人体への磁気作用 パートⅢ  2018.7.6. 有本政治

*これは今から約30年前の文章に加筆したものになります 

 「磁気生物学」の登場により、磁気の生物への関わりが次々と解明されてい
ます。また、1960年代に入り、高感度で精密な「磁力計」が開発され、生物の
発する極微弱な磁力が測定可能になってきました。これらのことにより、人体
中の磁界発生の場所が明らかになってきています。

 私たちの身体で磁界が発生するのは、神経が興奮する時、筋肉が収縮運動
をした時、血流及び体液の移動が生じた場合にそこに電流が流れ、この電流
が流れた時に、“電磁誘導の法則”によりその部位に沿って磁界が輪状に生じ
るのです。小学校の理科の実験で、永久磁石の上に紙を置き、その上に鉄粉
をのせてゆすると磁力線が紙の上にあらわれる現象がありました。これを電磁
石に置き換えれば、電流が流れた時に磁界(磁場)が生じるのです。これが人
体中の各部で発生している部分的磁界現象です。

 人体で部分的に磁界が発生している場所は、大きく分けて5か所あります。

(1) 脳磁界-人体中で一番弱く、磁力の強さは1013テスラ位です。

(2) 目磁界-目から脳よりも強い磁力線が出ています。強さは
    1011
 1012スラ位です。

(3) 肺磁界-ここは肺部から上方の肩へ、もう一方は肺から脇下に
    向かって二
方向に磁力線が出ています。

(4) 心磁界-これは心臓を中心に内部に向かい磁力線が出ています。

(5) 筋磁界-筋肉の収縮方向に従いすべての筋肉に出ています。
    その中でも大
腿部、ふくらはぎの筋肉部は大きく磁力線を発生します。

 また、血液の流れる血管はその流れに沿って磁界が発生しています。日本
伝承医学のように、骨のピエゾ(圧電)効果を利用するものは、骨の連結方向
に従って磁界は発生します。特に「骨」は人体中において硬組織であり、磁性
体をもつ組織が密集している場所であります。骨に電気が流れることで、磁界
が発生し、骨髄はその造血・細胞新生・造骨機能を発現することができるのです。

 この磁界から発生する「磁力」は各組織・器官・細胞の一つ一つまで、その
機能発現の「エネルギー」として、また「情報」として作用しているのです。人体
内で局部的に発生する大きな磁界は以上ですが、人体内では“動き”のある場
所にはすべて、電気が発生し、電流が流れ、磁界は発生しています。例えば、
生命の最小単位である細胞は生きて動いています。そこにもすべて磁界をもち、
当然、電気・磁気をエネルギー・情報として活用し生きています。もっとミクロの
世界に目を向けますと、細胞を構成する分子、原子、原子核と電子、陽子、中
性子といったものは、もっと電気・磁気の力で動きを規定されています。人体内
のミクロの世界では、磁気はイオン(正または負の電気をもつ原子)のプラスマ
イナス作用化に決定的に働いています。

 このように、磁気は人体内の組織器官→細胞→分子→原子といった構成
要素のすべてを規定する最大の作用力をもち、またイオン化という“極性”に関
与しているのです。「極性」とは、「プラス極とマイナス極」「N極とS極」という正
反対の性質を意味します。人体内の組織・器官・細胞・分子・原子のすべては
適正な極性状態に保たれていなければ、その機能を維持できません。

例えば、細胞内と細胞膜との関係においては、内部はマイナスの電場、膜の
表面はプラスの電場になっているのが正常な状態です。これは、マクロな場とし
ての「地球」も同じように、内部はマイナスの電場をもち、地表面はプラスの電
場をもっています。これが正常な場の極性状態であります。故に極性が逆転す
れば、「場」の関係は崩れ、細胞は生きていけないことになります。

 このように極性化された細胞が集合して各種の組織・器官が形成されていま
す。これらの組織・器官もまた極性化状態になって互いに結合し合い、それが
全部集まって機能する一つの大きな磁気体が人体と呼ばれるものなのです。

磁気生物学が発見した、前述してあります5つの大きな部分的磁界、細胞一
つ一つがもつ磁界、ミクロの世界の原子の磁界、人体内の細胞の数で表現す
るならば、人体内は約60兆にも及ぶ小さな磁界をもっていることになります。

そしてそれらを統合・統括する固体全体としての磁界を有しているのです。人体
という統合された全体でみれば、頭部が+極で足が-極の磁気棒と考えられ
ます。棒磁石が磁界を作っているのと同様に、人体の頭部と足で両極をもち、
磁界を作って磁力線の流れる方向をもっています。

