潰瘍性大腸炎の本質 2018.11.17. 有本政治


潰瘍性大腸炎は原因不明の難治性の疾患として扱われ、国の指定難病のひとつに入
っています。現在330個ある指定難病の中で、最も患者数が多いのが潰瘍性大腸炎
になります。

潰瘍性大腸炎は1日に数十回以上もの下痢や腹痛に悩まされるために、この下痢と
腹痛を止める事を目的に治療が行なわれています。しかし、この方法では根本的な完
治は望めません。下痢を止めたいと思うのは心情的には理解できますが、この疾患を
根底から回復させたいならば、何故下痢や腹痛が続くのかという本質的な理解と認識
が必要になります。

生きている体の起こす反応は、一方的に悪いことではなく、必ず意味があって発生さ
せています。その意味とは、当然命を守るための対応になります。故にこの下痢を止
める処置を長期に渡って行なう事は、自然治癒力を著しく低下させ、次なる対応を迫ら
れ、病(やまい)をより重篤な方向に向かわせてしまうのです。

日本伝承医学では、首尾一貫して病気や症状を正の対応として捉えなおす事で本質
を解明しています。この視点に立って潰瘍性大腸炎の本質を解説し、その対処法を
提示していきます。


『下痢する事で何を守っているのかーー体内に留めてはならない物とは何か』

下痢とは通常の排便ではなく、緊急に痛みを伴いながら、軟便や水しゃ便、水分を体
外に排出する事をいいます。わかりやすい例は、何かの食べ物に中った(中る=あた
る)時に起きる反応です。例えば牡蠣(かき)に中った時の嘔吐と下痢は大変な苦しみ
になります。牡蠣の消化物を全て出し切るまで続きます。これは、体内の有害物を体
外に排出する事で、命を守ろうとしているからです。腐った物を食べれば、体はその物
を全て吐き出すまで、嘔吐と下痢を繰り返すのです。

下痢も嘔吐も体内に留めてはならない物や、早急に体外に排出しなければならない内
熱や、脳圧の上昇をおさえなければならない状況に追い込まれた時に、命を守る必要
な対応として発生しています。潰瘍性大腸炎に於ける下痢も、潰瘍を作って腸に穴を開
ける事も、同じ機序で起きています。つまり“悪”ではないのです。では体内に留めては
ならない物とは何か、命を守るために、排出しなければならない物とは何かを以下にあ
げてみます。

⑴外部から体内に入った毒素の排出
⑵体内で発生した毒素の排出ーーアンモニア
⑶有害な細菌の排出ーーコレラ、赤痢、O-157等
⑷未消化物質の排出ーー未消化な脂肪と脂質
⑸留めていてはいけない腸内の内熱と腸の膨満や膨張圧の排出
⑹脳内の熱のこもりと上昇した脳圧の除去ーー大汗、小便、大便等で下げる。

以上の6要因からなる危険を回避するために下痢は発生しているのです。


『上記6要因の解説ーーー下痢の根拠と機序』

⑴外部から体内に入った毒素の排出ーーー緊急な嘔吐や下痢を繰り返すことで体外
 に毒素をすてる対応をとります。

⑵体内で発生した毒素の排出ーーーこの代表がアンモニアになります。体内のアンモ
 ニア濃度が基準値より高くなると、脳に破壊的なダメージを与えます。肝性脳症とい
 って、脳細胞を破壊して命に危険が及びます。このアンモニアの発生を抑えるのが
 肝臓の解毒作用と腎臓の濾過再生機能になりますが、肝臓(胆嚢を含む)と腎臓の
 機能が低下すると、アンモニアを分解排出できなくなるため、下痢を起こさせます。
 体は下痢を繰り返すことで、脳を守ろうとするのです。
 
