生命の仕組みに準拠した日本伝承医学の治療法 2016.8.2 有本政治

生命とは何か、この問いに答えることは容易ではありません。様々な要素が複雑
に絡み合っていて、何から手をつけていいのかわからなくなります。しかし、生命を
成り立たせるには、必ず仕組みに相当する部分が存在します。生命のしくみを探る
ことで、生命とは何かの解の一端にせまれるものと確信します。
ここでは「生命の仕組み」に的を絞って、あたりまえの再発見をしてみたいと思いま
す。生命あるものとは、つまり生きている状態です。生きているということは、何か
が常に発生し、変化していってるのです。変化するだけではなく持続して行く必要が
あるのです。


〈 古代日本人の生命観 〉

古代の日本人はその辺りを見事に掴んで「イノチ」と言う言葉を作り出しています。
日本語は表音文字と呼ばれ一字一字に意味があります。古代人が残したカタカ
ムナ文字から「イノチ」ということばを解明してみます。「イ」とは生命の最小粒子
のことで素粒子(電気粒子)と呼べる存在です。「ノ」とは変遷しながらと言う意味です。
「チ」とは持続すると言う意味になります。つまり「イノチ」とは目にみえない生命
の最小粒子といえる電気粒子が発生し変遷しながら持続して行く様を言います。
これは見事に命の本質を表している言葉になります。イメージ的には光が点灯し
点滅ランプが途切れることなく光の帯として点滅し続けながら移動して行く様です。
これが発生しなくなった時が死です。


〈 生命の仕組みは「物質」「エネルギー」「情報」の三態 〉

命をこのように解釈して、これが生きている状態と考えた場合、これを成立させ
るには最低限三つの要素が必要になります。先ほどの光の点滅イメージを例にし
て例えれば、点灯点滅する何らかの物質で出来ており、点灯し、光って移動するに
は何らかのエネルギーが必要であり、点滅しながらある方向へ移動するにはそれ
を制御する情報が必ず必要になります。

このように生命の仕組みとは、何らかの「物質」で構成されていて、命を成り立たせ
る上で不可欠な物資が存在する。それを動かす「エネルギー」がなくてはならない。
そしてそれらを制御する「情報」(受容、伝達、処理、反応)の設定が必要です。つま
り生命の仕組みは「物質」「エネルギー」「情報」の三態が絶対必要条件になるのです。

人間の命を成り立たせている一番重要な物質は何なのか?
何をエネルギーに動いているのか?
何が情報の担い手として働いているのか?
様々な要素、要因がある中で究極的には何になるのか?


〈 「物質」「エネルギー」「情報」を具体的に人体にあてはめる 〉

これを具体的に生きている人体に当てはめて考えてみますと、様々な物質が生命
維持には不可欠ですが、究極的になくてはならない物質とは「酸素」になります。
続いて人体を動かしているエネルギーは「電気」です。脳も心臓も筋肉も微弱な電
気をエネルギーにして動いています。そして情報としての役割を担っているのは「磁
気」であります。脳は情報の司令室であり、その信号には電気と磁気を使用して作
動しています。さらに脳の記憶はコンピューターと同じ様に磁気記憶となります。磁
気は分子や原子レベルの物質に作用すると考えられています。
最近の研究で脳内の松果体は磁気に反応して作動していることがわかってきました。

生命体の幅を拡大して地球や社会も生きてると考えてみますと、地球の生命体の
ほとんどを育んだ不可欠な物質は酸素であり、文明社会を支えているエネルギー
は電気であり、情報として活用されているのは間違いなく磁気ということになります。
人間個人の命を維持するにも、地球生命と文明社会を維持するのにも、なくてはな
らないものは物質としての酸素、エネルギーとしての電気、情報としての磁気の三
態が必要条件なのです。
故に生命を維持し生命力を高めていくためには、物質としての酸素の供給と運搬
電気エネルギーの発生と蓄電、情報を支える磁気の発生と伝達が不可欠となるの
です。


