嘔吐症状は何故起こるか〜不安解消のための認識 2015.11.14 有本政治

誰しも吐く症状は辛いものです。また不安も生じます。そのため嘔吐は悪い症状
と思われがちですが嘔吐には意味があります。体が示す反応を正しく捉えていく事
が大切です。それは、嘔吐は3つの必要な対応として発生しているということです。
嘔吐の意味を正しく認識していく事で不安と症状の軽減につながります。


<脳内の圧力の上昇を抜く対応>

激しい頭痛やめまいの時、嘔吐を併発する事がよくあります。頭痛やめまいの根
本原因は、脳の虚血(血液不足)と脳内の毛細血管の停滞と詰まりが挙げられます
(詳細は院長の日記のめまいと頭痛の項参照)。この対応として、脳内の少ない
血液を早く脳内に循環させるためと毛細血管の停滞と詰まりを流すために、脳圧
を上昇させます。脳圧の上昇は必要な対応ですが、これが一気に上昇したり、脳圧
の上昇が持続すると、脳溢血やクモ膜下出血の危険が生じてきます。これを回避す
る対応が嘔吐になります。吐く事で、脳内の圧力を抜いているのです。
故にこれを薬で止めたり我慢してはならないのです。

他にも脳圧を抜く対応は、涙、鼻水、冷や汗、くしゃみ、あくび、排尿、下痢等が挙げ
られます。その中でも嘔吐が一番直接的に素早く脳圧を抜く事ができます。脳圧が危
険域を脱するまで嘔吐は断続的に続きます。同時に涙、鼻水、冷や汗等も起こります。
これらを全て動員して脳圧の上昇からの危険を回避しているのです。
(夜間の多尿や下痢も脳圧を抜く対応になりますーー院長の日記、頻尿の項参照)


<体内に留めてはならない毒素や未消化物を排出する対応>

私達は腐った物を食べたり、飲み込んだ時に自発的に素早く嘔吐する事で、毒素
から命を守ります。また食べ物や飲み物が消化できない場合や消化能力が落ちて
これ以上飲食物を入れてはならない時に吐き出す事で体を守ります。アルコールを
飲みすぎた時の嘔吐は日常的によく経験する症状であります。その時吐き切る事
で楽になるのです。

また、胆汁の分泌、膵液の分泌が悪くなると脂肪の分解吸収がうまくできなくなり、
未消化の状態で十二指腸に入るため、体は嘔吐することで体外に排出する対応を
とります。急激な下痢を起こす事で、大腸の便を出し、通過を早める対応もとります。


<元々遺伝的に胃腸が弱く、全身の血液の配分が乱れ、胃に血液不足が生じる事
で、消化できず、未消化物を排出する対応>

遺伝的に胃腸が弱い体質の方が暴飲暴食により消化ができず、未消化な物を吐き
出すのは当然の対応になります。また肝臓・胆嚢に機能低下が起きて胆汁の分泌
が不足すると、全身の血液の配分と質が乱れて胃にも血液不足が生じます。臓器は
血液によって養われるため、胃に血液が不足すると胃の機能が急激に低下してしま
います。

全身の血液の配分を乱す原因は、血液を大量に消費する場所があるからです。そ
れは頭と肝臓になります。精神的ストレスの持続により、脳が大量の血液を必要
とする事と、脳内ホルモンや脳の神経伝達物質を産出する肝臓に負担をかけ、肝
臓機能が低下していきます。それを補う対応として肝臓に大量の血液を集めていき
ます。これにより、全身の血液の配分が乱れ、胃に血液不足が生じてしまうのです。
胃に血液が不足する事で、胃の消化能力と蠕動運動が低下し、未消化で飲食物を
腸に送る事ができなくなり、嘔吐の対応を余儀無くします。元々胃腸の弱い人は顕
著に現れます。

その中にあって、嘔吐の起きるタイプと嘔吐したくてもできない人がいます。それは
吐くという行為は、大きなエネルギーと体力を必要とするからです。元々胃腸が弱い
体質の場合でも、体力が弱っている時は吐き出せなくなります(肺が弱く気管支が
弱っている場合も吐くことができなくなります)。吐き出す力がない場合には、下痢と
いう対応をとっていきます(院長の日記の下痢の意味の項参照)。

上記の対応と女性の生理が重なった場合はより発生しやすくなります。女性の生理
の前や生理中は血液の排出に備えて、子宮に大量の血液を集めます。これがさらに
血液の配分の乱れを助長していくからです。
生理前や生理中だけでなく、排卵時においても起きやすくなります。排卵は卵子を
放出するために、大きなエネルギーを必要とします。エネルギーを出すためには
血液を大量に必要とするからです。排卵後に体温が高温になるのはこのためです。

またストレスの持続により自律神経のバランスが崩れ、交感神経を優位にし、消化
のための副交感神経が抑制されると、食欲もなくなり、飲食物が未消化になり、嘔
吐が起きやすくなります。この状態の時は、脳圧も上昇しており、嘔吐が頻繁に
起こります。

以上が嘔吐の根拠と機序になります。すべて体にとって必須の対応であり、これから
は嘔吐の意味をこの様に認識していく事が必要です。特に1つ目の理由の脳圧を
抜く対応は最も重要になります。処置を誤り嘔吐を薬等で無理やり止めてしまうと、
脳圧が上昇してしまい、脳血管障害に結びつく危険が増大するからです。
故に嘔吐は安易に止めてはならないのです。出し切ることが必要なのです。


<嘔吐時の対処法 >

嘔吐を解消していくためには、根本原因となっている肝臓(胆嚢)機能を高めて胆汁
の分泌を促していかなければなりません。肝機能低下は、精神的ストレスと大きく
関わっているため、過労や心労から少しでも解放される状況をつくっていくことが
大切です。その為には横になる時間を意識して設けることです。体は横になることで
重力から解放され、細胞が修復し弱った臓器が回復できるからです。また歩行をとり
入れ、体力をつけていくことも必要です。体力、体の力とは、免疫力と生命力のことを
言います。嘔吐はその症状だけをみていくのではなく、こうした根本からの見直しが
大事です。

嘔吐を防ぐためには、肝臓(胆嚢)、頭部、右首筋(胃腸の働きを高める)をアイスバッ
グで冷却していく習慣をつけていきます(首筋の場合は冷たすぎて不快感が生じた
ら止めるように)。嘔吐が頻繁に続くと脱水症状になりやすくなるため、充分な水を
摂取するようにします。嘔吐を繰り返すと体が衰弱していくので、少しでも口にでき
そうなものがあれば摂っていきます。体が弱っているときにはとにかく無駄なエネル
ギーを使わないように、横たわる時間をできるだけ多くとることが何よりも大事です。