人体への磁気作用 パートⅣ  2018.7.16. 有本政治

 *これは今から約30年前の文章に加筆したものになります 

 漢方医学における「気」の概念は、一般の方には非常に難解な問題です。
私はこの「気」を説明するにあたって「エネルギー・情報・物質」という三要素
で説明してきました。特に「エネルギー」と「情報」的要素で解説することが、
現代人にとって理解しやすいようです。

 「目には見えないけれど作用力をもっている存在」これが気の正体です。
その代表的な存在が「電気」「磁気」です。近代科学文明を推進させた最大の
発見でありましょう。この電気と磁気をエネルギーと情報に活用したからこそ、
現代文明が成立したと言っても過言ではないのです。これは生命体において
も言えることで、生命を成り立たせているのは、実は電気と磁気であったので
す。近年、この電気・磁気が人体に応用されはじめて多大な成果をあげてい
ます。MRI(核磁気共鳴診断)等が良い例です。

 しかし厳密にいうと、実は近代科学の実績をもってしても、この電気・磁気の
本質的解明はできていないのです。本質的な解明ができないのは、当然かも
しれません。宇宙創生より存在し、電気・磁気は「宇宙」そのものを支配する
「力」であり、すべての根源となって作用しています。宇宙生命体のすべてが
その影響下で存在しています。電気・磁気の存在を語ることは、「生きている
とはどういうことか」という問題に等しいのです。「生きていること」とは人間が
永久に解くことのできない問題であるともいえます。故に古代人は「神の力」
として理解し、その存在のすべてを「気」という言葉で表わしたのでしょう。

電気・磁気はその「気」の中の一要素に過ぎません。しかし、生命の原理の
解明は、これを糸口に探り出していく他に現段階では見当たりません。この
意味において「磁気生物学」の登場は必然のものといえます。これからが本
当の意味での生命原理を探るスタート台に立ったといえるでしょう。古代人が
神の力と認識して伝えた漢方医学の「気」の研究、古代日本人の「骨」の多面
的な機能の研究が解明される日がやっと近づいてきたという思いがします。

それでは、最近の人体への磁気作用の研究成果を探ってみます。
 1986年、我が国の先端技術のトップをいく「通産省工業技術院」に属する
「電子技術統合研究所」の猪股修二主任は「これまでの物理学は物質とエネ
ルギーだけを究明してきたが、もうそんな時代ではなくなった。これからは
“物質”“エネルギー”そして“気(情報)”というパラメーターをとり入れ、三位
一体のニューサイエンスの時代だ」と発表しました。そして「気」の研究に入り、
科学的で厳密な研究を続け、「複素電磁場理論」を作り上げました。

 この理論をわかりやすく説明すると、人体の痛みや病気のある個所に磁気
を与えると、この磁気によって生じた磁場が触媒の働きをするということです。
触媒というものは、それ自体は変化しないで他のものの化学反応の速度を変
化させるものです。つまり磁場が触媒としてある種のエネルギーを呼び込ん
でくるのです。このある種のエネルギーというものが古代人が「気」と呼んだも
のです。そして呼び込まれた「気」と物質とエネルギーが三位一体となって作
用するというものです。もっと簡単にいいますと、「磁気力は人間の気を増幅
する」ということです。当然「気」とは、磁気を含んでのものです。人体中の磁
場の磁気力が弱まると「気」が不足したり、あるいは他の邪気が入り込んだり
するのです。ここに磁気を与えると、気が回復するという理論です。つまり、適
切な磁気の力で元気になるということです。

 現在、世界の多くの研究者が、人体に磁気力を与えて、その生理的な変化
を研究しています。その「磁気研究」のパイオニアであるイリノイ大学の
バーノシイ物理学教授によれば、「磁気を与え磁場がその部位に発生すると、
血液中のイオンが増加し、各種の病気の症状に大変有効に働く」と発表して
います。これをわかりやすく説明すると、私たちの人体は「血液」「リンパ液」
「細胞液」といった体液が循環しています。これらの体液は電解質なので電
気をよく通します。そこに磁気力を当てると、体液の中で発電現象が生じると
いうことです。