⑶有害な細菌の排出ーーー所謂伝染病のコレラや赤痢、病原性大腸菌のO-157等
 の細菌を体外にすてる手段として下痢を発症させます。

⑷未消化物質の排出ーーー食物の消化の中で、一番消化吸収しにくいのが脂肪にな
 ります。体内で脂肪を分解吸収する働きを担うのが、胆嚢(たんのう)から分泌される
 胆汁(たんじゅう)になります。肝臓、胆嚢機能が低下して、肝臓の胆汁生成機能が落
 ちたり、慢性の胆嚢炎で胆嚢という袋が腫れて収縮できなくなる事で、胆汁の分泌が
 少なくなるのです。
 
 胆汁の分泌不足で食べ物の脂肪分が、未消化で分解されない状態で小腸に送り込
 まれると、小腸においては有害物質となるため、これをいち早く通過させようとして、
 大腸の便を下痢にして排出させる対応に迫られるのです。このタイプの人は 油分の
 多い食事(中華料理やラーメン、揚げ物、天ぷら等)を摂るとすぐ下痢になります。
 また胆汁が分泌不足になると便の生成ができなくなり、便秘か軟便や水しゃ性の下
 痢になります。

⑸留めてはいけない腸内の内熱と腸内の膨満や膨張圧の排出ーー大腸に炎症が生
 じ、悪化してくると腫れと熱により腸内にガスが発生し、大腸が膨満してきます。この
 膨満が持続すると腹膜炎に移行し、命に関わる事態に進行する可能性が生じます。
 これを回避するために、下痢で内容物を排出したり、大腸壁に穴(潰瘍)を開けて内
 熱や膨満圧を抜く対応を体はとっていきます。

⑹脳内の熱のこもりと上昇した脳圧の除去ーーー脳内の熱のこもりと脳圧の上昇は
 脳内の血管を圧迫し、脳血管障害(脳梗塞、脳溢血、くも膜下出血等)を起こす危険
 が生じます。これを回避する対応として、大汗をかいたり、頻尿にして小便を出す事
 で脳内の熱や脳圧の上昇を防ぎます。それでも対処しきれない場合は、一気に下痢
 や水しゃ便を出す事で命を守る対応をとります。


『潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群との違い』

潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患のひとつであり慢性的に炎症が起こりますが、過敏性
腸症候群(過敏性大腸炎を含む)では炎症反応は見られません。

過敏性腸症候群は下痢だけではなく、便秘になったり、下痢と便秘を交互に繰り返した
りします。食生活や睡眠時間等の日常生活習慣の乱れや精神状態から起因しますが、
中でも心労や精神的ストレスの持続が大きく関与してきます。腸は第二の脳と言われ
長期に及ぶ精神的ストレスを受けることによって、ダメージを受けやすい臓器だからです。

過敏性腸症候群により、下痢や便秘を繰り返すことによって腸壁を刺激して炎症を引
き起こし、潰瘍性大腸炎へと移行していきます。潰瘍性大腸炎の方が、より重篤な症
状だということを認識して下さい。


『なぜ潰瘍ができるのか』

潰瘍性大腸炎では、びらんや潰瘍ができます。びらんでは対応できなくなると、潰瘍を
作り、粘膜に穴をあけていきます。粘膜に出血を起こし、一気に患部に血液を集めよ
うとします。血液は命の源(みなもと)であり、低下した臓器に血液を集めることで回復を
図ろうとします。

血液の中でも白血球は緊急パトロール部隊に匹敵します。びらんや潰瘍で炎症を起こ
している個所を発見すると、白血球はいち早く結集し、菌や異物の外敵をとり囲み消滅
させ、体の改善を図るために一気に白血球数を増やしていきます。故に、炎症反応が
出ている時は白血球の数値が異常に高くなります。

この状態の時に血液検査をすると、急性白血病の診断名がつく場合がありますが、白
血球はこのように意味があって増えているので、抗生物質等でたたいてはいけません。
抗生物質でたたき続けると、白血球は体を守ろうとし、さらに増殖し、白血病を発症させ
ていきます。炎症がおさまれば、白血球の数値は元に戻るので、人為的におさえこまな
いことです。

