甲状腺機能障害の本質~バセドウ病、橋本病、クレチン症、甲状腺がん
                                2019.6.22. 有本政治


『生命の本質』

この世に生を受けた全ての生物は、自らの生存を全うするために、生命を維持する
機能と生命維持に破綻が来た時に、それを元に戻す機能を備えています。
前者は「恒常性維持機能」と呼ばれ、後者は「自己修復機能」と呼べるものです。
簡単に言えば、命を最後まで守り、生存を全うするための自己防衛手段という事です。

生命のプログラムは、これを完璧に行なえる様に設計されています。つまり最後の
最後まで生命を存続するための機能を、何段階にも完璧に備えているのです。この
観点に立てば、体に起こる全ての反応は、自らの体を悪い方向に向かわせたり、
命を自ら縮め、早く死に向かわせる様に反応を起こすというような事は絶対にない
ということです。つまり体に起こる全ての反応や症状には意味があって、必要だから
体に起こしているのです。生物の生きる目的は、自らの生存をまっとうし、その種の
保存を達成するために生きています。故に体はそれを守る機能を完璧に備えている
のです。


『現代医学の病気や症状の捉え方には大きな矛盾が潜んでいる』

この視点に立って、体の起こす様々な症状を捉えてみると、現代医学の病気や症状
の捉え方には明らかな矛盾があります。全ての症状や各種検査での基準値から外
れた数値を全て悪い反応として一方的に捉えられています。
体にとって悪い反応ならば、体をより悪い方向に導き、死を早める方向にもっていく
事になります。これは前述した生命の本質に反する事になります。

病気や症状を一方的に悪の対応として捉えてしまうと、大変な認識違いを生む危険
性があります。この代表的な例が“自己免疫疾患”という考え方です。バセドウ病や
橋本病も自己免疫疾患として扱われています。自己免疫疾患の考え方からすれば、
自らの免疫機構を破壊するという発想は、死を早める反応という事になります。
これは生命の原理と本質から明らかに外れる事になります。これではバセドウ病や
橋本病の本質を解明する事は不十分と言わざるを得ないのです。
日本伝承医学が首尾一貫提唱する正の対応の視点に立って、甲状腺機能障害の
本質をバセドウ病と橋本病を例にとって解明していきたいと思います。


『バセドウ病と橋本病の本質はホルモン系を作動させて命を守る対応の一環である』

甲状腺は新陳代謝を促進するホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌する器官になります。
甲状腺の働きが強すぎると新陳代謝が促進され過ぎて身体が消耗傾向になります
(バセドウ病)。逆に甲状腺の働きが弱まると新陳代謝が低下して身体機能も低下し
していきます(橋本病)。これらは共に甲状腺のホルモン分泌に問題がある病気として
扱われています。

体のホルモン系は体の恒常性を維持するための不可欠なシステムで、大変重要な
働きを担っています。故にホルモンの分泌は精妙に巧妙に安全にコントロールされ、
私達の命を守ってくれています。甲状腺ホルモンの分泌量は、一生涯で切手一枚分
くらいと言われ、超微量で絶大な作用をもつものです。生命を維持するための恒常性
維持機能のシステムの一翼を担う大事な働きをもっています。

恒常性維持とは、言葉を変えれば基本的生命維持と言えます。生きている体はこの
生命維持機構を完璧に備え、体の危険状態や状況に応じて適切な対応をとり生命
を維持しています。その対応は幾種類にもまた何段階にも設定されています。
それでは基本的生命維持機構(恒常性維持機構)とはどういう機能なのか説明してい
きます。


『基本的生命維持機構とは何か』

人の命を守り、存続していくための最低必要条件は以下になります。それは「呼吸」
「心拍」、「体温」、「ホルモン」、「自律神経」、「精神作用の安定」で、この中の一つ
でも障害が起きると、生命維持機構に支障が生じます。生命を維持していくためには、
以上の条件の恒常的な持続が絶対必要条件になります。故に基本的生命維持機構
は恒常性維持機能と呼ばれています(以下基本的生命維持機構のことを生命維持
機構と呼んでいきます)。

生命維持機構には大別すると二つの系があります。その一方は神経系(自律神経を
含む)で、もう一方はホルモン系になります。この二つの系が作動する事で、生命は
維持され、私達の命は守られていくのです。それぞれが必要に応じて作動し、命を存
続していきます。

