人工透析の指標となるクレアチニン値は何故上昇するのか2016.6.14 有本政治

腎臓の機能の指標とされている検査項目にクレアチニン値があります。クレアチニン
値は運動量や筋力によってエネルギー代謝率が変わるため、基準値は女性が
0.4〜0.8mg/dl 男性は0.5〜1.1mg/dl位とされています。この数値が高くなると腎臓の、
ろ過再生機能が低下しているとみなされます。人工透析導入の目安とされ、病院や
医師の判断の違いはあれど、5.0mg/dl以上になると導入を示唆され、8.0mg/dl以上
はほとんどの場合人工透析が実施されています。

しかしこのクレアチニンの数値には少なからず疑問がもたれます。クレアチニンの
数値が上昇したから腎臓が不全と言われ、尿毒症で命を落とす危険があるという
理由で人工透析を導入したにも関わらず、クレアチニンの数値は人工透析を実施
しても一向に低下しないのです。基準値にはならないのです。

私の43年の臨床の中で、数多くの透析患者を診てまいりましたが、透析後数時間
でまた元の数値に近い状態に戻ってしまうのです。クレアチニン値が10mg/dl以上の
方が4〜5時間に及ぶ透析後5.0mg/dl位に下がるものの、また7〜8mg/dlまでに戻っ
てしまうのです。人工透析導入前、クレアチニンの数値が11mg/dlまで上昇していて、
ほとんど自覚症状は無く、尿も普通に出て、普通に仕事ができていた患者が、透析
を行なってもクレアチニン値は7.8mg/dlまでにしか下がりませんでした。それどころか
体調を崩しはじめ、仕事もままならない状態になってしまいました。これでは一体何
のために時間と労力をかけて人工透析にしたのかわかりません。
人工透析は導入後、時間の経過と共に体調不良を訴える方が多く、仕事をしていて
も次第に仕事ができなくなる方がたくさんいらっしゃいます。さらにもっと重篤な病気
との合併症や腎臓がんへ移行するケースも見受けられます。

このような矛盾を解決するために、生体においてこのクレアチニン値の上昇は一体
何故起こっているのかの正しい認識と、その本質を明らかにする事が求められます。
以下日本伝承医学の疾病観に基づいて考察していきます。これをセカンドオピニオ
ンとして選択の指針として頂きたいと思います。

<生きている体の起こす反応には全て意味がある>

これは、日本伝承医学が首尾一貫して主張している病気や症状の捉え方になります。
この世に生を受け、生きとし生ける全ての生物は、自らの体をより悪くなる方向に反
応したり、ましてや死を早める方向に自らの体に変化を起こし、反応する事はありま
せん。この延長上からクレアチニン値の上昇を捉える必要があるのです。この視点
に立つことでクレアチニン値上昇の本質が見え、必要な対応としての真の姿が浮か
び上がってきます。

現代医学においても近年、症状を一方的な悪の反応ではなく、必要な対応という考
え方が随所に見られるようになってきました。その一例として発熱が挙げられます。
これまでは一方的に悪の反応であり、死に至る反応として発熱は直ちに解熱剤で
下げる事が常識とされてきました。しかし最近では、発熱は低下した体力や免疫力
を元に戻し、インフルエンザ等においてはインフルエンザウイルスを撃退するため
に必要な対応という考え方が、一部の医学グループから出始め、高熱を一気に下
げてはいけないという対応がとられるようになってきました。高熱を下げる事が、
予後に良い結果をもたらさないという臨床経験を積み重ねた上での結論になります。
今後こうした考え方は拡がりを見せており、近い将来には検査数値が高い事は悪い
ことではないという捉え方が定着する日が来ると感じられます。

生きている体の起こす全ての反応は一方的に悪ではなく、何かを元に戻し、何かを
補い、平衡を保ち、治ろうとする反応であり、言い換えれば最後の最後まで命を存
続させるために必要な一時的な対応がその本来の目的なのです。つまりクレアチ
ニンの数値が高まることも一時的な必要な対応であるということになります。

