人の体のナゼとワケーーー卵巣疾患の本質


日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、現代医学の捉え方とは異なります。
180度換えた視点で病気や症状を捉えています。生物として生まれて生きとし
生けるものは、自らの体をより悪くする方向に、また自らの命を縮めるように、
死に到らしめるために体に症状を起こしている訳ではありません。逆に体を
元に戻すために、最後まで命を守り抜くために、一時的な必要対応をとって
いるのです。現代医学とは異なるこの視点に立って、卵巣疾患の本質を考え
てみたいと思います。まず、卵巣の働きと卵巣疾患の症状の表れ方、現代医
学的な原因と治療法を説明します。

卵巣には、卵子を育て排卵する作用と、妊娠に備えて子宮を調整する女性ホ
ルモン(卵胞ホルモン=エストロゲンと黄体ホルモン=プロゲステロン)を分泌する働き
があります。卵巣は子宮の両脇にある親指大位の臓器で、アーモンドの実やそ
ら豆のような形をしています。その中に、卵子の元になる数百万もの原始卵胞を
持っています。原始卵胞は初潮とともに成熟し、その中で育った卵子が毎月ひと
つずつ左右交互に卵胞をとび出し、卵巣から排出されます。これを排卵といいます。

この排卵と女性ホルモンの分泌は脳からの指令と深く関わっています。脳幹部に
ある視床下部と下垂体から出る性腺刺激ホルモンの指令によって、女性ホルモン
が分泌されるからです。このため精神的ストレスが過度に多くなると、脳幹部に熱
がこもり、性腺刺激ホルモンが正常に分泌されなくなってしまい、女性ホルモンが作
用できず、卵巣機能低下症や卵巣機能不全症等の症状を起こしやすくなります。
このように卵巣の機能は心労や精神的ストレスとも大きく関わっているということを
知って頂きたいと思います。

卵巣の病気は大きく三段階に分けられます。初めは卵巣炎という卵巣の炎症から
始まります。次第に卵巣のう腫に移行していきます。最終的に、卵巣ガンに移行
する場合があります。

卵巣は体の中で最も炎症や腫瘍が生じやすく、扁桃腺炎と同じように慢性の
炎症が起こりやすく、様々な種類の腫瘍が出来やすい臓器と言われています。
その中でも卵巣炎は、細菌性の炎症とされ、薬で封じ込めると慢性化し、
より重篤な疾患に移行してしまう場合があります。卵巣炎は、単独ではなく卵
管も同時に炎症を起こし、急性期は、卵巣や卵管部の痛みと40度近い高熱
が出ることがあります。軽い出血やおりもの増加も見られます。薬で抑えても
扁桃腺炎と同様に一時しのぎで、ほとんどが慢性化し、体がだるくなったり、
微熱が続いたり等の不定愁訴のような症状を発生させます。この症状は対
症療法に終始すると急性白血病を併発し、死に至る場合があります。

卵巣疾患の多くは次にあげる卵巣のう腫と呼ばれる疾患で、卵巣内に液体や
脂肪の袋が出来てしまうもので、腫瘍は触ると柔らかく、水の入った袋のような
ものになります。中身の種類によって、四種類に分けられます。
@漿液(しょうえき)性のう腫ーーー卵巣から分泌された透明の液体の入った腫瘍
A粘液性のう腫ーーーゼラチン状の粘液の入った腫瘍
B皮様性のう腫ーーーー原始卵胞が分裂し、毛髪や歯といった、ドロドロした物
               質がたまっている腫瘍
Cチョコレートのう腫ーー子宮内膜症で出血した血液が貯まり、チョコレート色の
                物質がたまっている腫瘍
このように分類されていますが、いずれも袋の中に液体やゼラチン状の物が入って
いるのが、卵巣のう腫の特徴になります。

のう腫は初期の段階では自覚症状はほとんど無く、進行して肥大してくると、そけ
い部に違和感や固まりを感じたり、排卵時に軽い痛みや圧迫感、軽い出血を伴
ってきます。さらにのう腫が肥大し大きくなると、卵巣の根元の茎の部分が回転し
て捻れる「茎捻転」を起こし、激痛を起こす事があります。

卵巣、卵管炎の場合は現代医学では細菌感染と捉え、抗生物質や解熱剤、
鎮痛剤等の処方が行われます。卵巣のう腫の場合は、小さいのう腫のうちは経
過をみることが多く、握りこぶし大くらいになったときに摘出手術するかどう
かを判断します。さらに大きくなってしまった場合は捻転の恐れがあるため摘出
手術を行ないます。しかし卵巣は、卵子を作る場所であり、大切なホルモン器官
であるため、両卵巣を摘出することはできるだけ避けられています。