体内は常に一定の状態に保たれていますが、正常から逸脱する状態が続くと、命に
危険が及ぶという判断が下され、即座にその状況に応じて神経系とホルモン系が作
動して、体内を元の状態に戻す様に働きます。その判定基準は幾重にも設定されて
いて、その対応手段も まさに精妙に巧妙に講じられています。


『人体の生命維持機構のシステムを災害時のライフラインに例えて解説』

人体の命を守る手段は、災害時のライフライン確保の手段と共通しています。
元々命を成り立たせるには共通の仕組みが存在します。それは生命の仕組みとなる
3要素の「物質・エネルギー・情報」です。生命体を成り立たせるには、必ずある「物質」
でできていて、それを動かす「エネルギー」があり、内外との情報の受容、伝達、処理、
反応する「情報」の三態が必要です(詳細はホームページ院長日記、2016年8月2日
『生命の仕組みに準拠した日本伝承医学の治療法』参照)。

故に生命を維持するためには、この生命の仕組みの三態全てを確保する必要があ
ります。この生命の仕組みの三態を、生命を維持するための災害時のライフライン
に当てはめてみます。ライフラインとはこの要素が無いと命を存続できない最低ライ
ンのことです。その仕組みは、物質としての食料と水であり、エネルギーとしての火力、
電気、ガスであり、情報としての外部との通信システムになります。

災害時に人命を守るためには、この三要素の確保が急務になります。その中でも、
エネルギーや情報は確保できなくとも、直接生命と関わる物質としての食料と水の確
保は最も早急に確保する必要があります。
このように人体の生命維持機構の仕組みと災害時のライフラインの確保の仕組みは
共通しています。つまり生命を守るシステムは、階層的に拡大でき、人も社会も、地
球を含めて共通の原理として統一できるのです。


『人体の命を守るシステムの神経系とホルモン系はどう作動するのか』

人体の生命維持機構の作動システムは神経系とホルモン系が担っています。その中
で神経系はエネルギーと情報に相当し、ホルモン系は物質に相当します。
人体の神経系とは中枢神経系と末梢神経系に大別されていて、内臓をコントロール
する自律神経は中枢神経系に入ります。神経系は人体の屋台骨に当たる脊柱の中
を脊髄神経が通り、その分節毎に支線が末端まで伸びて全身を網羅しています。
その神経の中をエネルギーとしての電気と情報としての磁気が伝達される事で、全
ての生理活動がコントロールされます。当然、生命の危険が生じた場合、全身の神
経系が真っ先に感知し、受容、伝達、処理、反応行動を起こし防衛処置を発動します。

この神経系の反応に呼応してホルモン系も作動します。ただ、ホルモン系は、エネル
ギーや情報の伝達ではなく、直接ホルモンを分泌して血液を介して当該部位に物質
を供給するシステムになります。故に防衛システムの作動の中では、事態がより重大
な場合の対応システムに組み込まれています。つまり神経系だけの対応で処理でき
る場合は、ホルモン系は作動しなくても良いのです。この様に人体の防御システムに
は神経系とホルモン系の優先順位が設定されているのです。


『本来ならバセドウ病と橋本病は神経系の自律神経の対応で元に戻せるものであ
るが、「喉」という特殊性からホルモン系の対応になった』

命に危険が迫った場合の防衛対応システムは人体内の神経系とホルモン系が協調
しながら元に戻す防衛対応を発揮します。その手段は幾重にも段階的に構築されて
いて、最後の最後まで命を守る対応を完璧に遂行します。

甲状腺機能障害の病態となるバセドウ病と橋本病に対しても上記のシステムは当然
対応します。人体の組織器官の機能障害に対して、基本的にはまず神経系の防衛
システムを優先的に作動させる事で対応を図ります。いきなりホルモン系を作動させ
るわけではありません。喉という特殊性がホルモン系の対応を余儀なくさせるのです。

甲状腺の置かれた位置は、体表のすぐ近くで、しかも細くくびれた首になります。人体
中のホルモン器官でこれほど体表に接した浅い位置にあるものはありません。しかも
喉は外界から食べ物と空気をとり入れ、体内にとり込む関所に当たる場所であります。
故に人体の免疫機能の最前線の役割を付与されています。つまり甲状腺を含む喉の
部分は、直接生命維持に関わる重要個所となるのです。

