親指の付け根の関節(CM関節)の痛みと変形性関節症の本質 
                                2015.12.28 有本政治 

<拇指CM関節変形症とは>
CM関節のCMとは、carpometacarpal、手根中手骨の略になります。
近年、この拇指CM関節変形症(親指の付け根の痛み)を発症する人が急激に
増加しています。外傷的に打撲したり、ひねった訳ではないのに、突然痛くなるこ
とが多いのが特徴になります。洗濯ばさみをつまむ時に違和感が生じたり、瓶の蓋
を開けたり、片手鍋やフライパンを握って持ち上げる時等に拇指(親指)の付け根
付近に痛みが出ます。進行していくとこの付近が膨らんできて拇指が開きにくくなっ
たり、手を握ったり開いたりの動作にも痛みが生じます。さらに手首を底背屈したり、
ひねる動きにも制限と痛みが生じてくるようになります。時間の経過の中で、拇指
の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った「白鳥の首」変形を呈してきます。

<病態と原因>
拇指の手前の甲の骨(第1中手骨)と手首の小さい骨(大菱形骨)の間の関節(第
1手根中手骨関節)は、拇指が他の4本の指と向き合って、つまみの動作ができる
様に、大きな動きのある関節になります。親指は物をつかむ動作の主体となり、使
用頻度が高い指です。故に関節軟骨の磨耗が起きやすく、進行すると熱をもち、関
節が腫れたり、亜脱臼を起こしやすくなり変形してきます。これらの原因は、使い過
ぎや老化が挙げられていますが、はっきりとした原因がわかっていないのが実状です。
(女性に多くみられることから、女性ホルモンとの関係があるとも言われています)。

<診断>
整形外科における診断は、拇指の付け根のCM関節のところに腫れがあり、押す
と痛みがあります。拇指をねじる様にすると強い痛みが出ます。X線検査でCM関
節のすき間が狭く、骨棘があったり、時に亜脱臼が認められます。
同じ箇所に痛みを発するものとして、手首の拇指側の腱鞘炎(ドケルバン腱鞘炎)
やバネ指、リウマチによる関節炎がありますが、拇指CM関節変形症とは区別され
ています。

<治療>
消炎鎮痛剤の貼り薬を貼り、CM関節保護用の軟性装具をつけるか、固めの包帯
を拇指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限します。それでも効果のな
い場合は、痛み止めの内服、関節内注射を行ないます。変形の程度がひどかった
り、痛みがとれない場合は、関節固定手術や大菱形骨の一部を切除して靭帯を再
建する切除関節形成手術等を行ないます。いずれも対症療法が主体です。
しかしこれらの処置を施しても、なかなか痛みがとれずに再発を繰り返してしまう
ケースが多いのが現状になります。次に日本伝承医学的にこの症状の本質を解
説していきます。

<この疾患の原因を、使い過ぎと老化と判断する所に問題がある>
原因を単に使い過ぎや老化として捉えるならば、親指の使用を制限していけば、
症状は治癒に向かうはずです。現に装具や包帯で固定し、痛み止めを使用すれ
ば一時的に痛みを軽減することはできますが、固定や薬を止めればすぐにまた
再発を繰り返してしまいます。逆に痛みが増してしまう場合もあります。さらにこの
症状の特徴として、痛みの強い日と楽な日があり、また時間帯や体調によっても
痛みの出方が違うという所にあります。単に炎症や腫れによる痛みであるなら、
動かした時に同じ痛みが生じるはずです。時間や体調によって痛みや腫れの状
態が違い、特に朝方に関節の強張りや痛みが強く感じられたりするのが特徴にな
ります。これは単純な関節炎と異なり、明らかに血液の循環や血液の質が関与し
ている事を意味しています。

<血液の質の低下が、CM関節の毛細血管に停滞と詰まりを生起する>
単なる腱鞘炎や関節炎ではなく、血液の質が関与しているという事は関節リウマ
チや痛風性の疾患が考えられます。これらの診断は、血液検査での特定の物質
の数値が判定基準になります。特にリウマチは判定の難しい病気です。故に症
状の出方がリウマチに似ていてもリウマチとは判定されない場合が多くあります。
つまり、リウマチの前駆症状の様な病態に関しては、病名が付けられない状況
にあるということです。

