熱中症予防で大切な事 2016.7.12 有本政治

今から30年程前から地球温暖化が深刻になってきました。その影響もあり、6月から
9月位まで連日30度以上の猛暑日が毎年続くようになり、熱中症になる方が続出して
います。熱中症対策が様々な場面で喚起されていますが、熱中症の方は減らないで
年々増加の傾向にあります。それは熱中症対策においての重大なポイントが抜けて
いるからです。それは、『脳内温度(脳温)を下げる』ということです。

<脳内の温度を上昇させない事が最重要点>

高齢者の方が就寝中に意識を失い、そのまま死亡してしまうケースが昨今多く見ら
れます。これは高齢者の方が外界の気温の上昇に対しての反応がにぶくなり、通常
では体内温度や脳内温度がある限界を超えると目が覚めるのが、そのまま目が覚
めず脳内の温度の上昇から意識不明に陥り、そのまま死に至ってしまうからです。

死に至る原因は、脳の中心に位置する脳幹部に熱がこもり、ここにある基本的な生
命維持機構に指令を出す機能が働かなくなるためと考えられます。脳幹は別名「命
の座」とも呼ばれ、体温中枢、呼吸、心拍、ホルモン、自律神経等の基本的生命維
持に関わる指令を出す大事な場所になります。この機能が働かなくなるという事は、
死を意味するのです。

亡くなった高齢者の方々は、熱中症対策をしていなかったかと言うと、水分を補給し、
適切に冷房も使用していた方もいらっしゃいます。ただ夜間就寝時に冷房を使用して
いなかった場合がほとんどで、睡眠時に脳内温度が急激に上がってしまったのです。
たとえ室温が上昇しても、就寝時に氷枕を使用してさえいれば、命を落とさずにすん
だのです。熱中症対策での注意点の中に、脳内温度を上げないようにするという認識
がいかに大切であるかをここでは知って頂きたいと思います。
脳内温度を上げない注意喚起と対策が講じられていけば、熱中症で命を落とすような
ことは軽減できます。脳内温度を上げない事の重要性を認識していくとともに、対策
を講じていくことが急務と考えます

<頭や額、首の冷却は、スポーツの世界では日常的に行なわれている>

スポーツの現場では、夏の猛暑の中での練習や試合では、経験的に頭、額、首の
氷冷却が励行されています。脳内温度を上げない事が、熱中症や日射病を回避
する最善の方法である事を、経験的に体得し実践しているのです。

<その対策と方法>
 ※脳内温度を上昇させない事が、熱中症対策の最重要点である事を知る

●就寝中も適度に空調を使用する。
 就寝中にも空調(冷房や除湿)をこまめに使用していくようにする。冷房をつける場
 合や扇風機を回す場合は、冷風や送風が体に直接あたらないように気を付ける。
 寝ているときに冷風が直接あたると体温が奪われ死に至る場合がある。乳幼児や
 高齢者は日中も冷風や送風が直接当たらないように、風向きを調節していくことが
 大事。扇風機は、天井や壁に向けて回し、室内の空気を対流させていく。

●室温が30度を超えるとセンサーが作動し、自動的にON、OFF機構が作動するよ
 うな空調を設置していくことが望ましい。高齢者の家庭では、冷房と暖房のリモコ
 ンスイッチの押し間違えで、冷房をつけたつもりが暖房になっているのに気づかな
 い場合がある。周囲の方々が十分注意していく見守り体制が必要。

●空調が効いた室内ばかりに閉じこもっていてはいけない。汗腺が閉じてしまい外
 に出た時に汗を出す機能が働かなくなり、汗がでなくなる。汗が出ないと熱が体内
 にこもり、、脳内温度が急激に上昇してしまう。⇒体温調節がうまくできなくなり、
 室外に出た時に熱中症になりやすくなる。

●カフェや喫茶店等に長時間滞在してはいけない。
 カフェや喫茶店等の不特定多数の人がたくさん滞在する場所は、家庭内と違って
 窓を開けて換気していないため汚れた空気が循環しています。空調温度も低いため
 体には良くありません。1時間以上の滞在は避けるようにします。 

●汗をかいたらこまめに拭いたり衣類の交換をする。

●水を頻繁に飲むようにする。動物や草花にはお茶をあげないように、お茶やコーヒー等
 の飲み物の他に、純粋な水もとることが必要。
 健康を維持していくためには、私達の体は最低でも体重×30の水をとる必要がある。
   ※60キロの体重の場合 ⇒ 60×30で、一日1800ccの水が必要ということ