また、喉は人体の免疫機構の最前線であることから、遺伝的に虚弱体質の人や、
免疫力の低下した人は元々扁桃腺に炎症が起きやすくなります。幼少期より、風邪
をひきやすく、アデノイド等の喉の疾患にかかりやすい体質をもっています。また背景
には遺伝的な心肺機能(心臓と肺の機能)の弱さが存在します。父母、祖父母に心肺
機能の弱さがあると、必ず遺伝的体質として子どもに受け継がれていくのです。
このような認識のもとで、各人は自分の体質を把握し、それに合わせた生活習慣を
送ることが大切です。30代位から生理機能が低下し、無理がきかなくなっていきます。
体がだるくなったり疲れやすくなったり、眠っても次の日に疲れが残る様になります。
故に食生活や睡眠時間に気を付けて過ごしていくことが大事です。


『喉や甲状腺に炎症が起きるのは、機能を元に戻すための必要な対応』

生命体に起きる反応には全て意味があります。その意味とは、体を悪い方向に向か
わせたり、死を早めるために起こしているわけではなく、命を最後まで守り抜くための
必要な対応になります。この観点から、体内に生起される全ての炎症は、低下した組
織器官の機能を元に戻すための必要な対応と言えます。炎症を起こすことによって、
その部位に血液を集めて、体は修復を図っているのです。血液には細胞を修復、再
生させる力があるからです。それは甲状腺を含む喉の疾患の炎症や、全ての炎症に
対しても同様です。故に命にとって必要となる炎症は、抗炎症作用の薬で、封じ込め
てはならないのです。これを薬で封じ込めてしまうと生きている体は次なる対応にせま
られ、次の対応は、より重篤な腫瘍の形成へと移行してしまうのです。最終的にはがん
形成となります(ホームページ「がんを捉えなおす」の項参照)。

喉部は、免疫機構の最前線となるために、一刻も早くその機能を回復させる必要が
あります。故にその反応の出方が激しくなり、炎症も一気に起こり、高熱を発する事
が多くなります。その代表が扁桃炎であり、唾も飲み込めないほどの激痛と炎症、
高熱に見舞われます。これも全て機能を早く戻すための必要な対応になります。
(詳細は教科書『日本伝承医学基礎編』ノドの痛みと炎症を捉えなおすの項参照)

前項で既に解説してあります様に、ホルモン器官である甲状腺がいきなり炎症を起
こすのではなく、遺伝的な虚弱体質と免疫力の低下から慢性的に喉に炎症があり、
それが狭く細い首という場所の特性から、喉の前面部に分布する甲状腺に次第に
影響を及ぼし甲状腺機能低下を生起し、それを元に戻す対応とした甲状腺に炎症
を起こしていくのです。
これが甲状腺炎、甲状腺機能障害の発生の機序になります。しかしこれも全て体に
とって必要な対応であり、命を守るための防衛手段であるのです。
以下具体的にバセドウ病と橋本病が如何なる対応かを解説していきます。


『バセドウ病はどういう観点で命を守る対応と言えるのか』

バセドウ病は甲状腺の機能が異常に亢進し、甲状腺ホルモンが過剰に作られてしま
う状態をいいます。甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にするホルモンなので、
過剰に分泌されることによって、体が常に運動しているような状態になり、それに合
わせて心臓が働く為、動悸や息切れを起こしやすくなります。体は速やかに血
液を全身に回そうとするために、心臓を過度に働かせていくのです。


呼吸数も増加し、発熱、発汗等も発生します。これらの症状が常に表われるため、不
必要に体力、エネルギーが消費され、だるく疲れやすくなります。体重減少、筋肉の
衰え、喉のはれ、下痢、低体温、手指の震え、眼球の突出等の症状もバセドウ病の
特徴と言えます。新陳代謝が活発になるため、気もちが高ぶったり、興奮状態が続
くため、集中力の低下や情緒不安定も招きます。

しかしこのように体が起こす反応には、すべて意味があります。故に薬等で封じ込め
てはいけません。基本的な生命維持機構となる呼吸、心拍、体温、自律神経調整の
働きが低下してくると、体はこれを回避するために、心拍数を増やし、心臓を過剰に
働かせることによって(動悸、心悸亢進等)、心臓のポンプ力を高め、血液の循環を守
ろうとするのです。


