帯状疱疹の本質  2016.5.24 有本政治

帯状疱疹は、現代医学的にはウイルス感染症として扱われています。子どもの時に
かかった水疱瘡のウイルスが三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経)や脊髄神経
(体の感覚を脳に伝える神経)の知覚神経節に、遺伝子の形で潜伏し続けています。
それが長い期間を経て、体の免疫力や生命力が低下してくると、遺伝子の形から
ウイルスに戻り、再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に現われて炎症を起こすと
されています。

体の左右どちらかの片側に神経に沿って帯状に水ぶくれができ、疼痛を伴う場合も
あります。疼痛と再発を繰り返し、後遺症として瘢痕(はんこん)が残り、難しい病気と
して扱われています。現代医学では、こうした症状は一方的に悪の症状として捉えて
おり、症状を封じ込める治療に終始しています。しかしいくら封じ込めても再発を繰り
返してしまいます。また封じ込める事によって、副作用や重篤化も起きているのが現
状になります。ではどうしたら良いのか、帯状疱疹を日本伝承医学的に考察していき
ます。

<生きている体の現わす全ての症状には意味があり、一方的に悪ではない>

病気や症状には意味があるという捉え方は、日本伝承医学の首尾一貫した主張で
あります。生きている体の現わす反応は、体を悪くなる方向にもっていったり、早く死
なせる方向に導く事はあり得ません。逆に最後の最後まで、命を守るように対応して
くれるのです。これは生物として生まれて備えている防御手段であります。この視点
で帯状疱疹の症状を捉え直してみると、皮膚上に水疱や湿疹、炎症、痛みを起こす
事で、命を守ろうとしている対応の姿がみえてきます。症状は一方的に悪いことでな
く、必ず意味をもっているからです。

<その意味とは、体内に留めてはならない内熱と毒素を体外に排出し、
 内臓や脳の炎症を回避する対応である>

人体の界面にあたる皮膚に現われる全ての症状は、体内に留めてはならない熱や
毒素をすてる非常手段になります。皮膚には無数の穴が開いていて、体内と外界の
通気口の役割を果たしています。また皮膚は、脳をうすく伸ばした状態といわれてい
ます。皮膚はセンサーの役目を果たしている所で、体に生じた異常をいち早くキャッ
チし、対応していく重要な役割を担っているのです。私たちの体は余計な熱や毒素を
息や涙、汗や尿、便等の通常手段で排出できなくなったとき、この皮膚にある無数の
穴を通して体外へ、熱や毒素をすててくれています。それでも間に合わないときには
皮膚に湿疹やおでき等を作り、化膿させて、熱や毒素を排出しやすいようにしていく
のです。かゆみや痛みを起こすことで、血液を患部に集めて熱を放出させて、当該
部位の内部(内臓)の熱や炎症を鎮静させていくのです。

帯状疱疹の場合は、特に脳や内臓という大切な臓器に熱がこもり、炎症や腫瘍に
進行してしまうのを防いでいます。つまり、脳内に熱のこもりと脳圧の上昇が急激に
発生した場合の、回避するための緊急対応になります。発生した熱や脳圧は徐々に
時間をかけてすてている場合ではありません。命に支障があるからです。このような
時に体は、非常対応手段をとります。その対応が帯状疱疹になります。脳内の熱の
こもりの強い場所の当該部位の皮膚上に皮膚病を出すことで、命を守ろうとするの
です(熱の程度や範囲によって皮膚病の出方にも軽重がみられます)。

内臓も同様です。内臓に炎症が生じるということ事は、命の危険があるということに
なります。肝炎、胆嚢炎、腎炎、肺炎、心筋炎、膵臓炎等どの炎症も重篤な病であり
生命に危険が及ぶ場合があります。脳と同様に、緊急に内熱をすてる対応をとらな
ければなりません。故に当該の内臓部位上の皮膚に、水疱や湿疹等の皮膚病を発
症させていくのです。

