猛暑が体に与える影響について
~猛暑の夏から涼しい秋への季節の変わりめは要注意
              2023.8.21.有本政治

治療の世界に携わってから今年で丸50年の節目を迎えています。
50
年続けてこられたのは日本伝承医学が病気や症状を改善する
効果が高かったことを証明しています。しかしこの医学がいか
に優秀であっても自身の生活習慣の改善無くして病気治しはあ
りません。病気は「食・息・動・想・眠」の乱れに起因するか
らです。今一度この健康の五原則を見直し健康維持に努めて頂
きたいと思います。

【体温に近い猛暑が人体に与える影響】

人体は、体温より気温が高くなると脳の脳幹(視床下部)に熱
がおび、生命現象を司る自律神経のバランスが乱れていきます。
自律神経は、体を外界の気温や気圧の変化に適応させ体内環
境を一定に保つ働きを担っています。呼吸・心拍・体温・血圧
・消化・代謝、排便排尿、睡眠、情緒、筋肉の働き、血流調整
等、これら基本的生命維持機構は、自律神経によって24時間
休むことなく微調整されているのです。
ところが35度以上の猛暑が続くと、脳の中枢部である視床
下部に熱がこもり、脳内温度(脳温)が上がっていきます。脳
は最も熱に弱い臓器で、脳温が上がると、脳が正常に働かな
くなり、自律神経のバランスが崩れ、心臓機能を大幅に低下
させていきます(呼吸・心拍・脈拍・脈圧・体温等の乱れ)
心臓への負担を軽減するためには、横たわる時間をできる
だけ長くとるようにします。低下した心臓機能を回復させる
ためには、左首と心臓の裏(背中側)の局所冷却が有効となり
ます。猛暑時に外出する場合は、氷を入れたアイスバッグを
携帯し、首筋やひたいを常に冷却する習慣をつけます。

 【猛暑が精神に及ぼす影響】
自律神経は理性と本能のバランスを保つ心の司令塔になり
ます。猛暑が続くと自律神経をコントロールしている脳幹部
に熱がこもるため、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、
情緒不安定になります。眠れなくなったり、眠りが浅くなっ
たり、悲しくなったり、イライラしたり、怒りっぽくなります
 
情緒不安は、うつ的症状を引き起こすのでやる気が出なく
なり、常にだるく、眠く、疲れやすくなります。喪失感、
空虚感が強くなり、ぼんやりしてしまうことが多くなります。
また猛暑時には自律神経のバランスの乱れから飲酒の回数
や量が増えやすく、感情にも波が出てくるので、家庭不和や
人との摩擦、すれちがいが生じやすくなります。
眠りの質が低下し睡眠不足になるので、就寝時には必ずア
イスバッグで首筋を冷やし氷枕で後頭部を冷却して脳内温度
を下げるようにします。脳温が下がると交感神経の緊張が緩
和されリラックスできます。

【猛暑の夏から涼しい秋への季節の変わりめは要注意】
古代より夏から秋への移行期は「鬼門(きもん)の季節」と
呼ばれ、高齢の方や体の弱っている人が亡くなりやすい時期
とされています。夏の暑さで弱った体が、涼しい秋の気候に
体内を順応させようと大量のエネルギーを費やすことで、体
内のバランスを崩し体調不良を起こすからです。
夏の猛暑をうけると命の源である血液をいち早く身体各所
に送り届けなければならなくなり、心臓のポンプ作用がフル
稼働し心臓機能に大きな負担がかかります。生命維持にとっ
て最重要臓器である心臓が弱るということは、生命にとって
の危険を意味します。また涼しい季節に順応するためには大
量の血液を使うので、全身の血液の配分が大きく乱れること
になります。
心臓の弱りで血液循環が悪くなり、さらに血液の配分が乱
れる事で、心臓と脳に血液不足が生起されるのです。これが
心臓病(動悸、息切れ、狭心症、心筋梗塞、心不全、大動脈
解離等)と脳血管障害(脳梗塞、脳いっ血、くも膜下出血等)
発生のリスクを上昇させ死亡につながっていきます。
この機序を理解し、心臓と脳の虚血を最小限にするために
は、横たわる時間をできるだけ多くとり、脳温と脳圧上昇を
防ぐ頭部冷却を徹底して行なうことが必須になります。

【熱中症を甘くみてはいけない】
熱中症は脳内温度の上昇が直接的要因になります。猛暑で
急激に脳温が上がるのは、脳が頭蓋骨という固い骨のヨロイ
の中におおわれている為、熱をうまく放散させる事ができな
いからです。
急性症状の場合は脳の深部にある視床下部の熱を早急に除
去しなければなりません。脳温を下げるためには、脳内をめ
ぐる血液を直接冷やす事ができる首筋からの冷却が効果的に
なります。横になり氷を入れたアイスバッグで首筋、ひたい、
後頭部等を徹底的に冷却します。外出先で氷やアイスバッグ
が無い時には、袋入りの氷をいくつか購入し、袋ごと首筋や
後頭部を冷やします。水をゆっくり飲み、適度の塩分補給を
します。応急処置としては塩やマヨネーズを少量なめること
が有効です。
熱中症になっても初期の段階では自分では気が付かない場
合があります。初期症状としてはだるさ、足がつる、ふくら
はぎから足首の違和感、目のかすみ、目の奥の痛み、白目の
充血、耳の閉そく感、ふぁ感、顔のほてり、顔の赤み、皮膚
が冷たい、発汗、筋肉痛、息苦しさ等の症状が挙げられます。
このような症状がみられたら横たわり、脳内温度を下げるた
めに首筋や頭部冷却を行ない、水分と塩分補給をします。吐
き気、嘔吐、めまい、立ちくらみ、頭痛、けいれん等が発症
したら要注意です。熱中症は意識障害や命に危険が及ぶので
決して過信してはいけません。妙な眠気と共に意識がもうろ
うとし、脳内温度(脳温)が急上昇します。脳温は40.5度を超
えると脳を構成するたんぱく質が変異し42度で脳細胞は死滅
してしまいます。脳は熱に最も弱いため、「選択的脳冷却機
」というものが備わっています。
体質的、遺伝的に心肺機能が弱い人は、脳温が上がりやす
く熱中症になりやすいので気をつけるようにします。就寝時
間を早め、できるだけ横になる時間を増やし、就寝時は氷枕
で頭部冷却を行ないます。就寝時には脳内に熱がこもるので
夜中に目が覚めて氷が溶けていたら必ず補充するようにします