〈 生命物質として最重要なものは血液であり、
                この循環には「エネルギー」と「情報」が必要 〉
これをより具体的に人体にあてはめてみます。人の命を維持する物質で供給がな
くなれば、即、死に至るのは、間違いなく「酸素」です。食べ物や水は飲まず食べず
でも何日かは生きられます。呼吸=酸素が止まれば3分50秒で死に至ります。
大気中から酸素を取り入れないと命は維持出来ないのです。
この酸素を取り入れて、これを全身に運ぶ手段が血液になります。酸素をヘモグロ
ビンという物質に変えて、血液中に溶かして全身にくまなく運ぶのです。人体におい
ては、酸素=血液とも言え、生命物質を拡大すれば「血液」は命の源なのです。
この血液を運ぶには血液を流すポンプと輸送菅が必要となり、心臓と血管がその
役割を担っています。血管は単なる血液を流す管ではなくエネルギーや情報を伝
達する伝達手段としても機能しています。

血液を流す心臓のポンプを動かしているのは電気であり、血管内の血液の動きは
心臓ポンプと重力以外に赤血球同士の電磁気的な反発作用も関与していると考え
られます。そして骨伝導、神経、血管内を電気が流れることで電磁誘導により磁気
が発生します。この磁気が伝達する事で情報として作用するのです。

心臓と肺は一時も休む間もなく死の瞬間まで働き続けます。それを支える物質が
大気中の酸素であり、心臓と肺を動かすのがエネルギーとしての電気であり、それ
を制御している脳の指令に情報としての磁気が関与しているのです。
生命の仕組みに物質としての酸素=血液、エネルギーとしての電気、情報としての
磁気が不可欠である事が具体的に見えてきました。


〈 生命力や免疫力を高めるには、生命の仕組みにアプローチする 〉

この機序が明らかになることで病気治しの原理がはっきりと見えてきます。
「氷山の一角」のことば通り、病気は表に現れている症状だけではなく、その背景
にはその人の生命力、免疫力の低下が必ず存在します。目に見える症状だけを
対象にしていては真の回復とは言えず再発もあり、益々重篤な方向に移行してし
まう場合もあります。

真に病気を回復に向かわせるためには、目に見える症状を取ると同時にその人の
生命力、免疫力を高める治療が必要です。そのためには生命の仕組みとしての三
態を活用しなければ生命力、免疫力を高めることはできないのです。
つまり病気回復の方法は、物質、エネルギー、情報の三態全てを統合的に活用し
て低下した生命力、免疫力を元に戻すと共に症状の回復を図るべきであります。

残念ながら現在行われている医療のほとんどが物質的アプローチのみになってい
ます。薬という化学物質を使って症状を消したり、抑え込んだり、封じ込めたりして
治そうとするものです。これは一面の真理は有していますが統合的なアプローチで
はなく、生命の仕組みに準拠しているとは言えないのです。部分的な治療法と言わ
ざるを得ません。

それに比較して伝統医療であります日本伝承医学や東洋医学では、生命の仕組
みの三態を見事に駆使して病気にアプローチしています。現代医学と比較して、優
劣の問題ではなく次元的には、はるかに高次元で統合的な医療体系なのです。

物質を極限化していくと、全ての物質は、分子ー原子ー原子核ー陽子ークオー
クー?となって行きその先は未だ不明です。原子では中心に核がありその周りを
電子が縦横に回っています。原子の大きさは10のマイナス8乗cmで当然肉眼では
見えず電子顕微鏡の世界です。原子レベルの世界で物質は、物質でもあり、エネ
ルギーでもあり、情報とも言える存在になってきます。この段階での物質、エネル
ギー、情報の関係は、時間と空間の条件次第で相互に互換性があり、自由に相互
変換出来る存在と考えられています。


〈 古代日本人は生命の仕組みを解明していた 〉

古代の日本人はその事をすでに掴んでいたようです。大気中から酸素という物質を
体内に取り込むのだが、大気中の「気」という物質は目には見えず、物質でもあり、
エネルギーでもあり、情報でもあると気づいていたのです。生命の最小粒子であり
これが無いと生きていけないと直感していたのです。

古代日本人の作り上げた「イキ」と「イノチ」という言葉は見事にその事を表していま
す。「イ」とは目に見えない生命の最小粒子いえる電気粒子を指し、「キ」とは発生
するという意味です。目に見えない生命の最小粒子が発生する様を「イキ」と表現し
ているのです。イノチとは前述してありますように、生命の最小粒子が変遷しながら
持続する様を表します。
つまり、イキすることが生きている状態で、イキしなければ酸素粒子が取り込めない
から生きて行けず、イノチは持続出来ないのです。イ(生命の最小粒子)のキ(発生)
があり、生命の最小粒子が変遷しながら持続することでイノチが育まれるのです。
イキとイノチという言葉の分析からわかるように、日本の古代人の直感力と洞察力
には驚かされます。そして高度な医療技術を発明開発していたのです。