●頭部冷却のための氷枕や、額や首筋を冷やすためのアイスバッグを使用する。
 就寝時には毎晩必ず氷枕やアイスバッグを使用し、後頭部や首筋を冷却する。
 冷やす時間や冷却場所は、気もちが良いと感じる程度を目安としていく。
 脳内温度を上昇させないためには、この氷での頭部冷却が最も有効である。
 
 ≪注意≫保冷剤の使用は絶対に避ける。保冷剤は冷凍庫から出した直後はマイ
 ナス温度となっており、これが直接皮膚に触れると凍傷を起こす。また直ぐに温度
 が5度6度と上昇し、冷却効果を一番発揮する0度を保つことができない。氷を用い
 た冷却法は、氷が溶けたあともしばらくは0度を保つことができて冷却効果が高い。

●外出中も氷を入れたアイスバッグを保冷袋に入れて持ち歩き、頭、額、首等を
 冷却し、脳内温度を上昇させないようにしていく。少しでも頭がボーッとなったり、
 頭が熱く感じられたら直ちに頭、額、首を氷冷却する。出先でアイスバッグ等が
 手元にない場合は、コンビニで氷を買い、袋ごとあてて冷やす。

< 人はなぜ額(ひたい)から汗をかくのか >

私たちの体は、体温が上昇すると汗が出る仕組みになっています。かいた汗が蒸発
するときに、体の熱を奪い、冷却装置が働く気化熱の原理が、自然にとられているの
です(夏に打ち水をするのと同じ原理)。

人体内で熱にいちばん初めにダメージを受けるのが、脳になります。脳の温度は、
42度を境にたんぱく質が固まりはじめ、脳に炎症がおき、命に危険を及ぼします。
だから人間は命を守るために、真っ先に額から汗をかいて、速やかに脳内温度を
下げようとするのです。体にはこのように防衛能力が天然に備わっているのです。
しかしこの汗を出す能力は、年と共に衰えていきます。つまり高齢になるほど、脳内
温度の上昇には、より注意をしていかなければならないということです。

< 脳内温度を下げるためには肝臓冷却も必要 >

脳内温度を下げるには、肝臓が早く血液を浄化、循環して脳に送りこまなければな
りません。過労や心労等で強いストレスを受けると、この肝臓の働きが弱り、脳内に
血液が充分に行き渡らなくなります(脳の虚血)。脳内温度が上がっても、助けてくれ
る十分な血液が脳内になくなってしまうのです。つまり、脳内温度を上昇させないため
には、睡眠時間等の生活習慣にも気をつけて、疲労や心労を蓄積しないことが大事
です。また、就寝時には頭部冷却と共に、一日の疲れをとるためにも肝臓冷却は必
要です。肝臓を冷却することで、血液の循環が良くなり、脳内に充分な血液を送り込
むことができ、脳内温度の上昇を防ぐことができるからです(安眠効果も得られます)。

<額と首の冷却の重要性>

日本人は古代より病気回復の手段として額の冷却を行なってきました。冷たい手
拭いや氷のうで額を冷やす姿を昔はよく見かけた事と思います。これは日本古来か
ら伝わる独自の風習で、諸外国では行なわれていません。古代日本人は額を冷や
す事で、脳の中心の脳幹部の熱を除去できる事に気づいていたのです。

また首の冷却は、脳に入る動静脈を冷やしてくれるので、脳内の血液の熱を直接と
る事ができ、脳内の温度を速やかに下げる事が可能になります。左首の冷却は
心肺機能を高める作用があるので弱った体を回復させる事ができます。この左首の
冷却法は、昔から喘息の発作を鎮める方法としても広く応用されていました。

首の後ろ側(うなじの部分)は、脳につながる髄液が通う頸椎(けいつい)が表皮の近
くに通っているため、脳内温度を速やかに下げなければならない時は、うなじの部分
からの氷冷却が有効になります。昨今幼稚園や保育園の子どもたちが、首筋をおお
う保護布がついている帽子を着用している姿が多く見受けられます。これは、首の
後側から受ける熱から、体を守るためになります。

< 脳内温度が上昇すると危険 >

脳内温度は42度を超えると脳のたんぱく質が固まりはじめ、43度で命の危険にさら
されます。たんぱく質が固まると、ゆで卵のような状態になってしまい、元には戻らな
くなります(脳の炎症)。脳内温度の上昇が命にかかわるという認識をもつことがこれ
からは必要です。熱中症にならないためには、脳内温度を上昇させないこと。
そのためには氷を用いた首筋や頭部の冷却法が大事だということを理解して頂きた
いと思います。