※選択的脳冷却機構(SBC)Selective Brain Cooling
体温とは独立して存在している脳の冷却装置のことを言いま
す。顔面、頭皮で冷やされた血液が、眼静脈や導出静脈を経
由して頭蓋骨内に入ることにより脳が冷却されます。
鼻腔の奥に脳とつながる毛細血管があり、鼻呼吸により冷
たい空気を常に脳へ送っています。頭部の皮膚には体幹部の
二倍の汗腺があり発汗により速やかに熱を放出できるように
なっています。

 【就寝時の冷房つけっぱなしが体に良くない理由】
 昨今の夏場の猛暑は異常としか言えません。この体温に近
い暑さは当然、体内に熱をこもらせます。この体内のこもっ
た熱を体外に放出する手段として、人体は「発汗」と「呼気
」を駆使して対応しています。
発汗による放熱は、皮膚の汗腺を開いて汗を出し、その水分
が「気化熱」として放散する時に起きる冷却作用を使って体
温を下げています。次に呼気を使用して内熱をすてます。
夏場、毛におおわれた犬が「ハーハー」と呼気を荒くして体
熱をすてている姿はよく目にするところです。
 また皮膚は「皮膚呼吸」といって、皮膚から内熱と毒素と
なるCO2(二酸化炭素)を放出して体内に熱と毒がこもらない
ようにして命を守ってくれています。つまり体温調節の主体
は「皮膚」が担っているのです。
 この体内の熱の放出は、眠りについている夜間に身体の深
部の熱を「発汗と呼気・皮膚呼吸」を駆使して放出していま
す。しかし、遺伝的に心肺機能が弱い人は皮膚機能が弱く、
汗腺を開いたり閉じたりする作用が低下ているので、体温調
節がうまくいかないため風邪をひきやすく、また汗がかけな
いため熱がこもりやすくなり、息苦しさ、胸苦しさ、顔や全
身の皮膚が熱く赤くなったり、湿疹ができたり、体がだるく
なったり発熱したりします。
 就寝中に部屋の冷房をつけっぱなしにして部屋の温度を28
度以下に保ってしまうと、余計に皮膚は汗腺を閉じて体温の
放出を止めてしまいます。また、冷房の風や扇風機の風は皮
膚を乾燥させ皮膚機能を著しく低下させ、内熱と毒素(CO2)
を体内にこもらせていきます。これにより体内の深部にこも
った熱がすてられず、発汗できないために体内に水分が停滞
し、手足や身体のだるさ、疲労感、熱感が生じます。呼気低
下による肺と気管支の熱のこもりが、喉に違和感や痛みを生
む原因となります。
 故に夜間は冷房をつけっぱなしにするのではなく、室温が
高い時と低い時という温度差の時間が必要になるのです。室
温が30度近くなると自然に目が覚めるようになります。汗腺
が開いて熱が放出され、冷房時には汗腺が閉じるという温度
調整作用がなされ、体の熱のこもりを一番良い状態に調節し
てくれます。また皮膚の乾燥を防ぐことで皮膚呼吸作用を保
ち、内熱と毒素をすててくれます。この機序を正しく認識し
て冷房はつけっぱなしではなく、つけたり消したりすること
が大事です

【日本伝承医学における対処法】
 日本伝承医学は「心臓の医学」と言われ、低下した心臓機
能を戻し、骨髄機能を発現させることで免疫力(造血力)と生
命力(細胞新生力)を高めることに治療技術の主体を置いてい
ます。血液の循環・配分・質を整え、脳の虚血(血液不足)
脳内温度の上昇を回避していきます。猛暑から秋にかけての
季節の変わり目は、特に免疫力がおちやすい時期でもありま
す。心臓、肝臓(胆のう)機能を高め、免疫力を上げていく為
には2週間のペースでの治療が望ましいと言えます。
 免疫力とは造血力、「血液の力」のことを指します。血液
は赤血球・白血球・血小板で構成されていますがその中でも
白血球が免疫の全てを担っています(白血球は大きく分類する
とリンパ球・顆粒球・単球に分けられます)。血球には寿命
があり赤血球が約120日間に対し、リンパ球を除く白血球の
寿命は約2週間とされています。故に生活していく上で2週間
というリズムは重要な意味をなします。
 命の源である血液(赤血球・白血球・血小板)は骨髄の中で
作られます。低下した造血力を高めるためには骨髄機能を発
現させることが不可欠になります。
 日本伝承医学では30年に渡り患者さん方の血液検査のデー
タを集積しており、その検証から赤血球・白血球・血小板の
数値が極めて短期間で正常に戻ることを立証しています。そ
の他の異常値も実証数値として確認されています。日本伝承
医学は唯一骨髄機能を発現させることができる治療技術だか
らです。