パニック障害(不安神経症)の本質と対処法 2017.4.7 有本政治


不安神経症の一部に位置づけられるパニック障害で不安な日々を送っている方が
ふえています。症状が発生した時は、激しい動悸と息苦しさ、胸苦しさ、息ができな
い、気持ち悪さ、嘔吐等で、このまま死ぬのではないかと言う恐怖でパニックに陥
ります。この様な発作に何度となく襲われると、誰でも怖くなり、ほとんどの人が精神
科や心療内科を受診し、パニック障害として症状を止める処置を受ける事になります。

パニック症状が出ている時には、睡眠障害や情緒不安定、頭痛やめまい、食欲不振
等の症状も出やすくなります。この時点で、パニック障害、うつ病、自律神経失調症
等の診断名が付けられ、薬物療法が始まります。薬により症状が封じ込められた事
で安心感は得られます。しかしほとんどの場合、薬物の依存症になり、一生薬から
離れられなくなってしまうのです。

重要なことは、何故この様な症状が出るのかと言う根拠と機序を認識する事です。
パニック障害の本質を正しく知る事が、症状を改善していくことにつながります。ほと
んどの人がその本質を理解する事なく、症状を封じ込めて消そうとしますが、これ
は薬物で症状を無理やり消しているだけで、治っているわけではありません。その
証拠に薬物依存の人の表情からは、“覇気”が消えているのです。また体において
も自律神経失調からくる、交感神経緊張症状の首から背中全体にかけての硬直症
状が起こり、慢性的に肩首の痛みやこり、背部痛や腰痛が発症してきます。

睡眠においても睡眠薬で無理やり寝ているだけで、健やかな目覚めなど望むべく
もないのです。さらに長期の服用は当然心身とも副作用を伴い、重篤な精神疾患
への移行も起こりやすくなります。また当然肉体においても生命力や免疫力が低下
し、脳疾患、肝臓疾患及び様々な感染症にも罹患しやすくなるのは必然です。
この状態を打破するためには、病気や症状の本質を知る事がその手掛かりとなる
と考えます。以下日本伝承医学的にみた「パニック障害」の本質を解説し、その対処
法を提示したいと思います。


『体に起こる症状は早く死なせるために起こしているのではなく、その逆で命を
守るための一時的な対応ーーーー全ての症状には意味がある』

パニック症状がどういう命を守る対応なのかを解説していきます。パニック時の症状
は、急激な激しい動悸と息苦しさ、意識が遠のく様な感じやめまい、胸苦しさで、狭
心症や心臓発作と同様な症状が起きやすくなります。極度の恐怖心や、危険な場
面に遭遇したとき等に起こる体の反応に近い症状が起こるのです

これらの症状は、心臓を最大限に早く拍動させて(動悸)、全身の筋肉や臓器に速
やかに血液を供給しようとするために起こります。また酸素をいち早くとり入れるた
めに激しい呼吸になります(ゼイゼイハーハーという激しい呼吸)。全速力で急激に
これらが行なわれるために、それに伴う息苦しさや胸苦しさが出てきます。また頭
の中も血液の供給が途絶えるために、頭痛やめまいが起こります。

これらは全て心臓と肺を最大限活発に動かして、血液が不足した箇所に血液を速
やかに供給するための必要な対応手段になります。全力疾走した後、心臓がばく
ばくし、息がゼイゼイハーハーする事で体を元に戻そうとする原理と同様になりま
すが、パニック障害と全力疾走とでは一つだけ違いがあります。それは全力疾走に
おいては、全身の筋肉や内臓に血液を送り込むことになりますが、パニック障害の
場合は主に脳への血液供給になります。それは脳の酷使からくる脳の虚血(血液不
足)が激しく、脳へ血液を導入する事が優先されるからです。しかし血液が正常に供
給されれば次第に落ち着いてくるので不安に思わないことです。パニック症状は命
を守る必要対応であるということをまずは覚えておいて下さい。


『パニック障害は脳の虚血を防ぐ対応ーーー何故脳の虚血が起きるのか』

急激な心悸亢進と呼吸のひっ迫は、心臓と肺の機能をフル稼動させて、脳へ血液
と酸素を供給するための対応手段になります。何故脳に血液が不足するかと言うと、
元々脳は常に新鮮な血液を大量に消費する場所です。それが精神的なストレスの
持続により、常に脳が興奮状態にあり、休む暇なく脳を活動状態においているから
です。そのためにはより以上に血液を消費し、また脳内の神経伝達物質や脳内ホ
ルモンをも大量に消費するからです。

この状態が持続する事は、当然脳に血液を送り込む血液循環のための心臓のポ
ンプ機能に負担をかける事になります。この場合、元々遺伝的に心臓や肺の弱い
体質の人は心臓の機能低下が起きやすく、心臓機能を鼓舞するための動悸や狭
心症症状が出やすくなっているのです。

また脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンの大量の消費は、これらの生成と分解
に関わる肝臓と胆嚢に大きな負担を生じさせ、肝胆機能の低下が生起されるのです。
この場合、生きている体のとる対応は、肝胆に大量の血液を導入し、肝胆に熱を
発生させることで低下した機能の回復を図るのです。これは一時的に必要な対応
ではありますが、レバーと呼ばれ、血の固まった様な中身の詰まった、人体中で脳
に次ぐ大きな容量をもった肝臓に大量の血液を奪われる事は、全身の血液の配分
を大きく乱す事につながるのです。これがさらに脳への虚血を助長するのです。

さらに胆嚢から分泌される胆汁は、胆嚢が腫れて炎症をもつことで、袋の収縮が
減退し、胆汁の分泌不足をも生起されるのです。この苦い胆汁の役割は、人体内
の漢方薬(苦寒薬)の役割をもち、苦い成分によって体内の炎症を鎮め、血液の熱
を冷まし血液を一定の温度に保つ大切な役割を担っています。
胆汁の分泌不足は、血液に熱を帯びさせ、血液に熱変性を起こさせ、赤血球の連
鎖(ドロドロでベタベタな状態)と変形をもたらすのです。これは血液の質を低下さ
せる最大の要因となります、また赤血球の連鎖と変形は、全身の毛細血管の血液
の流れに詰まりと停滞をもたらし、血液の循環を遅くします。これは全身に及びます
が、その中でも毛細血管だらけの脳内の血流を停滞させる大きな要因となるのです。
これもさらなる脳の虚血を生む大きな要因となります。

さらに全身や脳の毛細血管の詰まりや停滞を流す対応として心臓のポンプ力を上
げる必要に迫られ、これがさらなる心臓機能の低下を生じさせるのです。遺伝的に
心臓や肺の弱い人は益々心臓の負担が増し、フル稼動を余儀なくされ、心臓の血
液不足を生起し、心臓に血液を集める対応としての狭心症や心筋梗塞症状を発生
させるのです(詳細はHP院長の日記、心臓の項を参照下さい)。
パニック障害を起こす人は、この様な遺伝的な背景が絡んでの発症になります。


『脳の虚血は、全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖と変形)の乱れから
起こり、これを回避する対応が心臓と肺の非常対応を生起した』

人間は他の動物と異なり、発達した大きな脳を有しています。故に生存のために
は脳の機能への依存度が高い動物と言えます。そのためには常に脳へ新鮮な血
液の大量供給が必要になります。一時たりとも酸素と血液供給が途絶えることは、
死を意味します。その証拠として、約3分位酸素と血液が途絶えると死に至ります。
これを回避する対応が、急激な心悸亢進と呼吸の亢進なのです。故に一気に心臓
がバクバクして、呼吸がゼイゼイハーハーとひっ迫するのです。

脳の虚血の理由は前項に示した通り、全身の血液の循環(心臓)・配分(肝臓)・質(胆
嚢)の乱れが直接的な要因であり、血液の循環・配分・質の三者が全て関わって発
生しています。
この様に、パニック障害の主症状となる、急激な動悸(心悸亢進)と呼吸の亢進は、
脳の血液不足を守り、命を守るための必要な対応の中から発生しているのです。
故に精神的に気になることが起きたり、嫌な思いをしたり、急激なストレスにさらさ
れたり、急激な温度変化、気圧の変動、色や光のわずかな変化、夜中の決まった
時間帯、これらによる心身状態の乱れが、全身の血液の循環・配分・質に影響を
及ぼし、脳に虚血が生じるのです。この時の緊急対応として発動するのです。
これがパニック障害の根拠と機序となります。つまり、これが生起されないと、命に
危険が及んでしまうのです。


『どう対処したらよいか』

これまで解説した様に、パニック障害の症状は命を守る必要な対応として発生して
います。故にこの必要な対応を薬で封じ込めてはいけません。薬はすぐに依存症に
陥り、一生涯薬づけとなってしまう危険性があるからです。さらに自身の力で回復さ
せたわけではなく、薬で封じ込めているだけで、薬を止めればすぐに再発を繰り返す
ことになります。またリバウンド症状が激しく、その恐怖から抜け出せなくなってしまう
のです。これから抜け出すためにも、まずはパニック障害の根拠と機序を正しく認識
する事が絶対条件になります。根拠と機序が明らかになってくれば、どう対処すべき
かの答えは既に示されます。

遺伝的な心肺機能の弱さや、精神的なストレスを一気に解決する事はできません
が、パニック障害の直接的な要因となっている全身の血液の循環・配分・質の乱
れを修復する事は充分に可能です。これによりパニック症状は起こらなくなります。
またパニック障害に至るまでには、長い間の生活習慣の乱れや、徐々に自身の生
命力や免疫力を低下させた事が背景に潜んでいます。これらを含めての改善が求
められます。