<クレアチニンという物質を生成するクレアチンリン酸代謝について>

人体のエネルギー代謝の副産物であるクレアチニンは、クレアチンリン酸代謝から
産出されます。クレアチンリン酸代謝とは、私たちが生きて行く上で、必要不可欠な
働きである基礎代謝の中のエネルギー代謝にあたります。エネルギー代謝とは、
摂った栄養を人間が動くために必要なエネルギーに換えることです。このエネルギ
ーのお陰で私たちは筋肉や内臓、脳を動かし生命を営む事ができるのです。

<生命を維持するために必須不可欠なエネルギー物質ATP(アデノシン三リン酸)
を作るエネルギー代謝とは>

人体のエネルギー代謝の方法は三段階三種類備えられています。「糖質代謝」、
「脂質代謝」「クレアチンリン酸代謝」になります。糖質代謝はブドウ糖を燃やし、
脂質代謝は脂肪を燃やす事で、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を
作成します。
クレアチンリン酸代謝は燃やすのではなく、クレアチンという物質を分解する事でリ
ン酸放出し、アデノシン二リン酸にくっ付ける事でATP(アデノシン三リン酸)を作り
出します。クレアチンリン酸代謝の方法は糖質代謝と脂質代謝に比べ時間が早く
単純な方法でエネルギー代謝が可能になります。そのために緊急事や大きなエネ
ルギーがすぐに必要な場合のエネルギー代謝の方法として利用されます。

このATP(アデノシン三リン酸)という物質は、脳や筋肉、心臓、肝臓等を動かす必須
不可欠のエネルギー物質なのです。この物質が作成されないと私たちは生命を維
持できないのです。ATPは血液の循環、配分、質と同様に命の源となる物質で、一時
も欠かすことのできない物質であり、常に産出され続けなければならないのです。

<三段階三種類のエネルギー代謝の中の糖質代謝と脂質代謝の低下がクレアチン
リン酸代謝を活発にさせた>

必須不可欠なエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)は常に一定量産出され
ないと生命は維持できなくなります。エネルギー代謝の三段階三種類の方法である
糖質、脂質、クレアチンリン酸代謝において、糖質代謝と脂質代謝の機能低下が起
きたため、残るクレアチンリン酸代謝を活発にする事で、必須不可欠なエネルギー
物質ATP(アデノシン三リン酸)の産出を補う対応が生じたのです。

前述してあるようにクレアチンリン酸代謝は、複雑な回路がなくても素早く効率的に
大量のアデノシン三リン酸(ATP)を合成できる代謝方式です。これに頼らざるを得な
い状況に人体の生理状態が追い込まれているのです。つまりクレアチンリン酸代謝
の活発化は一時的には必要な対応になります。これにより人体のエネルギー代謝
がもちこたえている間に、低下した糖質、脂質代謝を元に戻す処置が講じられなけ
ればなりません。

<クレアチンリン酸代謝の活発化がその副産物であるクレアチニンを
大量に発生させた>

生命維持のために不可欠なATP産出を守る対応がクレアチンリン酸代謝の活発化
であります。クレアチンリン酸代謝の過程で、クレアチンリン酸が分解される事でクレ
アチニンは生成されます。これはクレアチンリン酸代謝が活発に行なわれれば行な
われるほど、その産物であるクレアチニンの生成が進む事になります。

<大量のクレアチニンを腎臓が分解、ろ過再生できない状態がクレアチニン値
上昇の理由>

大量に産出されたクレアチニンは血液によって腎臓に運ばれ腎臓で分解、ろ過再
生され尿として体外にすてられています。しかし分解するクレアチニンの量が多い
ために、腎臓が分解しきれない状況に置かれるのです。すでにエネルギー代謝が
低下している状態の体内の生理環境は、血液がドロドロでベタベタの状態で、さらに
赤血球自体の変形も起こり、血液の質の低下が極限状態にあります。この状態は
腎臓の血液のろ過再生作用に負担をかけ、腎機能を低下させていきます。
これ以上腎臓に負担がかけられない状況に置かれた場合、腎臓はその機能を保持
するために故意にクレアチニンを分解しないで血液に戻し、命に直結する腎臓の働
きを守る対応をとるのです。

