心臓カテーテル治療の予後について 2016.10.3 有本政治

カテーテルとは細い管を意味します。この細い管を介して治療する方法をカテーテ
ル治療と言います。また心臓疾患の検査としても使用します(カテーテル検査)。
カテーテル治療は検査と同様に、局所麻酔の注射後に手首もしくは脚の付け根の
動脈にシースという管を動脈に沿って挿入し、心臓の冠状動脈まで到達させます。
その後挿入したシースからワイヤーやバルーン(風船)、ステント(動脈を拡張する
ための網状の金具)を冠状動脈に装着します。そのバルーンやステントを使って
狭窄をきたした冠動脈を拡げて血液の流れを変える治療を指しています。


<冠動脈の狭窄は何故起きるかーーー
        狭窄したり、動脈を硬化させるには意味がある>

この根拠と機序に関しては、既に狭心症と心筋梗塞の本質の項で詳細に解説し
てありますので詳細は割愛させて頂きます。日本伝承医学が首尾一貫して主張し
ている通り、生きている体の起こす全ての反応は、一方的に悪ではなく、必ず意味
があるのです。以下簡単にその機序を解説します。

冠動脈の狭窄や動脈硬化は、心臓に血液を早く供給するための対応手段になりま
す。血管を狭くしたり、固くする反応は一見悪い反応に見えますが、命あるものの
示す反応には、必ず意味があるのです。生物というものは、自らの体をより悪くし
たり、ましてや早く死ぬ方向に導く事はありません。逆に最後の最後まで命を守り
抜くように対応手段を完璧に備えているのです。

冠動脈の狭窄や動脈硬化はその対応手段の一環になります。心筋の収縮を保全
するためには常に一定量の血液が必要です。この血液の供給に支障が生じてき
た場合、血液を心筋に早く供給する対応が冠動脈の狭窄であり、動脈硬化である
のです。血管内部を狭くしたり、血管そのものを固くする事で血液を速く流す必要
な手段なのです。生物として生まれて、心臓病で簡単に死んでしまっては、生物の
命題であります”種の保存”は達成できません。体の表わす反応を全て悪と見るの
ではなく、症状の捉え方を正反両面の視点から捉える事が求められます(詳細はHP、
院長の日記、心臓疾患の項を参照)。


<血管狭窄という体の必要な対応を機械的に血管を拡張するとどうなるか>

体が生き延びるために、命をつなぐために必要な対応として血管の内径を細くして
いる対応を、わざわざ広げる処置をとるということは、命を守る次なる対応を迫られ
る事になります。
血管の内径が拡大すれば、当然内部の血液の流れは遅くなります。遅くなるという
事は、心筋に血液が供給できなくなる事になります。体は即座に血液を速く流す手
段を講じます。この対応は瞬時に開始されます。瞬時の対応として考えられる事は、
まず血液を流す力である血圧を上昇させます。そして全身の血液の配分を変えて
心臓に血液を集めます。次に広げられた箇所以外の冠動脈全体の内径を細くし、
冠動脈全体を”ガラス管化”(硬化よりもより固くする対応)する事で血液を速く流し、
心筋への血液不足を緊急に補う対応をとると考えられます。

人体の反応は液晶の表示のように瞬時に変わる反応系をもつと考えています(詳
細は拙者小論文の「人体液晶説」を参照)。特に命の源となる血液を運ぶ血管系は、
瞬時に内径や管の硬さを調節する能力を備えていると考えています。これは命を守
る対応として当然備えている手段と考えられます。わかりやすい例を挙げれば、瞬
時に汗が出たり、瞬時に顔色が変わったりするのも同じ機序で起こる反応と言えま
す。

