キネシオ・テープの効能と使用法 2023.4.22. 有本政治
 

 家庭で誰もが簡単に貼ることができるキネシオ・テープ法は、各種スポーツ障害
である捻挫、打撲、筋肉痛、関節痛、腱鞘炎などの痛みの緩和、炎症の減少に非常
に有効な方法になります。キネシオ・テープの使用により、損傷個所を早期に改善
することができます。氷を用いたアイスバッグでの局所冷却法を併用することで、
より有効になります。

 キネシオ・テープはテープ自体に薬が塗布されているわけではありません。
それなのに痛みの緩和、炎症の減少を体感できます。なぜこのような事がキネシオ・
テープを貼るだけで起きるのでしょうか。その時の体のメカニズムと、キネシオ・
テープの使用法を解説していきます。

(1)皮膚は三層構造

皮膚は単なる一枚の皮ではなく、表皮・真皮・皮下組織という三つの組織から
形成された三層構造でできています。表皮はさらに五層に分かれていて一番深い
層の基底層で日々新しい細胞が作られています。表皮の数倍から数十倍の厚さ
をもつ層が真皮で、血管、神経、リンパ管が通っています。真皮には、炎症に
関与する肥満細胞や免疫に関与する組織球が存在しています。皮下組織は真皮
の下の組織で、脂肪を多く含んでいるため皮下脂肪組織とも言われます。表皮
と真皮を支えています。

(2)皮膚は人体最大の臓器
人間の皮膚は伸びたり、元に戻ったりという事が自由にできる弾力性のある
人体で最大の臓器になります(成人で面積が約1.6)
通常皮膚にはしわがありますが、捻挫や打撲、肉離れ、筋肉の炎症等で熱を
おびて腫れてしまった場合は、しわの入っていた皮膚は引き伸ばされてピンと
張った状態になります。この状態の時には、しわはなくなっています。

 皮膚は伸びたり元に戻ったりすることが自由にできるゴム風船の様なものと言
えます。故に皮膚がピンと張力いっぱいに伸びきってしまうと、その時元に戻
ろうとする力のベクトルは、皮下組織を圧迫する方向に働くことになるのです。

(3)痛みの発生は組織内の内圧と循環不全が原因
捻挫、打撲、肉離れ等で腫れて熱をもつと、痛みと動きの制限が生じます。
このような時の痛み発生の最大要因は、損傷個所の内部の圧力の上昇に起因
しています。つまり内圧の上昇になります。

(4)皮膚と筋肉の中間領域が痛み発生のエリア
皮膚と筋肉の間にある皮下組織は生きる上で大切な領域になります。皮下組織
での生理機能である血液やリンパ液の等の循環が正常に行なえるのは、この
領域のスペースが維持されているからです。

例えば打ち身等によって炎症をもち腫れてくると、皮膚は伸ばされ筋肉も内側
から腫れて皮下組織のスペースが狭められていきます。必然的に内圧の上昇と
血液、リンパ液の循環不全を生起します。これが痛みの発生の機序になります。

(5)内圧を除去することがキネシオ・テープの役目
痛みの発生は、皮膚と筋肉との間の皮下組織の内圧の上昇によるものなので、
痛みをとるためにはこの皮下組織の内圧を除去すればよいということです。
つまり皮膚の腫れ、皮膚の引き伸ばされた状態を、しわのあった元の状態に
戻してあげればいいのです。そうすれば内圧は低くなり痛みは軽減されます。
この状態を作ることができる方法がキネシオ・テープになります。

(6)使用上の注意
テープは伸ばさないで逆に皮膚、筋肉をストレッチした状態で貼ります。
筋肉を伸ばした状態でテープを貼ることで、普通の姿勢に戻したときに、しわ
を作る為です。はがす時は皮膚をおさえながら、皮膚に沿ってそっとはがして
いきます。運動後は汗の塩分が残るのではがします。皮膚に違和感やかゆみが
出たらすぐはがすようにします。
裏紙はいっきに全部はがすのではなく、皮膚のスタート部分にはってから、
少しずつ裏紙をはがすようにして貼っていきます。 

V字、W字にテープを切って貼る理由】

テープが狭くなる方向に流れを生じさせることができます。これは体内の熱の
放散と血液、リンパ液の流れも誘導できる方法です。関節内の熱(炎症)と腫れ
を抜く場合に有効に作用します。

※キネシオ・テープとは、一定の収縮率(縮む力)を備えたものです。このキネシオ・
テープを皮膚に貼ると、腫れてピンと張った皮膚が元の状態に戻る事ができ、
皮下組織の圧迫を除去できます。これによって皮下組織のスペースが確保され、
その結果内圧によって引き起こされていた痛みが消えるのです。テープを貼ること
によって筋肉と皮膚の間にすきまができ、筋肉が痛みなく動けるようになり、
局所にたまっている血液やリンパ液の流れが良くなります。その結果新陳代謝が
良くなり痛みが緩和されます 。