『バセドウ病で眼球が突出してくるのはなぜか』

甲状腺刺激ホルモンは、脳の下垂体や視床下部の働きによって調整されています。
この甲状腺刺激ホルモンが甲状腺に働きかけて甲状腺ホルモンを分泌させます。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると脳が察知し、甲状腺刺激ホルモンを減らします。
このように脳が過剰に反応し働くために脳内温度が上がり、脳は虚血(血液不足)を
引き起こしていきます。脳の虚血を回避するため体はまず、脳内の血流を守り、速
やかに脳内に血液を送ろうとします。そのため一時的に脳圧を高めていきます。脳
圧が高まることによって眼圧が高まり、眼球が突出していきます。

眼は脳の一部と言われ、眼の網膜は脳の一部が体の外に突出してきた神経になり
ます。つまり眼球と脳はつながっているため、脳圧が高くなると眼圧も高くなっていき
ます。眼圧(目の圧力)を高めることによって、脳内に高速に血液を回そうとするのです。
この眼圧を薬で下げてしまうと、脳内の血流が滞り、脳内に出血や梗塞を生じさせて、
体は血流を確保しようとします。脳圧や眼圧を人為的に下げた人に、脳内出血や脳
梗塞が多く発症するのはこうした理由になります。

現代医学では、脳圧や眼圧が高くなると、脳内出血や脳梗塞を起こしやすいと言い
ますが、これは認識違いになります。体を守るために脳圧や眼圧を上げているのです。
また、薬物療法や放射線療法で甲状腺ホルモンの分泌を抑えていきますが、こうす
ることで今度は逆に、甲状腺機能低下症状(橋本病等)を引き起こしてしまいます。
よくバセドウ病の人が、橋本病になる場合があると言いますが、これは封じ込める処
置を行なったことによる弊害と言えます。体は全体との関連でみていかなければいけ
ません。体に生じる症状には全て意味があるのです。それは、命を守るために生き
ようとする正への対応の姿になります。


『橋本病がどういう観点で命を守る対応と言えるのか』

橋本病は、バセドウ病とは反対に甲状腺機能の低下状態をいいます。全身の新陳
代謝が低下するため、基本的生命維持のための呼吸、心拍、体温、自律神経調節、
ホルモン調節が低下し、情報も不安定になりやすくなります。性腺刺激ホルモンが出
ないため子宮、卵巣に異常が発生しやすくなります。

甲状腺機能が低下すると全身の働きがにぶく、緩慢になります。バセドウ病とは逆に、
脈が遅くなります(徐脈)。心臓のポンプをゆっくり働かせることで、心臓にかかる負担
を軽減しているからです。新陳代謝が低下するため、水分の代謝も悪くなり、むくみ
が出てきます。汗をかきにくくなるので、あまり食べなくても太りやすくなります。
腸の働きも弱くなるので、便秘になりやすくなります。腸のゆっくりした働きに合わせて、
便の体内滞在時間を長くして熟成、発酵に時間をかけていきます。故に整腸剤等で
無理に便を出してはいけません。

橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起こるので、慢性甲状腺炎とも言われます。
甲状腺機能を元に戻すために、甲状腺に慢性的に炎症を起こし、一時的に熱を発
生させることで、機能回復を図ろうと体は働くのです。しかしこれも命を守るための
必要な対応であるため、この炎症を薬物等で封じ込めてはいけません。炎症を封じ
込めてしまうと、体は熱の排出先を失い、より内部に、より深刻な症状へと進行して
しまうからです。


『甲状腺機能障害はなぜ男性より女性に多く発症するのか』


女性は生まれた時から、子どもを産むように体が準備されています。全細胞が生理
を迎えるための準備を始めているのです。そのためには女性は、男性より成長ホ
ルモンの分泌頻度を高め、甲状腺を活発に働かさなければなりません(甲状腺
には成長や代謝を促す働きがあります)


活発に働く個所は熱を帯び、炎症が起きやすくなります。つまり男性より女性の
方が甲状腺に炎症が起きやすいという事です。炎症が生じた部位は機能低下し
ていきます。体に生じる不調な症状は、炎症から発症するといっても過言ではあ
りません。


