日本伝承医学の治療がシンプルで短時間の理由 2022.5.22. 有本政治

   

病気や症状のほとんどは「肝心要(かんじんかなめ)」と言われるよ
うに心臓や肝臓(胆のうを含む)等の内臓に問題があって、身体にねじ
れのゆがみが発症し、引き起こされます。内臓の働きは自律神経によ
って調整されています。

自律神経は自分の意志とは関係なく働く神経で、交感神経と副交感
神経から成り立っていて、この二つは状況に応じてシーソーの様に拮抗
的に働きます(交感神経が優位な時は副交感神経は抑制的に働きます)
この自律神経のバランスがくずれてしまうと様々な病気を発症させて
いきます。
 日本伝承医学では、治療の手技を骨に一元化し、骨に心地良い圧(ゆり
・ふり・たたき)を与えます。人体は骨に圧を加えることで電気を発生
します。骨伝導を介して骨髄機能を発現し、造血と細胞新生を活発化
させ、免疫力と生命力を高め、全身の血液の「循環・配分・質」の乱れ
を整えていきます。
治療時間の長さには一定の条件が必要になります。
東洋医学のバイブルとされる最古の医学書『素問・霊枢』(そもん・
れいすう)の中にこの時間について記されています。

東洋医学における病因論は、人体をめぐる「気」と「血」の運行の乱
れや停滞による、気血の調和(バランス)の乱れが原因となってすべて
の病気は発症するとしています。

その気血の運行ルートが「経絡」という概念です。これは各内臓の体表
上の反応点の共通項をつないで線上に表わしたもので、六臓六腑、12
設営されています(十二経絡)。そして六臓六腑の反応ラインの12の経
絡は124時間に2時間ずつ配当され、この時間に各内臓が活発に働く
ことを立証しています(十二支配当の時間的陰陽関係)。その12の経絡
の中を流れる「気・血」は一日で50回めぐるように設定されているの
です。つまり約28分で全身の経絡をめぐってることになります。

人間は古来より、地球が太陽の周りをめぐるのが365回、月が地球の
周りをまわるのが28回と算出していて、小宇宙である人体内を気血が
めぐるのを一周約28分と確定していたのです。これが治療の基本形と
なります。故に時間は約28分が望ましく、逆に長時間になってしまうと
刺激過多になるだけではなく、一度元に戻したバランスをまたくずして
しまうことにもなります。

日本伝承医学の施術を受ける方の中にはマッサージ感覚で、長時間
施術を受けた方がいいと思って来院される方がおられますが、施術内容
はできるだけシンプルに、短時間で行なわれる方が効果的であるという
ことを認識して頂きたいと思います。