緊急の対応をとって心筋に血液を供給する処置がとられた事で当面は心臓の症
状は回避できます。しかし緊急処置による血圧上昇、冠動脈の負荷の増加、さらに
全身の血液の循環、配分の変動は他の組織器官に相応の負担と負荷をかける事
になります。そして肝心な事は全ての心臓疾患の背景にある本質的な心臓全体の
虚血(血液不足)は何も解消されていません。この状態の持続は、時間の経過と共
に心臓だけではなく、他の臓器の機能低下を生むのは必然です。特に脳への血液
供給不足による症状が顕著に表われてきます。


< 頻脈に対するカテーテル治療 >

カテーテル治療には、心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)と言い、頻脈(脈が
速くなる不整脈)に対する治療法もあります。これは、先端を熱した細い電線のカ
テーテルを心臓内へ入れて、心筋に変性を起こさせ、頻脈を改善していく方法にな
ります。

体は心筋を震わせて頻脈にして、必要としている組織器官に速やかに血液を集め
ようとしているのに、こうした処置を施してしまうと、必要な血液が集められなくなっ
てしまい、体はさらなる対応にせまられてきます。次なる手段として、血圧を上げる
ことで、血液を早く流そうとします。また血管を固くすることで内部抵抗を少なくして
血液を速く流す対応をとります。

これはいわゆる、動脈硬化となります。さらに血管の内径を細くすることで血液の
流れを速くします。これは血管内に脂肪の堆積物(プラーク)を作ることで内部を狭
くして血液の流れを速くします。つまり高血圧、動脈硬化、血管狭窄、血栓を作り
出す大きな要因となってしまうのです(詳細はHP院長の日記、狭心症と心筋梗塞の
項を参照)。

心臓の心拍数は、体の置かれている状況に応じて可変できるように自動調節され
ています。例えば、100メートルを全速力で疾走すれば、全身の組織器官に酸素(血
液)を供給するために、急激に心拍数を上げて、大量の血液を送り出し対応してい
ます。つまり頻脈は異常なことではなく、人体内のどこかに、緊急に血液が必要な状
況に置かれた場合の必要な対応であるのです。
以上の認識は重要で、この認識があると動悸や心拍の上昇に対しての不安が軽減
され、落ち着いて対処ができるのようになります(対処法はHP院長の日記の古代日
本人の心臓観と後世に伝えたい日本伝承医学の心臓調整法を参照ください)。


 〈  カテーテル治療の予後は、脳への血液供給不足が発生しやすく、
                                 脳障害を誘発する  〉


(1)

全身の血液の循環、配分を乱すことで、脳への血液供給が減退し、脳圧の上昇
と脳内に熱をこもらせ、脳血管障害(脳梗塞、脳溢血、クモ膜下出血等)を誘発し
ます。

カテーテル治療により一時的に心臓の症状が楽になる事でほとんどの方が成果
を享受しますが、前項で解説してあるように、体の内部では心臓だけを対象にした
弊害が徐々に進行していきます。

まず最初に現われる症状が脳圧の上昇です。心臓の虚血を補う対応として、血圧
を上昇させ全身の血液の配分を変えて心臓に血液を集めるということは、人体の
何処かに血液の足りない箇所が生まれることになります。その影響を一番受ける
のが常に大量の血液を消費する脳になります。

脳に血液の供給不足が生起されると、少ない血液を脳内に早く循環させる対応と
して”脳圧”を高くする事で対処します。この脳圧の上昇状態の持続は、さらに脳内
に熱もこもらせます。この急激な脳圧の上昇と熱のこもりが脳内の弱った血管に影
響を及ぼし、脳溢血やクモ膜下出血のリスクを大幅に高くするのです。その前兆と
して頭がフワフワしたり、激しい頭痛、めまいが発生します。



次に全身の血液の配分の乱れは肝機能を著しく低下させ、肝臓と心臓の両方の
機能低下は自律神経のバランスを乱し、交感神経緊張状態を生み、精神疾患(う
つ病)を誘発します。