血液検査では何の異常もなく、判定できない段階にあるのが、赤血球の連鎖によ
るドロドロでベタベタの血液や、赤血球の形の変化による血液の質の低下の段階
になります。これが関節や筋肉、腱に影響を及ぼしていくのです。この赤血球の
連鎖が、毛細血管の流れに停滞と詰まりを生起する事で炎症や腫れを起こし、
拇指の付け根の関節や腱に痛みと腫れを発症し、変形を起こすのです。
赤血球の連鎖は、血液の熱のもち方と連動していて、体調や時間帯によって
くっ付きが強くなったり、離れたりします。故に日によって、良い時と悪い時が出て
くるのです。この症状に対しては、赤血球 の連鎖を除去するため、内臓機能からの
改善と血液の質の改善、そしてCM関節の局所の治療が必要となります。症状は単
にその部位だけを診ていては改善できません。体全体との関連の中でとらえていか
なければならないのです。

<赤血球の連鎖により、血液の流れに停滞と詰まりが起きるのはなぜか>
赤血球の連鎖は、血液が熱を帯びることから発生します。熱変性により血液成分
の98%を占める赤血球同士がくっ付いてしまうのです。何個もの赤血球が連鎖す
る場合もあります。通常の赤血球1個の大きさは、毛細血管の内径よりも小さく何の
問題もなく毛細血管内を通過できるのですが、赤血球同士が連鎖してしまう事で、
毛細血管の内径より大きくなってしまい、血管内に流れの停滞と詰まりを引き起こし
てしまうのです。

<血液が熱をもち、熱変性による赤血球連鎖は何に起因するのか>
血液の熱を冷まし一定温度に保つ働きは、胆嚢から分泌される胆汁(たんじゅう)が
担っています。一般的な胆汁の作用は、脂肪の分解吸収を助け、便を生成するとさ
れていますが、最も重要な働きは、その苦い成分にあります。胆汁は1日約1000ml位
分泌され、その苦い成分が血液の熱を冷まし、体の炎症を鎮める重要な働きを
担っているのです。

胆汁を分泌する胆嚢は、肝臓の中に内包される形で存在し、胆汁を貯める袋とし
ての働きがあります。肝臓と胆嚢は”肝胆相照らす”と言われる様に密接に関係し
表裏の関係にあります。
肝臓は、精神的なストレスの持続に一番影響を受ける臓器で、心労やストレスが
続くと機能低下します。肝臓の機能低下は同時に胆嚢にも影響し、肝胆とも機能
が低下していきます。体は肝胆の機能をとり戻すために、肝胆に大量の血液を集め、
熱を発生させる事で機能回復を図っていきます。この状況は一時的に肝胆に腫れ
をもたらし、袋である胆嚢が腫れます。胆嚢の袋が腫れるということは、袋の収縮
ができず、胆汁の分泌を減少させる事になります。これが胆汁の分泌量を減らし、
胆汁の作用である血液の熱を冷ます働きを失うことになります。これにより血液は
熱を帯び、この状態の持続が熱変性をもたらし赤血球の連鎖を引き起こしていきます。
こうした機序により、赤血球の連鎖は起こり、また赤血球自体の形の変形も起きま
す。この血液の連鎖と変形は、毛細血管の停滞と詰まりだけではなく、血液の質
そのものを低下させてしまうのです。この状態の持続が血液の質を低下させ、リウ
マチや痛風へと移行していきます。この段階で血液検査で異常値が検出され正式
な病名がつきます。

<血液の質の低下と毛細血管内の血液の流れの停滞と詰まりがCM関節に炎症と
腫れを引き起こすーー病名が付かない痛風リウマチ性の疾患の原因>
症状の出方は、関節リウマチと似ていても、血液検査でリウマチとは判定がつかな
い筋肉や腱、関節の炎症や腫れ、変形は数多くあります。いわゆる自己免疫疾患
と言われる膠原病、エリトマトーデス、慢性疲労性症候群等の原因の根底にも、肝
胆の機能低下からくる胆汁の分泌不足で血液の質の低下が必ず存在します。この
機序の認識なくしてこれらの症状の回復の可能性は無いと云っても過言ではない
のです。

似たような症状のドケルバン腱鞘炎やバネ指も同様の機序が根源に存在するの
です。故にその患部だけの処置を繰り返しても治癒には向かいません。さらに
変形を助長し、手術へと移行してしまうことにもなりかねません。真の原因は血液の
質の低下と毛細血管の停滞と詰まりにあるからです。

<人体に起きる全ての症状には意味があるーーー拇指の付け根のCM関節に炎症
や腫れ、痛みを起こす理由とは>
日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、一方的に悪い反応と見ず、命を守り、
重要な機能を守るための一時的な必要な対応という観点で、捉えています。この
観点を当てはめてCM関節変形症の症状を捉え直してみます。

生物として生まれて、体の示す全ての反応は、体をより悪い方向に向かわせたり、
まして命を縮めるために発生している訳ではありません。必ず意味があって起こして
います。その意味とは、命をつなぎ、最後まで生命を存続させるために、一時的に
必要な対応をとっているのです。この観点を見失い、症状を全て”悪”として一方的に
見て、これを封じ込めれば病気は治るとするところに、現代医学の弱点があるのです。