<クレアチニン値の上昇は腎臓の弱りの指標ではなく、腎臓を守る対応である>

現代医学におけるクレアチニン値の上昇は、腎臓の機能が半分に低下したために
起こる、腎臓の機能低下の指標にしていて、血中のクレアチニン値が高まること
は、腎臓が不全になると捉えています。故に人工透析で人工的に血液をろ過再生し、
腎臓の負担を軽くし、クレアチニンからの害を防ぎ、尿毒症を防止しようとしています。
しかしクレアチニン値の上昇の本質が捉えられていないために、人工透析を導入し
ても、透析が終了し数時間が経過すれば、また元の高いクレアチニン値に戻ってし
まうのです。

クレアチニン値の上昇は腎臓の弱りの指標ではなく、腎臓機能を守るために腎臓
に負担をかけないように分解しないで血中に戻している対応の姿になります。
これがクレアチニン値の上昇の根拠と機序になります。故にクレアチニン値を人為
的に下げる処置をしてはならないのです。

<クレアチニンの上昇を正しく理解し、人工透析を回避する方向で対処する事が
肝要、そのためには何を為すべきか>

人体の必須不可欠なエネルギー物質ATPの産出を守るために、クレアチンリン酸
代謝を活発にしています。命を守り体が元に戻るためにはエネルギー代謝が活発
になりATPが多く産出される事が必要です。そのためには一時的にクレアチンリン酸
代謝を活発にし、エネルギーレベルを上げる必要があります。クレアチンリン酸代
謝が活発になれば、その副産物のクレアチニン値が高くなるのは避けられません。
また腎臓の負担を軽減するためにも必要な対応になります。故に体が回復に向か
うためには、一時的なクレアチニン値の上昇は必要な事なのです。この認識が大切
で、これを理解していないとクレアチニン値の上昇を一方的に悪い反応と思い、不安
が増長されます。

クレアチニン値が高くなるということは、治そう、元に戻そうとする対応が強くなる事
を意味します。そしてこれは一時的な対応でエネルギー代謝が元に戻り、生命力や
免疫力が回復すれば次第に正常値に戻っていきます。
そのためには、クレアチンリン酸代謝を活発にせざるを得ない原因となっている糖
質代謝と脂質代謝を元に戻す事が不可欠です。人体の糖質と脂質のコントロール
は内臓の肝臓と胆のうが担っています。故にエネルギー代謝を正常に復すために
は肝臓と胆のうの機能を元に戻す必要があるのです。

また血液の循環の要となる心臓の働きを高める事も大事です。つまり”肝心要”(肝臓
と心臓)の働きを高める事が不可欠になります。肝心要を元に戻し、全ての病気の
背景に存在する生命力や免疫力の低下の回復が同時に行なわれる事が肝要です。

これらを統合的に行なえるのが日本伝承医学の治療法になります。世界で唯一、
骨髄機能を発現させる事ができる治療法です。骨髄は細胞新生と造血を担う場所
であり、生命力と免疫力を回復させるには一番効率的に作用を及ぼせる器官であ
ります。

また骨はリン酸カルシウムでできており、ATP(アデノシン三リン酸)を合成するには
リン(P)が不可欠な物質になります。今回の主題になっているクレアチンリン酸代謝
は、分解されたリン(P)がアデノシン二リン酸と結合する事で、アデノシン三リン酸(ATP)
となるのです。

さらに生命の最小単位である細胞の活性化にはカルシウムという物質が不可欠な
役割を果たします。この生命現象に不可欠な物質のリン(P)とカルシウム(CA)の貯
蔵庫が全身の”骨”なのです。
日本伝承医学の治療法は、人体の骨にひびきを送り、骨に電気エネルギーと磁気
情報を与え、このリンとカルシウムの貯蔵と放出をコントロールできるのです。これ
により人体のエネルギー代謝と細胞の活性化を増進できるのです。

内臓的には肝臓(胆のうを含む)と心臓の機能向上を中心に技術が構築され、腎臓
機能の向上には、古代人が開発した大腿骨の叩打法が著効を示します。また家庭
療法として推奨している頭と肝臓、腎臓の氷冷却法が、脳の熱と脳圧の上昇を除去
し、肝臓、胆のう、腎臓の機能の回復を助長します。この様な統合的なとり組みを続
ける事で、肝心(肝臓(胆のう)と心臓)要と肝腎(肝臓(胆のう)と腎臓)要の両方が機能
を回復し、人工透析を回避する事が可能になります。