身体調整法の原理/操体法 2021.3.24 有本政治
なります。
操体法は仙台の医師橋本敬三氏(1897~1993)が発見開発した身体のゆ
がみをとり、痛みを軽減させる「身体運動の原理」になります。体を操
つる原理ということで「操体法」と呼ばれています。
私と操体法との出会いは、操体法がまだ世に出る前までにさかのぼり
ます。鍼灸界の大家である医師間中喜雄氏(1911~1989)が橋本敬三氏と
交流があり、間中氏が勤めていた北里大学東洋医学科に、操体法の技法
が伝えられていました。私が鍼灸学校2年のとき、間中氏の元で東洋医
学を学んでいた同級生の原宣之氏を通して操体法を知りました。
私はすぐに仙台の橋本敬三氏を尋ね、直伝で操体法の原理を学びました。
その後、日本バレーボール界の第一人者でミスターバレーボールと呼ば
れた森田淳悟氏の右肘痛を私が操体法で治したのがきっかけで、スポー
ツトレーナーの世界に入りました。
操体法では人の病気の根本原理を「食・息・動・想」として解説して
います。食とは食生活のことを指します。「人間の食生活は、歯の種類
のバランス関係から穀物中心であることが言える。犬歯は臼歯の7分の1
になることから、肉の摂取は1週間に1回位で良い。」と、橋本敬三氏は
話していました。
息は呼吸の仕方、動は身体の動かし方、体の使い方、想は情動、精神
状態のことを言います。日本伝承医学ではこれに眠(睡眠)を加え、
「食・息・動・想・眠(しょくそくどうそうみん)」としています。
操体法は、原理通りに行なえば誰が行なっても効果を出せる技術にな
ります。原理は実にシンプルです。
『関節の痛みのある動きや方向から、痛くない動きを探しながら、気
持ちの良い方へ動かし、バック運動を行ない、これに抵抗をかけ、合図
と共に一気に脱力する方法になります。呼気(吐く息)に合わせて行ない
ます』
【操体法のコツ】
痛くないバック運動に抵抗がかかったら、全身を連動させるように動
くことがコツであり、術者はこれをうまく誘導するように言葉かけして
いくことです。
実技1 : 膝裏の圧痛をとる操体法
受者は仰向けになります(資料の図、動画参照)。
膝裏の筋群はヒフク筋とヒラメ筋で、足関節の底屈筋となります。これ
と逆の足関節背屈に作用する下腿前面の前脛骨筋を収縮させて瞬間脱力
させることで、ヒフク筋、ヒラメ筋のしこりがとれます。
これは腰痛の治療法になります。膝裏の圧痛とは東洋医学の「委中穴」
「委陽穴」にあたり、東洋医学の基本操法の「腰背委中に求む」(下記
四総穴歌参照)と同等の効果があります。
受者はうつ伏せになり両膝を曲げます(資料の図、動画参照)。両膝下
を左右に回旋して、痛みのある方向から逆のバック運動を呼気に応じて
行ない、抵抗がかかった時点で全身を気持ちよい方向に連動させ、スト
ンという合図と共に全身脱力します。これを両膝の左右回旋のバランス
が整うまで行ないます。これにより膝関節のねじれがとれ、膝関節痛が
除去されます。これにプラスして前出の膝裏圧痛除去法も加味すること
で、膝痛に、より著効を示します。
【四総穴歌】
『鍼灸聚英(しんきゅうじゅえい)』という古典に掲載。
手足の四つのつぼで、全身の治療ができるということ。このつぼを
「四総穴」という。
(人体模型の緑色の〇印参照)
『 肚腹(とふく)「三里」(さんり)に留め
腰背(ようはい)「委中(いちゅう)」に求む
頭項(ずこう)「列欠(れっけつ)」を尋(たず)ね
面目(めんもく)「合谷(ごうこく)」に収む 』
(注)本来合谷穴は目の特効穴として使用するので面口ではなく面目が正
しいとされる
意訳:おなかの病気は、足の三里に鍼や灸をすると楽になり、背中や腰
の痛みは、足の委中(膝の真後ろ)の鍼が効く。頭や首の後ろは、
列欠(手首のやや上・肺経)がいい。顔や目の病気には、手の合谷
がよく効く。