生命体が命を存続させるために起こす全ての反応は、一切の無駄はありません。
不可抗力な事故や外傷を除く、体の末端や体表の炎症及び化膿疾患は、命に別状
がない所に炎症や化膿を起こす事で、命にとって重要な場所に起きる難治性の炎症
疾患や腫瘍、がんを終息に向かわせるために故意に作り出した姿なのです。脳や内
臓といった命に関わる場所に腫瘍やがんができるのを防ぐために、手や足の関節に
炎症を起こすのは、脳や体幹部の熱のこもりを末端に抜く対応なのです。
体はここまでしても命を懸命に守ろうと対応していきます。命に別状ない所にでき
る、自己免疫疾患(リウマチ、偽痛風、膠原病、エリトマトーデス、慢性疲労性症候
群等)等も同様な機序を有しています。

日本の民間療法として広く行われている”打膿灸”(別名として弘法の灸とも言わ
れます)というお灸療法があります。これは起死回生の療法と呼ばれ、難治性の
炎症疾患やがんや腫瘍等の重篤な病に侵されていて、八方手を尽くしたが効果
が無く、最後の手段として用いられる療法です。
この打膿灸とは、人体の背中の経穴(内臓の反応点=ツボ)に親指大のお灸をす
え、故意に大火傷を作り、これを化膿させるのです。こうして体表に腫れ物(オデキ)
を人為的に作る事で、体内にできた難治性の炎症疾患、がん、腫瘍によって発生
している内熱や毒素を体外に排出し、回復に向かわせるという非常手段になります。
ある意味、”毒をもって毒を制す”に似た効果になります。

体内にできた難治性の炎症疾患やがん、腫瘍(内部のオデキ)は、体表の腫れ物
と違って、内部の熱や毒素を体外にすてる事が容易にできません。故に体表に大
きな穴を開け、化膿させる事によって体表に引き出し、内部の熱と毒素を体外に
排出させていくのです。
お灸の熱さと化膿による腫れと熱、痛みは苦痛をもたらしますが、体表にできる
オデキ(腫瘍)は致命的になる事はありません。出場所が無い内部の化膿性の疾
患や、がん、腫瘍は敗血症等にも移行しやすく命の危険をもたらします。
これを外に排出させる事で、治癒に導く起死回生の非常療法が”打膿灸”なのです。
この療法は理にかなったものであり、好転に転じる機序を与えるものと考えます。
何故ならば、日本伝承医学の病因論となる「熱をすてる五段階のシステム」の第
2段階が体表にできるオデキ(腫瘍)による対応になります。命を守るためには
体内の熱をどうすてるかが命題になります。(詳細は、HP、がんを捉え直すの
項を参照)

拇指CM関節変形症は、自己免疫疾患のリウマチや膠原病の段階よりは、初期
の対応になりますが機序は同様になります。自己免疫疾患の前駆症状として捉
えることが必要です。

<人体の末端に当たる親指の付け根のCM関節に、炎症と腫れ、さらに変形を起
こす事で何を守っているのか>
結論的には、脳に腫瘍ができるのを防ぎ、脳内の炎症や脳圧の上昇を除去し、
内臓の心臓と肝臓、胆嚢の熱をすてる対応になります。

手のひらと足の裏は、体の中で汗をかきやすい場所になります。特に肉体運動
による熱のこもりを体外にすてるための汗よりも、精神的緊張からくる脳内の熱
のこもりをすてる汗の出場所になります(脇の下も同様の作用)。表現にも、極度
の精神的緊張状態を表すのに”手に汗握る”と言います。あせの出方も一瞬にし
て起こります。これは脳内の神経の緊張と興奮から生じる熱と脳圧の上昇を抜く
ための汗になります。手のひらに汗をかくことにより、脳内の熱や脳圧の上昇から
くる脳の神経や血管の破壊を回避するための対応として発生しているのです。
つまり汗が瞬時に出る事で熱を下げ、脳圧を抜き命を守っているのです。

また汗だけでなく、手のひらを充血させ、真っ赤に熱をもたせる事でも脳や肝臓、
心臓の熱をすてる対応をします。手のひらが赤い人は脳や肝臓、心臓に熱がこ
もっているという診断となります(舌が赤い場合も心臓や体に炎症がある診断に
使用します)。このように、手足の末端の手のひらや指には、汗を出したり、充血
させて熱をもたせる事で、脳や内臓にこもる熱をすてる役割があるのです。
特に、手足の親指には脳や体内の熱をすてる作用があります。私の42年の臨床
において、アトピー性皮膚炎や脳内に熱のこもりの大きい人は、手の親指の両側
面に皮膚の荒れやひび割れ、皮膚病が表れます。また足の親指には、皮膚病では
なく、赤く腫れ上がり、強い痛みと熱を伴う痛風や化膿も伴うヒョウソができる場所に
なります。いずれも故意に炎症や腫れ、化膿を発生させる事で、体内にこもる内熱
や毒素を外部にすてる対応をとっているのです。

