日本伝承医学はなぜ骨を重要と考えるのか
             2022.9.13. 有本政治

【生命の仕組みの考察】

医療というものは究極的には人間の命を全うさせる事を目的としてい
ます。命を扱うという事は、命の仕組みを知る必要がある事は言うま
でもありません。生命とは何かとの問いに答える事は容易ではありま
せんが、生命の仕組みとなるものは、はっきりとわかっています。
どのような生物であっても生命を成り立たせている仕組みは、「物質」
「エネルギー」「情報」の三態で構成されています。

全ての生物(生命体)は必ずある“物質”で作られ、生命体を生かし
動かす“エネルギー”が必要で、さらに内外との“情報”の、受容・
伝達・処理・反応能力があって初めて生きていくことができます。
命あるものの仕組みはこの三態を備えないと存在できないのです。
命を存続していく上でこれが絶対必要条件となります。

【生命の仕組みの三態を人体にあてはめる】

上記の生命の仕組みの三態となる「物質・エネルギー・情報」を具体
的に人体にあてはめて考察してみますと、陸上生物の生命を維持する
上で不可欠な物質は究極的にはCa(カルシウム)P(リン)になります。
これは、海水の主成分となっている物質です。もっと具体的に生命に
不可欠な物質をあげれば、それは命の源となる“血液”になります。
次に人体の機能のほとんどを動かすエネルギーの主体は“電気”エネ
ルギーとなります。心臓も筋肉も脳も全て微弱な電気をエネルギーに
して機能しています。そして人体の情報として作用するのは“磁気”
であります。人体の情報の各種司令中枢は脳にあり、その主体は磁気
情報での受容・伝達・処理・反応が行なわれています。

要約すると、物質としてのCa(カルシウム)P(リン)と血液(赤血球、
白血球、血小板)であり、エネルギーとしての電気、情報としての磁
気になります。
人体はこの三要素の全てが備わらないと生命体して成立しないのです。
 

【人体の最重要組織を「骨」に見出した古代人】

次の展開はこの生命の仕組みとなる3条件全てに、一番関わる人体の
組織器官は何なのかが判明し見出されれば、生命に対して一番合理的
なアプローチの方法が構築できる事になります。これに気づいたのが
日本の古代人だったのです。

上記の3条件の全てに関与しているのが人体の組織器官の中の“骨組
織”になります。人体の骨は正にカルシウムとリンの貯蔵庫であり、
骨の主成分はリン酸カルシウム(アパタイト)でできています。リン酸
はDNAの構成成分であり、エネルギー代謝のもとであるATP(アデ
ノシン三リン酸)になくてはならない物質です。またカルシウムは全
細胞の機能調節物質として最重要です。つまり骨こそ生命活動の中心
たる物質が集積している器官なのです。

すなわち骨は、骨の中の骨髄に多く存在する「造血幹細胞」の中で遺
伝子の複製、遺伝子の機能発現が行なわれ、また細胞呼吸とエネルギー
代謝など様々な生理作用の要となる生きた貯蔵庫なのであります。
さらに骨の中の骨髄で血液(赤血球、白血球、血小板)は作られていま
す。また骨の特性として、圧や振動(ヒビキ)が加わることで、圧電
作用が働き電気を発生します。そして電気が流れることで電磁誘導に
より磁気も発生します。

さらに人体の情報の伝達系の大元は神経系だけではなく人体の中心に
歴然として存在する骨格を介した「骨伝導」になります。骨伝導は
人体中最大で最速の伝達系で、骨伝導を介して電気エネルギーも磁気
情報も全身に伝達されます。体の中で実際に活動している部分は主に
内臓であるために、私たちはどうしても内臓に目がいってしまいます
が、組織器官として内臓と同じくらい重要なのが「骨」だったのです。
正に骨は生命物質の貯蔵と生産、電気エネルギーの産出と充電、磁気
情報の発生と伝達の主体として生命維持の中心を担っているのです。

以上の事を日本の古代人は、その鋭い感受性で感知し骨を主体とした
生命力活現法(骨髄機能の発現法)を開発研究したのです。骨は保存状
態が良ければ何億年も腐らず存在できる物質であります。生命体は
その何億年も残る骨に生命の遺伝子を刻み込んだと考えられます。
日本の古代人はこの事を直感し骨に“情報を刻む”技法を開発したの
です。その技法が日本伝承医学になります。