人体はこのように、全体の大きな磁界と人体内に部分的にそれぞれ小さな
磁界をもち、それぞれが独立を保ちながら全体と調和するように機能していま
す。つまり、強壮で健康な生命力にあふれた肉体とは、強く磁気化された両極
をもち、しかも磁気両極間の磁力線がスムーズに流れ、バランスがとれた状態
ということなのです。霊能者たちが、表現する“エーテル体”等も人体の磁界や
磁力線が関わっていると考えています。

 この人体内の「磁界」のあり方は、漢方医学の陰陽論に見事に合致していま
す。漢方医学の骨幹を為す陰陽論を簡単に説明しますと、まず、この地球とい
う場は、混沌とした未分化の「太極」の状態です。それが「天」と「地」に分かれ
るのです。そして「天」を“陽”と為し、「地」を“陰”と表現しました。つまり、全体
を陽極と陰極という二つの極性に分けたのです。そして、両極の間には「気」が
流れているとしたのです。

 その「気」とは、わかりやすくいえば、電気・磁気・重力の気を含んでの概念で
す。電気はプラスとマイナスの極性をもち、磁気もNSという極性をもち、重力
も作用と反作用という極性を有しています。それぞれが気の方向性、流れをも
っています。そして陰陽論は、「太極」から陰陽という両極が生じ、その陰と陽が
それぞれ二分され「両儀」を生じ、それぞれに陰陽が生じていくという発展性を
もっています。それを「四象」と表現し、その四象のそれぞれに陰陽を生じ「八卦」
となして無限に陰陽に分類されていくという考え方です。全体の陰陽が存在し、
その中に無限の陰陽関係が成立しているのです。

例えれば、磁石の棒を二等分すれば、そこにまたNSが生じ、四等分しても
同様に両極にN極、S極が発生するのと同様です。しかし、全体は大きな陰陽
の二極に「統括」されています。まさに、人体の電界・磁界と同じ原理にのっとっ
ています。全体を統括する二極と部分的な二極との関係は、漢方医学の陰陽
論そのままといえるでしょう。全体と部分の関係を既に知り得て、見事に見切っ
ていた古代人の卓見なのです。

 漢方医学の治効原理は、この陰陽のバランス関係を一番重要視しています。
陰の気と陽の気のバランスの乱れが病気の状態であり、このバランスをとる手
段として鍼と灸を駆使していくのです。部分的なバランスの失調も全体に影響
をもたらしますが、まず大前提は全体の陰陽のバランスが大切なのです。その
全体を表わすのに、「上・下」「左・右」「内・外」「前・後」という八綱理論を使っ
ています。

人体に例えるならば、「上下」とは頭と足、「左右」とは左半身と右半身、「内
外」は中心()と界面(皮膚)となり、「表裏」とは背と腹になります。これら両極
のバランス関係が全体の陰陽のバランス関係の中で重要なのです。まさに、
日本伝承医学の治療方法は、「上下」関係の中では足を用い、「左右」関係の
中では右はものを上げ、左は下げる作用をもたせています。「内外」関係の中
では骨という中心を使い、「前後」関係の中では脊柱を使うという漢方医学の陰
陽のバランスのとり方を見事に網羅した理想的な治療形態となっているのです。
特に人体の両極に相当する「足」を使用する技法が中心になっています。これ
は足と対極をなす「頭=脳」とのバランスをとる方法としては理想形となります。
足を操作することで、上部の首のゆがみや脳圧の上昇、脳内の熱を除き、脳
血管障害を治癒・予防するには最適の技法となります。

しかも、東洋医学のような、目に見えないエネルギーや情報のルートとしての
12本の「経絡」を複雑に使用するのではなく、人体の骨格をエネルギーや情報
の伝達系として、一元化して使用し、骨に圧やヒビキ(ゆり・ふり・たたき)を与え
ることで、電気を発生させ、骨伝導を介して全骨格に流し、電気が流れることで
磁界と磁気を発生させます。これにより、全身の電気・磁気の過不足を整え、
全身の磁極のバランスと局部のバランスを同時にとることができるのです。
これまで解説してきました人体磁気の作用を正常に働かせることが可能になる
のです。人体の磁気の作用と性質を探ることで、日本の古代人の考えた「アマ
ウツシ」の技法が明確になっていくのです。