女性は、体の成長と生理を起こさせる両方のために、膨大なエネルギーを必要
とするのです。卵巣や子宮の発育にも甲状腺ホルモンが大きく関与していく為、
女性は男性よりも甲状腺に負担がかかってしまうのです。
女性の不定愁訴の症状で甲状腺ホルモンの病気が多いのも、甲状腺ホルモンと女性
ホルモンの分泌が、大きく関連性があるからです。

また女性は、30歳位から基礎代謝量が減っていきます。子どもを生む適齢期を
過ぎると体は閉経に向けて基礎代謝量を減らして閉じようとします。そのため、
代謝に関わる甲状腺が機能低下していきます。甲状腺機能低下が、男性より女
性に多いのはこのような理由からになります。


『バセドウ病は男性もなる場合があるが、どういう男性に多く発症するのか』

男性でバセドウ病になる人には共通点があります。これは肉体的には、新陳代謝力
に低下が起きやすい人に発症しやすいのですが、それ以上に精神的、気質的な特
徴が関与している場合が多いのです。具体的には、やる気旺盛でありながら神経質
なタイプの人になります。このタイプの人は常に自分を奮励し、また気を遣うため、脳
内に熱が生じやすくなります。この持続が脳内に熱をこもらせ、脳幹部の甲状腺刺激
ホルモンの分泌に異常をきたしやすくなるのです。
また背景には先天的な心肺機能(心臓と肺)の弱さがあります。


『バセドウ病より橋本病のほうがなぜ圧倒的に女性に多いのか』

甲状腺機能が亢進するバセドウ病は男性と女性では、約14の比率と言われ
ています。甲状腺機能が低下する橋本病では男性と女性では、約120130
の比率で圧倒的に女性に多く発生しています。
それはなぜかといいますと、バセ
ドウ病の発病は後天的な要因が作用する場合が多いのに対して、橋本病は、先天的、
遺伝的要因が背景にあり、女性自身の生殖機能低下と女性ホルモンの分泌が関わっ
ていることが理由になります。

橋本病は成長を司るホルモンが低下する為、身体的特徴として、骨格が細く
小柄な女性的な体型となります。生理の為にエネルギーを貯蓄していく為、骨
格や体格をその人にとって最小限の大きさにして、省エネルギーで活動してい
くのです。故に橋本病の方が女性の罹患率が高くなっていきます。


これに対してバセドウ病は甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる為、骨格が丈
夫で、普通体型もしくは大柄な体型に成長します。つまりバセドウ病の方が、甲
状腺機能を亢進させるだけの力が備わっているので、橋本病より体の成長、骨
格を成長させる力があるという事です。故にバセドウ病では男性の罹患率が橋本
病よりも高くなっています。



『クレチン症(先天的甲状腺機能障害)について』

甲状腺機能低下の中でも、先天的に甲状腺機能が低下している症状をクレチン症
(先天的甲状腺機能障害)と言います。この病気は生後すぐに行なうマススクリーニン
グ検査で発見されます。
これは母親が虚弱体質に属し、遺伝的に心肺機能(心臓と肺の機能)が弱く、元々
女性としての生殖能力が弱いために、遺伝子レベルから発症しやすくなります。


『原発事故がもたらした甲状腺機能障害について』

許容量以上の放射線を人体が吸収してしまうと死に至ることは周知の事実でありま
す。また致死量に至らない量であっても人体に障害を引き起こします。チェルノブイリ
の原発事故をきっかけに放射線が真っ先に人体の甲状腺に障害を起こすことが実
証されました。今回日本で発生した東日本大震災による福島の原発事故は当然放
射能被爆を発生させています。放射能汚染の第一の障害場所が人体の甲状腺にな
ります。それは喉部の甲状腺は首の突出した最前部に位置し、しかし皮膚と薄い筋
肉にしかおおわれていない最浅部にあるからです。故に人体中一番放射線を直接
受ける場所にあたります。更に呼吸により放射能を吸い込んで付着する場所でもあ
るのです。こうした理由が甲状腺機能障害を生じさせるのです。