このように手足の親指は、脳や体内にこもる熱や炎症、脳圧の上昇を体外にす
てる場所となっているのです。これが親指の付け根のCM関節に炎症や腫れ、ひ
いては変形をもたらす真の原因であるのです。
特に手の親指は、体内の炎症や内臓の熱をすてると共に、脳の熱をすて、脳圧
の上昇を除去する場所になります。ここに症状を発生させることで脳腫瘍や脳梗
塞、脳溢血、クモ膜下出血等を防いでいるのです。

<手の拇指は、体内の全ての炎症と脳の熱や脳圧をすてる場所ーーー古代人の偉
大な発見ーー炎症止め操法>
日本伝承医学の重要な技法の一つに、「炎症止め操法」として、手の親指の側面
を擦過する方法があります。体内の全ての炎症を鎮めるために臨床の最後に使用
するものです。親指の側面が軽く発赤する位擦過します。
日本の古代人は、手の親指が脳や体内の熱をすてる作用がある事を発見し、この
ような技法を日本の地に残していたのです。この操法の効果は非常に高く、体内の
全ての炎症を鎮める効果をもっています。特に脳圧の上昇等は瞬時に下がります。
また全ての皮膚の炎症に応用しています。

<どう対処するべきか>
ではCM関節変形症にどう対処していけば良いのかは、この疾患の根拠と機序の
中に示されています。それは血液の質と赤血球の連鎖をとる全体調整と局所の
CM関節の調整の両面からのアプローチが不可欠になります。
またすべての病気や症状の背景には、生命力、免疫力の低下が存在します。
そしてこの疾患の直接的な引き金になる血液の質の低下は、単に質だけの問題
ではなく、全身の血液の循環や配分にも大きく関わっています。症状の出ている
場所は、当然血液の循環と新鮮な血液の配分にも低下が生じています。つまり早
急に全身の血液の循環・配分・質の三態全てを元に戻す必要があるのです。

この全身の血液の循環・配分・質の乱れに大きく関わるのが肝臓、胆嚢と心臓に
なります。”肝心要”に相当します。胆嚢から分泌される胆汁が血液の質に一番関
わってきます。さらに精神的ストレスの持続が肝胆 の機能低下をもたらし、全身
の血液の配分を大きく乱すことになります。血液の配分が乱れ心臓のポンプ力が
低下すれば、全身の血液の循環は停滞し、必要な場所に必要な量の血液が供給
できなくなります。特に心臓より高い位置にある脳に血液の供給が減少します。こ
れを補う対応として起きた頭痛、めまい等を薬で封じ込める処置を繰り返すと、脳
内に熱のこもりと脳圧の上昇を生み、脳の血管障害や脳腫瘍へ移行させるのです。

以上の事態を回避するためには、全身の血液の循環、配分、質の乱れの主体と
なる肝臓、胆嚢、心臓機能を元に戻す事が必要になります。
すべての病気の背景に存在する生命力や免疫力の低下を高め、全身の血液の
循環、配分、質の乱れをもとに戻すためには肝心(肝臓(胆のう)、心臓)の治療が
不可欠になります。また局所のCM関節の調整法を加えた総合的な治療法が必要
です。

<全体と部分の両面から治療できる日本伝承医学の治療法>
以上の条件を満たしているのが日本伝承医学の治療法になります。骨髄の機能
を発現させること事で、生命力と免疫力を高められます。また肝心要を主体とした
内臓調整法で血液の循環、配分、質を元に戻していきます。
CM関節の調整は、面圧操法を使用し、炎症止め操法で炎症と痛みを除去します。
家庭療法として頭と肝臓の氷冷却法を行ない、脳内の熱のこもりと脳圧の上昇を
抑え、肝胆の機能を回復させます。

また、血液の質を改善していくためには、食事や睡眠、歩行、水の摂取にも気をつ
けていかなければなりません。特に水の摂取は大事です。お茶やジュース、コーヒー
は飲んでも水はあまり飲まないという方が昨今多いですが、血液を浄化させ、代謝
をよくするためには水が大事です。免疫力や生命力を高めていくためには、他力本
願ではなく、生活習慣の見直し等の自助努力も必要になります。