〈 骨に生命の源を発見していた 〉

また、古代人は命の根源を骨に見出していたのです。日本人は世界一骨を大切に
する民族です。骨という物質は肉体が滅んでも保存状態に依っては何億年も残りま
す。その中に遺伝子情報が保存されるのです。この遺伝子情報があればいつでも
個体発生が可能なのです。生物として一番大切な情報は堅固な骨の中に格納した
のです。

骨の成分はリン酸カルシウムでできており、体内の化学合成やエネルギー生成に
不可欠なリン(p)と各細胞の機能を調節するために最も重要なカルシウム(ca)の貯
蔵庫の役割も担っています。つまり骨こそ、生命活動の中心たる物質が集積してい
る器官なのであります。また日本伝承医学の活用する骨の特性である圧電作用と
人体中最速で最大の伝達系の役割を担う骨伝導を備えています。必要不可欠な生
命物質であるリンとカルシウムの貯蔵庫であり、電気エネルギー発生装置であり、
最大最速のエネルギーと情報の伝達系であるのです。 この骨の重要性を発見し、
知っていたからこそ骨を大切にしたのです。
 骨とは、単なる体の支えではなかったのです。体の中で実際に活動している部分
は主に内臓であるため、我々はどうしてもそちらに目がいってしまいますが、臓器と
しては内臓と同じ位に重要なのが「骨」なのであります。日本の古代人は、このこと
をみごとに発見し、生命の仕組みに準拠した骨の機能を発現させる技法を開発し
ていたのです。

〈 骨の特性を駆使した治療法を発明した 〉

「イ」という電気粒子の発生を骨に見出し(圧電作用)、その発生した電気粒子の伝
達手段に「骨伝導」を使用し、電気が流れることで電磁誘導を起こし磁気が発生し
ます。こうして発生した電気と磁気は骨伝導を介して全身に伝達します。
そして骨の中の骨髄の機能を発現させ、骨髄造血幹細胞により細胞新生と命の源
の血液を造血するのです。また正常な遺伝子の複製、遺伝子の機能を発現させる
ことができ、がん治療に対しても大きな効果を発揮します。

生命力とは細胞新生力であり、免疫力とは造血力に置き換えられます。生命力と免
疫力を一番効率的に高めることが出来るのです。さらに最大最速の伝達系である
骨伝導のエネルギーと情報の促進により、神経系、血管系が作動し酸素を運ぶ血
液の循環、配分、質をコントロールします。

東洋医学ではこれを「気血の調和」と呼びます。気を補充し、気が流れることで血
液が流れると考えています。気とはエネルギーや情報を指し、血とは血液を指しま
す。気を集める方法として体に鍼を指してエネルギーを集めたり、エネルギーを抜
いたりします。気の伝達路として、目に見えない無線系の経絡を使用し、気の出入
箇所として経血(ツボ)を使うのです。

日本伝承医学では気血の調和を骨に一元化しています。骨の特性である圧電作
用を使用して、骨に圧や振動(ゆり、ふり、たたき)を与える事で電気(エネルギー)を
発生させています。そしてその伝達手段として、東洋医学の用いる目に見えない伝
達系ではなく、人体の中心に歴然と存在する最大最速の伝達系の骨伝導を使用し
ます。最大最速の伝達系の通りが良くなれば自ずと無線系の伝達も改善します。
これにより鍼や灸という道具を用いることなく、確実にエネルギーとしての電気を発
生させ情報としての磁気を全身に伝達出来るのが最大の特徴になります。日本伝
承医学の真髄はここにあるのです。


〈 生命の仕組みに準拠した方法が病気を回復に向かわせる 〉

生命の仕組みをこのように認識出来れば、どうすれば病気を回復に向かわせるこ
とが出来るかがはっきりと見えてきます。人体の低下したエネルギーを高め、情報
の通りを良くし、血液の循環、配分、質を整えればどんな病気も回復に向かわせる
ことが出来ます。原理原則を把握する重要さがここにあるのです。あたりまえの再
発見ではありますが、生命の仕組みを知ることにより何をすべきかが明確になるの
です。
このように日本伝承医学の治療法は、生命の仕組みの三態となる物質、エネル
ギー、情報の全てを駆使し、生命の仕組みに準拠した高次元で統合的な治療法で
あります。