『甲状腺がんとの関わりについて』

日本伝承医学におけるがんの見解は、病の最終対応による発現と考えています。
(詳細はホームページ『がんを捉えなおす』参照)
これまで解説してありますようにバセドウ病と橋本病はどちらも身体を守る必要な対
応であり、これを薬物等で封じ込める処置をとることは次なる対応を余儀なくし、病は
重篤に向かうことになります。その最終的な対応手段ががん化を誘発していくのです。


『どう対処すべきか』

日本伝承医学が首尾一貫して主張しているように、どのような重篤な疾患であっても
この症状には、必ず意味が存在します。体の起こす反応は人体のもつ自己修復機
能の発現に他なりません。身体を元に戻すための一時的に必要な対応という捉え方
が病気の真実の姿になります。

バセドウ病の対応は、甲状腺機能を亢進させて低下した新陳代謝を元に戻す自己
修復になります。これを元に戻すためには脳内から分泌される甲状腺刺激ホルモン
の分泌を抑制することが求められます。つまり脳内にこもった熱と脳圧の上昇を除
去することが不可欠になります。そのためには、脳内の温度を下げることが絶対必
要条件となります。

脳内温度を下げるために頭全体と首を冷却することが一番合理的な方法となります。
具体的には後頭部に氷枕を当て、両首にアイスバッグを当てることで速やかに脳内
温度を下げることができます。これにより脳幹部の熱と脳圧の上昇が除去され、甲
状腺刺激ホルモンの異常分泌が正常に復するのです。これを薬で封じ込めてしまう
と脳内温度と眼圧の上昇がさらに助長され、病は慢性化し脳圧の上昇から眼球突
出へと至るのです。

次に甲状腺機能低下症となる橋本病は、もっと根元的なアプローチが必要となります。
これまで解説してありますように橋本病は遺伝的な虚弱体質(心肺機能の弱さ)が背
景にあり、女性自身の生殖機能低下と女性ホルモン不足が存在します。これを回復
に向かわせるためには、遺伝子レベルにも作用させる対処法が必要です。低下した
生命力と免疫力を高め全身の血液の循環・配分・質の乱れを元に戻すことが求めら
れます。そのためには生命の仕組みとなる物質・エネルギー・情報系三態すべてに
作用する治療法が必要です。これを可能にする方法は人体の骨髄の機能を発現さ
せることで達成できるのです。遺伝子レベルにまで作用力をもつ日本伝承医学がこ
れを担うことができるのです。


『日本伝承医学での治療効果』

甲状腺機能障害が、なぜ日本伝承医学の治療でよくなるのか?
甲状腺機能障害は、単に甲状腺という器官が単体で悪い訳ではありません。低下し
た生命力や免疫力を元に戻す自己修復機能として人体には神経系、ホルモン系の
対応が完備されています。この二つの系を正常に作動させるためには、その背景に
ある自身の生命力や免疫力の低下を上げることが不可欠になります。

生命力とは細胞新生力であり、免疫力とは造血に置き換えることができます。この
細胞新生と造血を担っているのは人体の「骨髄」になります。この骨髄機能を発現で
きるのが世界で唯一骨に特化した技術を構築した日本伝承医学になります。また骨
は冒頭で解説してあります生命の仕組みの三態となる「物質」「エネルギー」「情報」
のすべてに関与しています。更に病の直接的な引き金となる全身の血液の循環・配
分・質(どろどろの血液)の乱れも同時に整えることができるのです。日本伝承医学で
は、この二つのことを一番効率よく合理的に行なう事ができるのです。

また家庭療法として薦める頭と肝臓胆のう冷却法が脳内の熱のこもりと脳圧の上昇
を下げ、肝胆の充血と腫れをとることで血液の配分と質の乱れを元に戻します。
脳幹部の熱のこもりと脳圧の上昇を除去することで甲状腺刺激ホルモンの分泌を
正常に戻すことができるのです。

日本伝承医学では、このように病気や症状の根拠と機序を説明し、患者自身が自分
の体質を理解し、病気や症状がどのような理由で発症しているのかを学び、日常生
活で何を気をつけ、今後どうしていったらよいかを学んでいきます。病気や症状と共
存しながら、生活習慣を正し、家庭療法等の自助努力で、自らの免疫力、生命力を
高めていきます。日本伝承医学は謂わば、生命観や疾病観を学ぶ、学びの場、学校
になります。(ホームページ「日本伝承医学の生命観・疾病観」参照)