内臓を支配している神経は自律神経になります。自律神経の神経節は脊髄神経節
から出ています。神経の経路は脊髄神経と自律神経は別ですが、同じ脊柱の脊髄
神経節の骨間から出ています。この脊髄神経の走行に沿って皮膚病は現れます。
肝臓(胆嚢)が弱り炎症が起きている場合は、胸椎の右の9番、10番の脊髄神経に
沿って帯状に皮膚病が発生します。心臓の場合は、胸椎左の3番、4番、5番の脊髄
神経に、腎臓の場合は腰椎2番辺りになります。顔面は三叉神経や顔面神経に沿っ
て現れます。このように当該内臓の支配神経に沿って帯状疱疹は発生します。これ
により内臓の炎症を速やかに鎮めて、深部に進行し、症状が重篤になるのを防いで
くれているのです。

<水疱瘡のウイルスは原因ではなく、結果として発生している>

現代医学の病因論は、細菌学を基盤にして病気の原因を細菌やウイルスに求め過
ぎています。ほとんどの病気の原因を外部からの細菌に見い出そうとする傾向があ
ります。故に内部(内臓)の弱りには目が向けられません。この固定概念が病気の
本質を見失わせる要因になっているのです。

結核を例に挙げてみます。結核は昔は日本人の死因の上位にありました。しかしそ
の後ストレプトマイシン薬開発により、終息したかのように思われていますが、現在で
も多くの罹患者がいます。結核の診断があった場合は、本人の周囲に結核菌保有者
がいないか、また外部からの感染ルートを徹底的に調べますが、ほとんどの場合見
つかる事はありません。これは外部から結核菌が侵入してすぐに発病したのでは
なく、自分自身の体力や免疫力、生命力が低下した場合に、体内で保有していた結
核菌から発症するからです(高齢者の肺炎が肺炎球菌ウイルスによるものとされて
いるのも同様です)。つまり菌やウイルスは根本的原因ではなく、結果として弱ってい
る場所に、後から発生するのです。

これまで解説してきたように、生きている体の現わす症状には全て意味があります。
それは生命にマイナスになるような反応はしないのです。その意味では、体内で眠って
いるウイルスを発動させてでも、体は命を守る対応をとっていくのです。根本的な要
因は、免疫力と生命力の低下にあります。低下して弱った時に潜伏していた菌が発
現してくるのです。水疱瘡を神経叢(しんけいそう)にそって帯状に発症させることに
よって、内部の熱を速やかに除去し、回復させようとしていくのです。帯状疱疹がで
きたときは、心身共にかなり衰弱している状態にあるということを認識してください。
そして充分な静養と休養をとることが必要です。

<必要な対応を、封じ込める処置に終始してはならない>

帯状疱疹の根拠と機序は上記の通りになります。生きている体が脳や内臓の炎症を
回避する対応として出しているので、薬で封じ込めて消してはいけません。必要な対
応故に、薬で封じ込めても、根本的には改善されません。封じ込める処置を繰り返す
事は、脳や内臓にますます炎症を生じさせることになるので、体は次なる対応に移行
せざるを得なくなるのです。次なる対応とは水腫や腫瘍へと重篤化し、最終的には
がんへと進行する可能性も否めません(詳細は日本伝承医学のホームページ、熱を
すてる五段階の対応の項参照)。

<どう対処していくべきか>

どうすべきかは、帯状疱疹の根拠と機序が明らかになれば、その中にすでに解答は
示されてきます。脳や内臓の熱をすてる対応故に、これを封じ込めないで出し切る事
が肝要です。出し切るまでには時間がかかり、痛みや苦痛を伴いますが、静養しな
がら、免疫力と生命力を高めて根本から改善していくようにします。心身共に休めて
あげれば炎症は3日〜5日位で次第に消失していきます。その間は、氷を使った冷
却法を行なうようにしてください。痛みやかゆみも軽減されます。冷却場所は内臓機
能の弱りによって異なりますので、日本伝承医学臨床士と相談して行なうようにして
ください。どの内臓に熱が発生しているか診断ができれば、的確な治療をしていくこと
ができます。帯状疱疹は甘くみてはなりません。一度相談し受診するようにしてください。