難病の皮膚疾患の丹毒と掌蹠膿疱症について  2016.5.31 有本政治

丹毒と掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしゅ)は皮膚病の中でも、完治が難しく難病の
皮膚疾患になります。原因が特定できず再発を繰り返します。現代医学的には細菌
やカビによる感染症の範疇として扱われていますが難治性の皮膚病です。
以下日本伝承医学的な考察で解説致します。

<全ての皮膚病発生の根拠と機序は共通している>

日本伝承医学の全ての皮膚疾患に対する捉え方は、体内に発生した内熱や毒素を
通常の手段で処理できなくなった時の非常対応と考えています。つまり体内に留め
てはならない内熱や毒素を、皮膚に炎症を起こし穴を開けて、体外にすてる必要な
対応になります。故にこれを薬で封じ込める処置を繰り返す事は、体内に内熱と毒
素をこもらせ、徐々に生理機能を低下させ、病名の付く状態に進行させてしまう事に
なるのです。また必要な対応を封じ込める事は、次なる対応をとらざるを得なくなり
ます。次なる対応とは、内部に腫瘍を作る事での対応を意味します(この機序の詳
細は日本伝承医学のホームページ、熱をすてる五段階の対応の項を参照)。

<丹毒とは何か>

丹毒の語源となっている”丹”とは、赤いという意味です。つまり丹毒とは赤い毒素を
意味しています。その名の通り、皮膚上に赤色の強い湿疹や嚢胞が現われます。これ
は炎症状態が強いことから赤色を呈するわけで、触わると強い熱感が感じられます。
それだけ内部に熱や毒素がこもり、緊急に排出を迫られる必要上から激しく症状を
表わすのです。日本伝承医学ではこうした症状を、特に皮下の毛細血管網に強い熱
と毒素がこもった場合の対応と捉えています。

<強い内熱と毒素の発生は、何によって起こるか>

全体的な体温の上昇ではなく、部分的な内熱の発生は、体内に備えられている熱
(炎症)を鎮静させる作用の低下が原因です。具体的には血液が熱を帯び、この血
熱(けつねつ)を冷ます事ができなくなった状態です。この血熱を下げる働きを担っ
ているのは胆嚢から分泌される苦い胆汁(たんじゅう)になります。

この胆汁の分泌不足が血液に熱をこもらせ、強い内熱の発生の根拠となっているの
です。また血液に熱がこもると、熱変性により、赤血球の連鎖が生じます。赤血球の
連鎖(ドロドロでベタベタな血液の状態)は全身の毛細血管の血流を停滞させたり詰
まらせていきす。これを流すためには、心臓のポンプ力や血圧を高める事で、つまり
や停滞をとる対応を迫られます。これは毛細血管に強い圧力がかかり、毛細血管内
に熱が発生する要因となるのです。これにより血熱と毛細血管の熱が合わさることで
毛細血管に異常な熱のこもりが生起されるのです。

次に毒素の発生の根拠と機序を説明します。それは、肝臓の解毒作用の低下が根
本的な原因になります。この肝臓の解毒作用の低下が、体内で処理できない毒素
を蓄積させる事になるのです。その毒素の代表がアンモニアになります。このアン
モニアが体内に貯留すると脳に障害を及ぼすために、速やかに分解するか排出す
る処置が求められるのです。

<強い内熱と毒素を排出する対応が丹毒の本質>

このように血熱と毛細血管自体の熱の発生によって起こった強い内熱と、体内に留め
てはならない毒素を急速にすてる対応が、丹毒と呼ばれる皮膚病の本質になります。
通常の内熱の処理や毒素の分解、放出では間に合わない場合の非常対応手段なの
です。故に症状は激しく炎症の度合いも強い、真っ赤な皮膚病になります。
丹毒の本質をこのように認識していくことが必要です。内熱や毒素を外部にすてる
対応なので、封じ込めるのではなく出し切る事が肝要です。皮膚病の本質を見誤り
これを封じ込める処置を繰り返してしまうと、体は次なる対応を余儀なくされ、体内に
塊(かたまり)として集め処理する腫瘍へと進行する危険につながることになります。

<掌蹠膿疱症の本質>

病名は変われど、どの皮膚病であってもその根拠と機序は同じです。掌蹠膿疱症の
特徴は手足の柔らかい場所となる手掌部や足裏の土踏まずに発症します。この手掌
部と土踏まず部の皮膚は特殊な場所で、脳内にこもる熱をすてる場所になります。
この部分の皮膚に汗をかくことで、脳の熱を緊急にすてる役割を担っているのです。

わかりやすい例を挙げれば、脳が興奮し緊張が過度に達すると、手のひらに汗をか
いてきます。正に「手に汗握る」とはこの状態を指すのです。手のひらだけではなく足
の土踏まずや足裏にも知らない内に汗をかくのです。

脳内の熱の発生は、精神的なストレスの持続により、常に脳が興奮状態に置かれ
る事で起こります。また脳の熱だけでなく、脳圧の上昇も生起されます。この状態が
持続し、通常の手段で脳の熱や脳圧の上昇が処理できなくなった場合の熱をすてる
対応が手掌や土踏まずに起こる掌蹠膿疱症の本質になります。

脳内の熱の発生は、すでに述べてある肝臓胆嚢の機能低下と大きく関わり、全身の
血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖による)の乱れが根本的な要因になっています。
(詳細はホームページ、院長の日記精神疾患の項を参照してください)。
また遺伝的な心肺機能の低下体質が大きく関わっています。つまり肝心要(肝臓と心
臓)に弱りが生じているのです。故に脳内の熱のこもりと脳圧の上昇を改善するため
には全身の血液の循環・配分・質に一番関与する肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能
を高めていかなければなりません。

これも上記の丹毒と同様に、必要な対応となり、薬で封じ込めても止めればすぐに再
発を繰り返してしまう事になります。また副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤の連続投与
は、免疫力を著しく低下させ、様々な感染症を引き起こす原因となるのです。

<どう対処すべきか>

丹毒と掌蹠膿疱症の根拠と機序が明らかになれば、どう対処すべきかは明白になり
ます。皮膚病の根本原因となる内熱や毒素、脳の熱や脳圧の上昇を元に戻す事が
不可欠です。そのためにはこれまで解説してある様に、肝臓(胆嚢を含む)と心臓の
機能を改善する事が大前提です。また皮膚病が出る場合は、体に大きなねじれの
ゆがみが発生しています。縦長な人体構造にねじれのゆがみが起きると、呼吸や血
液、体液の循環を大きく乱し、熱や毒素の発生を助長します。体に起こったねじれの
ゆがみをとることも皮膚病の改善には必要です。

上記の条件を全て満たす事ができるのが日本伝承医学の治療法になります。全て
の病気の背景に存在する生命力や免疫力の低下を高めるためには、生命力や免疫の
力の大元となる骨髄機能を発現させる事が一番合理的です。また肝心要を整える事
が肝要です。日本伝承医学の治療法は骨髄機能を発現することを目的に構築され、
肝心要を中心に技術が構成されています。また古代人の開発した上体のねじれをと
る皮膚病操法を用います。この様な統合的な方法により難治性皮膚病にとり組んで
います。