また、腸は人体最大の免疫器官と言われ、免疫細胞が集中している臓器になります。
この臓器に炎症が起き潰瘍ができるということは、体が心身共に疲労の極限に来てい
ると思ってください。横たわり体をしっかり休めるよう休養のサインでもあるのです。


『大腸疾患の根底には胆嚢の慢性的な腫れと胆汁の分泌不足が原因』

潰瘍性大腸炎はいきなり発生するわけではありません。上記のように過敏性腸症候群
を経過して、潰瘍性大腸炎へと進行していく場合がほとんどになります。この過程を見
ていきますと、まず食後の下痢から始まります。これは食事の中の脂肪分の分解吸
収がうまくいかないことが原因になります。
前項の⑷、未消化物の排出の項で既に解説してあります様に、胆汁の分泌不足によ
る脂肪の未消化が最大の要因となります。胆汁にはこの他にも重要な役割があります。

胆汁は、肝臓で分解解毒された物質を体外に排泄する役割、便の生成、古くなって不
要になった赤血球を分解して便として体外にすてる作用を担っています。つまり体内で
不要になった物や、留めては有害になる物質を体外にすてる重要な役割を胆汁は、担
っているのです。

さらに体内の脂質の代謝の全てをコントロールして、人体のエネルギー形成の役割を
果たしてくれています。またコレステロール(脂質)を原料として、副腎髄質で体内の抗
炎症作用の主役となるステロイドホルモン生成に関わっています。故に胆汁の分泌不
足はエネルギー代謝を低下させ、さらに抗炎症作用の低下により、体内に炎症を頻発
させてしまうのです(喉の炎症、皮膚炎等)。

以上の解説が示す通り、胆汁の分泌が不足すると便の生成ができない上に、体内の
有害物の排出や、脂質の分解吸収、代謝、各種炎症を抑える事ができなくなります。
それを補うために下痢という手段を体はとっていきます。つまり下痢をする事で、大腸
内に留めてはならない毒素と内熱をすてて命を守っているのです。このような理由で
下痢は発生しています。大腸そのものに原因があるのではなく、そのほとんどが胆汁
の分泌不足に起因しているのです。まずこの捉え方を認識することが重要です。

故に潰瘍性大腸炎を回復させるためには、胆嚢の機能回復が不可欠になります。胆
嚢という袋が腫れる事で、袋の収縮ができず、胆汁を噴出する機能の減退が胆汁分泌
の低下の根本原因となっているのです。つまり胆嚢の腫れと慢性的な炎症をとる事が
潰瘍性大腸炎の回復の鍵を握っているのです。

胆汁の作用は脂肪の分解吸収を助ける事です。そのためには胆嚢の負担を軽減す
る必要があります。食生活において脂肪分の少ない食事をとる事が求められます。
特に牛肉の脂肪の分解が胆嚢に大きな負担をかけます。牛肉、バター、チーズ、乳製
品の摂取は控えるようにします。潰瘍性大腸炎を患うタイプの人は、徹底的なコントロ
ールが必要で、この位はいいだろうは通用しません。油っこいものを食べると食後すぐ
に反応が起こり、下痢に見舞われます。本気で病気を治したいならば、徹底した自助
努力が必要です。

(参)胆汁が分泌不足になると体の右脇腹にある胆嚢の袋の収縮を補うために、体全体
 で胆嚢を絞り込む事で胆嚢の袋の収縮を助ける対応をとります。このために全身の
 姿勢が崩れ、右肩が前下方に巻き込み、下肢の右鼠蹊部、右股関節にも筋肉の引き
 つりが生起されます。これが右肩の痛み、50肩を発症させ、右鼠蹊部の痛みや右股関
 節痛を引き起こしていくのです。