具体的な方法は、全身の血液の循環・配分・質の乱れに関わっている肝臓胆嚢と
心臓の機能を回復させる事が不可欠です。つまり”肝心要”と言われる肝臓(胆嚢
を含む)と心臓を対象とした治療が必要になります。
また知らず知らずに低下した自身の生命力や免疫力も同時に高めることも必要で
す。さらにパニック障害が起きそうな時の予防や起きた時の緊急対応の方法を心
得る事が重要です。こうすれば薬を使用しないでも回避できるという安心感が精
神的な安定を生み、パニック障害から抜け出せるのです。


『具体的な方法としての日本伝承医学の治療の効果』

前項の必要な条件を全て満たす事ができるのが日本伝承医学の治療になります。
低下した生命力や免疫力を高めるためには、生命力と免疫力に関わる人体の骨髄
の機能を発現する事が合理的です。生命力とは細胞新生に置き換えられ、免疫力
とは造血に置き換えられます。細胞新生と造血は全て骨髄で行なわれています。
この骨髄機能を発現する事を目的に開発されたのが日本伝承医学になります。

骨の二大特性である骨伝導と圧電作用を利用して骨に圧をかけたり、「ゆり・ふり・
たたきのひびき操法」を駆使して骨髄の中の造血幹細胞にスイッチを入れ、骨髄の
機能を発現させる事で、細胞新生と造血を活性化させ、生命力や免疫力を向上さ
せるのです。

また内臓的には肝心要を中心に技術が構築されていて、肝臓や胆嚢の充血や熱
をとる技法の大腿骨叩打法が一回の治療でも大きな効果を発揮します。さらに古
代人の開発した理にかなった心臓調整法が弱った心臓を蘇らせます。
これにより肝臓の充血が除去する事で、血液の配分を整え、脳へ血液を回せる様
になります。また胆嚢の腫れがとれる事で胆嚢の収縮が改善し、胆汁の分泌が元
に戻ることで、血液の熱を除去し赤血球の連鎖と変形を解除します。これにより
毛細血管内の血液の詰まりと停滞を解消でき、心臓の負担も軽減できるのです。
心臓のポンプ力の回復は全身と脳への血液供給を回復させ、脳の血液不足を起
こさなくします。
これによりパニック障害発生の原因となる脳の虚血が解消され、急激な心悸亢進
や呼吸の異常亢進を起こす必要がなくなるのです。


『緊急時の救急法と予防法』

これから紹介する、日本伝承医学独自の救急救命法は、30年以上にわたる臨床
実績の中でその効果の高さが証明されています。
それは、氷を使った「額」と「左首」の冷却法になります。楽な体勢で横たわり、額と
左首の気持ちの良い箇所を見つけ、安静を保ちます。発作時も慌てずアイスバッグ
に氷を詰め、上記の二箇所を横たわり静かに落ち着くのを待ちます。時間はその人
の症状の程度に寄りますが、必ず鎮静してきます。落ち着くまで続けてください。
これは日常時も毎日励行します。予防法としても大きな効力を発揮します。

額を冷却する事で、前頭連合野の熱を除去し、その機能を安定させます。自律神
経失調症やうつ病はこの前頭連合野が機能不全を起こすことでプラス思考を抑制
され、病からの脱却の意欲が湧かないのです。これを回復する重要な方法になり
ます。また脳の中心の「脳幹」(別名命の座)の熱のこもりを除去し、基本的な生命
維持機構への指令を活発にします。

こうした作用を日本の古代人は発見し、日本では古代よりどの様な病気に対しても
額を冷やす事を伝統的に行なってきたのです。この方法は日本独自の方法であり、
高い効果を発揮します。
また左首の冷却は、心臓の拍動の調整と呼吸を安定させる効果があります。この
場所は薬のない時代には、喘息の救急法として使用され、効果は実証されていま
す。さらに首の冷却は、脳内の熱の上昇を抑え、脳の機能を安定させる効果があ
ります。

以上の方法を実践していく事で、パニック障害の発作は薬を使用しなくても鎮静す
る事ができます。この方法は、当院に通われる患者の多くが実践し、その効果の
高さは実証済みです。閉所恐怖症等で電車等に乗れない方も、保冷袋に氷を詰
めて持参することで、緊急時に備えられ、その安心感が発作を予防しています。
また当院では家庭療法として、頭と肝臓の冷却を勧めており、精神的なストレスから
発症する人間の病気の二大拠点の熱を除去し、万病に対処しています。
このような認識をもって日本伝承医学の治療と氷冷却を実践することでパニック障
害からの回復は可能になります。

(参)日本伝承医学心療科〜パニック障害