 体液内で電気が発生すると、体液中のイオンに変化が生じるのです。体液
内はイオン化している原子とイオン化していない原子が共存しています。病気
の時の体液はそのイオン化が促進されない状態です。そこに磁気力がかか
るとプラスイオンはマイナスイオンの方に移動し、マイナスイオンはプラスイオ
ンの方に移動するという流れが生じるのです。また、イオン化が促進され活動
を開始するのです。つまり、磁気力を与えると体液のイオン化が促進され、
体液の循環が生じ、活動が開始されるという理論です。人体への磁気作用
パートⅡにおいて、既に解説してあります「磁気血液循環説」もこの範疇の中
にあります。

 日本でもこの理論を応用して「磁気治療ブーム」を起こしたのが中川恭一
医学博士です。博士の研究の中で磁気治療の効果の高いものは、肩こり、
腰痛、関節痛、頭痛、三叉神経痛、便秘、不眠症、自律神経失調症となって
います。博士の方法は「700800ガウス」の磁力を患部に当てるという方法
です。
そうすると血管内に電流が生じ、血流速度が良くなり、停滞した非生理
的な血液の循環が改善するというものです。

 このように世界各国から磁気の人体に関する作用の報告が相次いでいま
す。地球上の磁気力が弱まりつつあるという警告は既に何年も前から言われ
ています。それにより、宇宙からの紫外線が地球上に降り注ぎ、米国では既
に「強度の紫外線によってアメリカ国民の4000万人が皮膚がんに侵される」
と報告しています。しかし、その対応策に朗報がもたらされました。それは、
ロシアの皮膚病の権威者のサラトフ医科大学のエス・イ・ドヌジャンスキー博士
とエヌ・トレチャコフ博士で、磁気の効果を以下のように発表しました。

 博士らは、紫外線照射を受けた30名の患者に対し、湿布の形で磁気水を使
用しました。その結果、磁気水の作用を受けた皮膚部位で活発な化学反応が
見られ、さらに炎症現象(皮膚の紅斑反応と滲出反応度)が目立って減少した
というものです。これらの研究から両博士は「この効果は皮膚病学分野での
第一歩に過ぎないが、湿疹と神経性皮膚病には磁気水の直接湿布が一番
有効な方法であるということがわかった。また、アレルギー性の皮膚炎(アトピー
)の治療にも磁気水は大変有効である」と報告しています。このように磁気
の人体作用は世界各国で注目の的になっています。「気」の一要素である
「電気」「磁気」が生命原理を探求する手がかり足がかりとして注目され始め
たということは、時代の変化を予感させるものです。

 日本の古代人は、既にその時代にその卓越した洞察力と直観力によって、
生命を成り立たせ、生命の仕組みとなる「物質・エネルギー・情報」の主体と
なるものが、気(電気・磁気を含む)の集合と離散と見立て、天と地から電気と
磁気を受ける“アマウツシ”の技法を開発していたのです。また、骨に圧や振
(ゆり・ふり・たたき)を与えることで、電気を生起させ、電気が流れることで
磁気や磁界を発生させ、体内の電気・磁気を調整する技法を開発していたの
です。

病気や症状の背景と根源には、その人の生命力や免疫力の低下が必ず
存在しています。この低下した生命力や免疫力を元に戻すためには、生命存
続に重大な働きをしている電気と磁気を対象とした治療法が不可欠となるの
です。

すべての病気や症状の背景にはその人自身の生命力と免疫力の低下があ
り、直接的には全身の血液の循環・配分・質の乱れが必ず存在しています。
これらを回復に向かわせるためには、生命の仕組みのすべてに関わる「骨髄
機能」を発現させて生命力と免疫力を元に戻すことです。そして血液の質を元
に戻し、全身の血液の配分を正し、血液の循環を正常にするには、人体の電
気・磁気の働きを正常に戻すことが不可欠となるのです。病が重篤になれば
なるほど、人体内の電気・磁気の過不足を調整する必要があるのです。
これを可能にするのが、日本伝承医学の治療法なのです。