『潰瘍性大腸炎発生の原因となる肝臓、胆嚢、腎臓の機能低下は何故起きるのか』

潰瘍性大腸炎による腹痛、下痢を起こす根本的原因は、肝臓、胆嚢、腎臓の機能低
下にあります。この三つの臓器がどういう機序で機能低下に至るのか以下解説します。

病気や症状は、その人自身の遺伝的な体質をベースに、長年に渡る生活習慣の乱れ
が蓄積する事で発生します。また究極的には、病気というものは肉体的要因によるも
のより、精神的なストレスや心労の持続により、生理機能に影響が及ぶ事で引き起こ
されていきます。

その機序は以下になります。精神的なストレスの持続は、気もちが休まる事なく、常に
頭を使い、脳を刺激し続けます。この状態は脳内で常に大量の血液を消費する事にな
り、脳に常に新しい血液を導入する必要に迫られます。この状況の持続は、全身の血
液の循環に影響し、血液循環のポンプとなる心臓に負担をかける事になります。また
脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費する事になります。

脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンは、脳内で作られるのではなく、実はその元は
肝臓で作られ、また肝臓に還って分解されるという行程になります。故に精神的ストレ
スの持続は、脳を疲弊させるだけでなく、肝臓の機能に影響を与え、肝臓機能の低下
を招くことになるのです。

肝臓機能の低下は、“肝胆相照らす”(かんたんあいてらす)の言葉通り、胆嚢の機能
低下も同時にもたらします。肝臓機能が低下すると主要な働きである、肝臓の解毒
作用を低下させ、アンモニアに代表される有害な毒素を体内に留めさせる事になり
ます。また胆汁は肝臓で生成されているため、胆汁生成の減退をもたらし、胆汁の
分泌不足を引きおこすことにもなります。

胆汁の重要性は既に解説してありますが、胆汁にはさらに重要な働きが付与されてい
るのです。胆嚢に集められた胆汁は、ここで濃度を何倍にも濃縮されて、極めて苦い
物質に変化します。この極めて苦い胆汁が、体内の漢方薬として抗炎症作用の働き
をするのです。漢方薬の作用は「良薬口に苦し」の例え通り、この苦味成分が体内の
内臓の炎症を鎮める事で病気を回復に向かわせるのです。こうした”苦寒作用“と同
じ役割を胆汁が担って、体内の炎症発生を抑えて、病気予防と治癒作用の両方を果
たしてくれているのです。

また体内において血液の熱を一定に保つ役割をも担い、血液の状態保持に欠かせな
い働きをしてくれています。胆汁の分泌が不足すると、血液の熱を下げる事ができず、
血液の熱による熱変性により、赤血球の連鎖(ドロドロでベタベタな状態)と変形を生起
させてしまうのです。この赤血球の連鎖と変形は全身の毛細血管内の血液の流れに
停滞とつまりを引き起こし、血液循環を妨げます。特に脳への血液供給を遅らせる要
因になります。

さらに血液の連鎖と変形による血液の質の低下は、血液の濾過再生装置である腎臓
に負担をかけ続け、腎機能の低下を生起させます。腎機能の低下は、人体の老廃物
の排出に減退をもたらし、特にアンモニアの除去を遅らせるため、血尿、淡白尿、下痢
という対応手段に移行するのです。以上が肝臓、胆嚢、腎臓の機能低下の根拠と機
序になります。


『下痢の要因の一つに挙げられる脳内の熱のこもりと脳圧の上昇はなぜ起きるのか』

精神的なストレスの持続は、脳内で常に大量の血液を消費するため、全身の血液の
循環に影響し、肝臓や血液循環のポンプとなる心臓に負担をかける事になります。
血液循環の要(かなめ)となる心臓ポンプ機能の低下は、当然心臓より高位にある脳
への血液供給を低下させます。赤血球の連鎖と変形による全身の毛細血管の停滞と
つまりも、脳への血流量を低下させます。

精神的ストレスにより低下した肝臓機能を元に戻す対応としては、肝臓に大量に血液
を導入する事で回復を図ります。この対応は必要な対応なのですが、中身の詰まった
大きな臓器に大量の血液を集めることは、全身の血液の配分を大きく狂わせ、特に
新鮮な血液を常に必要とする脳に血液不足を生起するのです。

