この肝臓胆嚢の低下した機能を元に戻すためには、肝胆に大量の血液を集めなけ
ればなりません。機能回復を図るために胆嚢は炎症を起こし、熱や充血、腫れを起
こします。しかしこの状態が慢性的に続くと、体に重大な事態を招くのでこれを回避
するために石を形成し、わずかの収縮でも胆汁を噴出させ、流れを速くする事がで
きるように体が対応するのです。これが胆石の本質と形成の理由になります。

胆石を作らない様にするためには、ストレスをできるだけためないようにし、肝臓、
胆嚢の機能を元に戻していかなければなりません。そして症状の背景にある、自身
の生命力と免疫力の低下を高めていく必要があります。また直接的には、全身の血
液の循環、配分、質(赤血球の連鎖)の乱れを改善していく必要があります。生命力と
は細胞新生力であり、免疫力とは造血力に置き換えられます。細胞新生と造血は共
に骨髄で行われており、生命力や免疫力を高めるには、骨髄機能を発現させる事が
必要です。日本伝承医学は肝臓、胆嚢と心臓の機能を高める事と骨髄機能を発現さ
せる事を目的に構築されています。また日本に古来から伝わる胆石の処方を用います。
さらに家庭療法として頭と肝臓胆嚢の氷冷却法により、脳の熱のこもり、脳内の炎症、
肝胆の炎症や腫れを解消していきます。日本伝承医学ではこのような統合的な取り組
みで胆石に対応しています。