日本伝承医学の治療と家庭療法のすすめ
                               2018.10.31. 有本政治

 

【日本伝承医学の治療】

『氷山の一角』とは、正に現代医学の病気の捉え方を象徴する格言
です。水の上に浮かんでいる氷山しか見えなくて、水面下に隠れた
本体が見えていないのです。病気は単に局所だけの問題だけではなく、
この水面下に隠れた、潜在下の部分を含めた総合的な捉え方が必要
です。

潜在下とは、本人も自覚していない病気や症状の背景に存在する根
底に潜む領域になります。病気や症状は、患者自身の生命力や免疫力
の低下が根底にあり、直接的要因となる全身の血液の循環・配分・質
の乱れが存在することで発症していきます。免疫力と生命力を高め、
根源から症状を改善することができる治療が、日本伝承医学になり
ます。

日本伝承医学は、世界で唯一の骨髄の機能を発現できる治療法です。
骨の特性である「圧電作用」と「骨伝導」を使って、骨に圧やヒビキ
(ゆり・ふり・たたきの振動)を与え、骨髄機能を発現させていきます。

骨髄では、造血(赤血球・白血球・血小板)と細胞新生が行なわれてい
ます。造血とは免疫力のことを指し、細胞新生とは生命力を表わしま
す。つまり骨髄機能を発現させ免疫力と生命力の低下を補い、血液の
循環・配分・質の乱れを正せば、症名を問わず病気は回復に向かわせ
ることができるのです。

日本伝承医学は『心臓の医学』とも言われ、血液の循環・配分・質
の乱れに関与している心臓、肝臓(胆嚢を含む)の肝心要(かんじんか
なめ)を調整する事を目的に技法が構築されています。心臓疾患や肝
臓胆嚢疾患の他、子宮筋腫や生理不順、更年期障害等の婦人科疾患や
不妊症、不育症にも著効を示します。またこの治療は、抗がん剤や
放射線治療の副作用を最小限に抑え、転移や再発を防ぐことができ
ます。

それは、骨髄機能を発現させることにより、正常細胞を新生させ、
造血力を回復させるからです。白血病や血小板減少症等の血液の病気
にも著効を示す所以はここにあります。
 

【家庭療法のすすめ】

病気や体に生じる症状は治療を受けるだけではなく、自らも自助努
力をしていかなければなりません。免疫力や生命力を高めるためには、
自宅でできる家庭療法を日課として継続し、毎日実践していくことが
大事です。家庭療法としての頭(脳幹)と首筋、肝胆冷却法の意味、
つま先立ちと腕立て伏せの重要性を説明します。
 

《 頭(脳幹)首筋の冷却法 》

脳の中心に位置する脳幹(のうかん)は、別名「命の座」(いのちの
)と呼ばれ、基本的生命維持機構に指令を出す人体の中枢になります。

基本的生命維持とは①呼吸②心拍③体温④ホルモン⑤自律神経⑥女性
の生理と生殖活動⑦男性機能⑧情緒の安定等を指し、命の指令中枢に
なります。この脳幹に熱のこもりと脳圧の上昇が起こると、全ての生
理機能に減退が生じます。故に病気を治すためには脳幹の熱を除去す
る必要があるのです。古代の日本人はこの事実を掴んでいて、如何な
る病気に対しても、水で濡らした冷たい手拭いをまず額(ひたい)
当てて、脳幹の熱をとる方法を伝え残していたのです。

頭部と首筋の冷却によって脳幹の働きの中の、呼吸中枢と心拍中枢
の機能が回復すると心臓のポンプ力が高まり、新鮮な酸素をたくさん
含んだ血液を体の隅々まで循環させることができます。血液は熱を
帯びるとその働きが弱まり、血熱(けつねつ)により血液組織が破壊
されていきます。つまり脳内に新鮮な血液を送り込むためには、頭部
と首筋の冷却法が最も効果的になります。
 

《 肝臓と胆嚢の冷却法 》

肝臓はレバーと呼ばれ血の固まった様な大きな臓器になります。
この肝臓に熱と腫れ、充血が起こると、全身の血液の配分を大きく乱
し、体内に血液不足の箇所が生じます。血液の供給が不足する箇所は、
痛みの信号を発して血液を集めようと対応します(頭痛や子宮の痛み
)
血液が集まらないと治癒反応が起こらないからです。

肝臓が充血し腫れると隣接内包している胆嚢(たんのう)も機能低
下し胆汁(たんじゅう)の分泌が不足していきます。胆汁は苦寒薬と
しての抗炎症作用があります。この胆汁が分泌不足になると血液に熱
が帯び(血熱)、血液の熱変性で赤血球の連鎖と変形が起こり(血液
がどろどろでベタベタの状態)、全身の毛細血管に停滞とつまりが発
生します。これが脳に起これば脳梗塞になり、心臓に起これば心筋梗
塞となるのです。

肝臓と胆嚢を冷却することで、胆嚢の腫れがとれ、胆嚢という袋の
収縮が回復し、胆汁の分泌を正常に戻すことができます。これにより
赤血球の連鎖と変形を防ぎ、血液の質を元に戻すことができます。
家庭療法としてすすめる頭(脳幹)、首筋、肝臓(胆嚢)の冷却法が如
何に大事かを再認識して頂きたいと思います。
 

※めまいや動悸等、緊急時にはまず体を横たえます。アイスバッグ
2個氷枕1個を用い、両首横と後頭部、額を徹底的に冷却します。
緊急時には脳幹部の熱と脳圧の上昇を速やかに抑えることが必要です。

《 つま先立ちと腕立て伏せの意味 》

私はこの二つを「命の体操」と呼んでいます。それは、命の源(
なもと)となる血液を心臓まで還す役割を担っているからです。心臓
ポンプから送り出された血液を心臓まで還すポンプの役割を担ってい
るのは、手足四本の関節と筋肉のポンプ機構に委ねています。特に
人類は動物界で唯一二足直立を果たしたがために、足の二本のポンプ
しか使えないという構造的な弱点を持つに至ったのです。そのために
足のポンプ機構が衰えると、心臓まで血液を還す事が十分にできなく
なり、吹き出す血液の 不足が致命的な全身の血液循環不足を生み
出す要因となるのです。それを回避するための運動が爪先立ちと腕
立て伏せになります。適度な歩行も大事です。
 

《 水の摂取の重要性 》

私たちの体は汗や尿で1日約2.5リットルの水分を排出しています。
つまりこの分だけの水分摂取が必要になるということです。水を1
1.52ℓ位飲む事で、血液の質を高め、腎臓機能の衰えを防いでくれ
ます。
 

《 睡眠について 》

睡眠は横になる時間帯が大事です。夜10時~4時までが、成長ホル
モンが分泌され新陳代謝が良くなります。毎日が無理な場合は、最低
でも週2回位はこの時間帯に床に就くようにします。また就寝時には
口内が乾燥し雑菌が増えます。夜中に目が覚めたら口をゆすぎ水を
少量飲むことによって、感染症を防ぐことができます。また夜中に目
が覚めたら尿意が無くても少量でも排尿することによって、脳圧が
下がり血液の循環が良くなるので安眠できます。
 

※全ての病気や症状には自身の遺伝的な体質を基盤に、長い間の生活
習慣の乱れと病気へのとり組み方の認識違いが存在します。病気を
改善していくためには、病気に対する正しい認識と自分自身の生活
習慣の見直しが必要になります。治療の受診と併用して家庭療法を
日々実践し健康維持に努めるようにして頂きたいと思います。