このような血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖と変形)の乱れが脳に虚血(血液不
足)をもたらします。脳は少ない血液を速やかに脳全体に供給するために、脳圧を上
昇する事で対応します。この状態の持続が熱の発生を生む大きな要因として働きます。
当然脳の酷使も脳内に熱を発生させ、次第に脳の中心の「脳幹」(のうかん)に熱をこも
らせます。

以上が熱の発生と脳圧の上昇の機序になります。この脳圧の上昇の危険域を除去す
る対応が頻尿になります。それでも対処できない場合の対応が水しゃ性の下痢になり
ます。下痢は脳圧を抜くための非常手段なのです。

『潰瘍性大腸炎の特徴』

急激に腸が収縮した痛みがきます。食後とは限らず空腹時に起きることもあります。
水しゃ性の便意を何回ももよおします。排尿のようにすぐに出るのではなく、腸の収縮
に合わせて、いきまないと出ない苦痛を伴います。出産の陣痛の痛みに似ていると言
われます。おさまるまで、1時間で何回も水しゃ性の下痢にみまわれることもあります。

健常の人は約24時間かけて便を発酵熟成させて栄養分を吸収して不要物を便として
排出しますが、潰瘍性大腸炎の人は、肝臓(胆嚢)、心臓、肺、腎臓に弱りがあり免疫
力が低下しているため、不要な物や毒素を何回も何回も小分けにして急いで体外に排
出しなければなりません。

肝腎の機能が低下しているため解毒作用がうまく働かない為、食物の消化が始まった
時点で、不要物ができたそばからそばから排出していかないと毒素の排出がまにあわ
ないからです。腎臓でろ過してゆっくり尿を生成している場合ではないので、腸の排出
能力を借りて水しゃ性の下痢便として体外へ排出していきます。血液をろ過して尿とし
て排出するのは時間と労力がかかる行程になります。尿を排出するより、肛門から水し
ゃ性の便を排泄させた方が、体に負担がかからないからです。

潰瘍性大腸炎の人は健常な人の何倍ものエネルギーを排便に使うため、異常な熱が
腸に発生します。肛門からの排出で間に合わないと体が感知したときには、へそ痛も
発症します。へそに痛みを起こし熱を帯びさせ、腸内の熱の排出を助けようとするのです。

古来より「へそで茶をわかす」と言われています。へそは胎児と母体をつないでいた赤ち
ゃんの命綱であり、エネルギーの集約場所になります。茶をわかすくらいの熱を発生さ
せる場所であるため、このような言いまわしが残されているのです。つまりへそは、非
常時の熱の排出の役割を担っている大事な場所であり、腸の熱の排出が間に合わな
い時に痛みが発生します。へそに痛みが起きた時は、アイスバッグでピンポイントでへ
そを冷却すると炎症がおさまり痛みが緩和されます。

潰瘍性大腸炎になる人は、口内(特に舌)にも潰瘍ができやすくなります(口内炎)。腸の
炎症だけでは熱の排出が間に合わないため、口内にも炎症を起こし熱や毒素を速やか
に排出しようとします。
漢方医学では「心は舌に開竅する」(しんはぜつにかいきょうする)と言われ、心臓の反
応は舌に表われます。舌の脇や舌の裏に口内炎ができる時は要注意です。心臓機能
がかなり弱り、免疫力と生命力が著しく低下し、体が弱っています。
休養と静養が必要です。


『大腸と肺の関係ーー小腸と心臓の関係』

大腸と肺は漢方医学では表裏(ひょうり)の関係にあり、密接に関わっています。肺の症
状は大腸に表われやすいということです。体質的に肺の機能が弱い人は、大腸がその働
きを補っていきます。肺には呼吸に関わる水液を調整する働きがあります。体質的に肺
が弱い人は、大腸の働きを借りて、水しゃ性の下痢便と共に、体内の余計な熱や毒素
や不要な水分を排出させていきます。大腸に潰瘍を作り炎症を起こすことによって、肺
に炎症(肺炎)が起きる致命的な症状を回避していくためです。