全身の血液の配分の乱れは、前項の脳に続き、血液の大量消費と貯蔵に関わる
肝臓の機能を著しく低下させます。元々人間の病気発生の二大拠点となる脳と肝
臓は精神的なストレスの持続により既に影響を受けています。それをますます助
長させることになるのです(詳細はHP院長の日記、精神的なストレスと肝臓と頭の
関係の項を参照)。

”肝心要”(かんじんかなめ)の語源通り肝臓と心臓の弱りは、人体にとって最重要
な臓器であり、この機能が低下するという事は、全身の血液の循環・配分・質(赤
血球の連鎖によるベタベタドでロドロな血液)に乱れが生じます。命の源の血液の
循環・配分・質が乱れるという事は様々な病気の直接的な要因になり非常事態です。

人体はこれを回避する対応をとる事になります。それは自律神経の一つの交感
神経を優位に働かせて、肝臓と心臓の機能を元に戻そうと働くのです。これは体
にとって必要な対応なのですが、一時的に不眠や睡眠障害、夜間の頻尿、首から
背中、腰の筋肉のコリとこわばり、痛み等を引き起こします。

体が交感神経の緊張状態になると、昼間の体状態にしてわざと眠らせなくします。
昼間の体の状態にする事で、特に心臓の機能を元に戻そうと働くのです。つまり
眠れないのではなくて、わざと眠らせなくするのです(詳細はHP、院長の日記、眠
れないのはわけがあるの項を参照)。

この機序を知らず、不眠を一方的な悪と捉え、睡眠薬で眠らせてしまうと心臓の機
能は元に戻らず、ずっと交感神経緊張状態が持続する事になります。この状態の
持続は次第に精神と肉体両方を疲労させ、疲労が抜けなくなり、体のだるさが表わ
れ、精神的な集中力が持続できなくなり、根気や、やる気を減退させていきます。
この状態の持続は、遂には精神疾患へと移行するのです。



肝臓と心臓の機能を元に戻す対応は臓器に熱を発生させ、熱は上に上る性質が
あり、熱の上昇が脳内にさらに熱をこもらせ、頬の紅潮が生じます。
肝心要と言われる様に最重要臓器である肝臓と心臓の機能の低下が著しくなると、
体は優先的これを元に戻す対応をとります。その手段は、臓器に熱を発生する事
で機能を元に戻そうと働きます。大きな臓器である肝臓と心臓両方に熱が発生する
と、熱は上に上る性質があるため脳に熱がこもってきます。
既に脳圧の上昇により脳内に熱は発生しており、これと相まって脳内に異常な熱
を生じさせるのです。

この特徴的な兆候として、顔面の頬に赤ら顔が生じます。頬骨の上あたりが紅潮
します。肝臓と心臓に熱がこもった人に見られる特徴的な紅斑になります。一見
顔色が良く見えますが、脳障害を起こしやすい危険な兆候の一つになります(東洋
医学では「肝陽上亢」と表現して、肝臓と心臓の弱りを表わします)。


<どう予防すれば良いか>

カテーテル治療では、直接的な心臓の症状は軽減できても、上記した様な予後が
現われやすくなります。心臓疾患を根本から克服したわけではないのです。心臓機
能を改善していくためにはもっと統合的な取り組みが必要になります。

心臓疾患の根底には、心臓の虚血(血液不足)が必ず存在します。まず心臓へ血
液が供給できる状態に戻す事が大前提になり、予後を安定させるためには不可
欠です。これを達成するためには、全ての病の背景となっている自身の生命力や
免疫力の低下を補い、直接的な要因となっている全身の血液の循環・配分・質の
乱れを整える事が必要です。そしてこれと並行して心臓を動かしている電気エネ
ルギーを高め、電気情報の伝搬を修復する事も必要です。これらを最も効率的に、
合理的に行なえるのが日本伝承医学の治療法になります。家庭療法と合わせて
自助努力をしていくことも大事です(詳細はHP、院長の日記の心臓疾患の項を参照)。