現代医学ではこのように、卵巣炎や卵巣のう腫を一方的に悪い反応として捉
えていますが、日本伝承医学では以下のように卵巣炎や卵巣のう腫の本質
をみていきます。


卵巣は女性にとって重要な器官なので、病気にならないように、細菌やウイル
スに侵されないように生命力や免疫力を高く保ち、守っている場所になります。
本来病気になりにくい場所であります。生命力や免疫力の高いこの場所が病
気になるということは、その人の持つ生命力や免疫力が著しく低下していること
を意味します。直接的原因としては、卵巣への血液供給が不足しています。血液
は命の源(みなもと)であり、体は血液がとどこおることによって様々な症状をそ
の部位に発生させていきます。血液の供給不足は、全身の血液の循環、配分、
質の乱れによって生じてきます。こうした原因により、卵巣機能が徐々に低下し
ていくのです。

低下した卵巣機能を元に戻すためには、体は卵巣に熱と充血を起こし、卵巣
機能の回復を図ります。これをさらに促進させるために、体温そのものを上
げていきます。40度近い高熱を発するのはこのためです。大切な場所の機能
をいち早く元に戻す対応が、炎症と高熱という症状になります。これを安易に
薬で封じ込めることを繰り返すと症状を慢性化させ、さらにもっと重篤な病状に
移行させてしまうことになります。

次の対応が卵巣のう腫です。卵巣は卵子を育て、女性ホルモンを生成分泌する
大切な器官であります。この機能を維持するために、卵巣内の環境を最適に保
たなければいけません。そのために卵巣内に発生した内熱や処理出来ない毒素
は、いち早く外部に排出させる必要があります。この排出する力が低下したとき、
体は、卵巣の機能を守るために、内熱や毒素を袋に集めて、一箇所にまとめて
処理する対応をとるのです。これが「のう腫」形成の原因のひとつになります。

さらに卵巣にはもう一つの重要な働きがあります。それは、育てた卵子を排卵す
ることです。そのためには、卵巣内の圧力を高め、かなりのエネルギー(押し出す
力)を必要とします。排卵後に基礎体温が急激に上昇するのはこのためです。
また、体温が上昇することで、排卵しているかどうかの判定にもなります。
この働きがうまく出来なくなると、体は卵巣という袋の中に、もう一つの水の袋
を作る事で内部の圧力を上昇させ、排卵を助けようと働くのです。卵巣の外膜を
破るための内部圧力の向上手段として、液体袋を作り、排卵を助ける対応をと
ります。故に四種類の「のう腫」の全ては、柔らかい液体袋にならざるを得ない
のです。

つまり卵巣の二大機能である女性ホルモンの生成分泌と、卵子の育成を守り、
排卵を成し遂げるために、必要対応として「炎症や高熱」「のう腫」を形成して
いるのです。卵巣は体の中で、炎症と腫瘍を一番起こしやすい臓器と呼ばれる
理由がここにあります。卵巣に炎症を起こす事で機能を元に戻そうと対応し
ているのに、これを薬で封じ込めたり、手術で取り去ってしまう行為は、治して
いるのではなく、症状をより重篤な方向に移行させてしまうことになるのです。
視点を換えて、卵巣疾患の本質を捉え直していくと、こうした新たな真理がみえ
てきます。

このように卵巣炎、卵巣のう腫発生の原因と根拠と機序が明らかになれば、ど
うすれば回復に向かわせる事が出来るかが明確になります。それは、病の背
景にある低下した生命力と免疫力を元に戻し、全身の血液の循環、配分、質
の乱れを整え、卵巣に新鮮な血液が充分に供給出来るようにする事です。
これにより炎症やのう腫を形成しなくてもよい環境ができるからです。

日本伝承医学の治療は生命力と免疫力を引き上げるのに最も適した治療法
になります。生命力とは細胞新生力であり、免疫力とは造血力に置き換えられ
ます。細胞新生と造血は共に骨髄で行われています。日本伝承医学は骨髄機
能を発現させ骨髄機能を上げることができます。細胞新生と造血を促し、生命
力と免疫力を高めていくことができる治療技術になります。また全身の血液の
循環、配分、質の乱れに大きく関与している肝臓と心臓機能を、肝胆の叩打法
と心臓調整法で改善していくことができます。

卵巣から出る女性ホルモンは、脳幹から出る性腺刺激ホルモンによって分泌
されます。脳は精神的ストレスの影響が最もでやすい場所であり、脳幹に熱が
こもることから性腺刺激ホルモンが卵巣に届かなくなるのです。この脳の熱の
こもりも、血液の循環、配分、質の乱れを整える事で改善されていきます。
さらに家庭療法としての、頭と肝臓の氷冷却法で、頭と肝臓の熱のこもりを速
やかに除去することができます。卵巣の直接的な調整法としては、古代から
伝承されている日本伝承医学の「ふり操法」を用います。このような統合的な取
り組みにより、薬や手術に頼らなくても、本来の卵巣機能を回復させていくこと
ができるのです。