肺が遺伝的に弱い人は、呼吸力(吸息筋、呼息筋)、腹圧(腹筋)が弱いため、嘔吐(おうと)
がしにくくなります。吐き出す力が弱いため、不要物を口から吐き出すためのエネルギー
がありません。故に大腸の力を借りて水しゃ性の下痢便として体外へ排出させていきます。

また、小腸と心臓も表裏の関係にあり、心臓機能が低下すると、小腸が補おうとし緊急
体制に入ります。通常行程をとって、栄養分をゆっくり時間をかけて消化吸収して便を
生成している場合ではなくなるのです。必要な栄養分と体にとどめてはいけない不要物
を高速に小腸で判断し取捨選択し、大腸で水しゃ性の下痢として速やかに体外へ排出
できる状態で大腸に送り込みます。小腸に脳内神経伝達物質であるセロトニンが約95%
ある所以はここにあります。小腸がリトルブレインとして働き、瞬時に体に必要な対応を
とるように指示していくのです。
.
このように体に起こる症状は単独で働くのではなく、他の臓器との関連の中で相互に助
け合い、命を守るために働いています。潰瘍性大腸炎になる人は体質的、遺伝的に
心肺機能(心臓と肺)が弱いタイプだということを知っておくことも必要です。


『潰瘍性大腸炎を回復に向かわせるためにはどうすればよいか』

潰瘍性大腸炎が何故腹痛と多発性の下痢になるのか、何故腸に穴(潰瘍)を開けるの
かの根拠と機序を、根本的な原因を挙げながら解説致しました。潰瘍性大腸炎の根拠
と機序が示されたという事は、どうしたら回復に向かうかの回答が示さたということにな
ります。上記してきました様に根本的な要因となる肝臓、胆嚢、腎臓、心臓、肺の機能
を元に戻していく事が不可欠だということです。

さらに自分では気付いていない自身の生命力や免疫力の低下を元に戻す事が必要です。
この全てを最も合理的に行なえるのが日本伝承医学の治療になります。日本伝承医学
の治療は世界で唯一骨髄機能を発現できる治療法であります。骨髄機能を発現させる
ことで、生命力と免疫力を高め、内臓的には“肝心要”(かんじんかなめ)と言われる様に
肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を高める事を主体に技術が構築されています。故に
効率よく肝臓、胆嚢、心臓機能の回復が図れます。

またダメージを受けている大腸の修復のために大腸に血液を集める治療も必要です。
大腸に血液を集めるためには、日本の古代人が開発した「腸の操法」を用いることで、
大腸の穴(潰瘍)を修復し、大腸の炎症を鎮めることができます。この操法は治療効果
が非常に高く、1週間位で潰瘍が修復します(この操法は大腸がんにも用います)。
その他日本伝承医学では心臓調整法、肝臓胆嚢叩き操法、腎臓ふり操法を用います。

家庭療法としては、頭(脳幹)と肝臓胆嚢の局所冷却法を必修科目としています。脳内
の熱と脳圧の上昇を除去し、肝臓胆嚢の熱と腫れ、充血を除去するために毎日行なう
ように指導しています。腸の症状は精神状態とも大きく関わるため、首の冷却も大事です。
首を冷却することによって脳への血流が促進され、自律神経のバランスが整うからです。

つま先立ちと、腕立て伏せ運動も大事です。毎日継続していくことで、ふくらはぎと、上腕
の筋肉をとり戻し、心臓のポンプ機能を助けていきます。筋力がつくことで、心臓に血液
を速やかに還す力がつきます。また水の摂取も大事です。水を1日1.5~2リットル飲む
ことで腎機能を改善し、赤血球の連鎖をはがし、血液の質を良くします。日本伝承医学
ではこの様な統合的なとり組みにより潰瘍性大腸炎を改善していきます。