じんま疹の本質~薬で封じ込めてもすぐに再発してしまうのは何故か
                                   2016.4.29 有本政治

<体の示す症状には必ず意味がある>

生きている体の示すあらゆる症状は、一方的に悪の反応なのでしょうか、それは
偏った見方になります。正の対応としての視点で見ていくとその意味がわかります。
その意味とは、体に現れる症状は、悪くなる方向に導いているのではなく、逆に
何かを元に戻すための一時的な対応として発症しているのです。生物として生ま
れて、生きている体が表わす反応は、自らの体をより悪くなる方向に導いたり、早く
死なせる方向にもっていく事はありません。

現代医学ではすべての症状を一方的に悪の反応とみています。これは生命に対
する正しい捉え方ではありません。症状に対する根本的な誤認が存在しています。
悪と誤認しているため、単に症状を封じ込めれば症状は治るものと錯覚し、封じ
込める処置にのみ終始してしまいます。しかし実際は薬を止めればすぐにまた、
症状を再発してしまうのが現状になります。そればかりではなく、薬の作用により、
体は徐々に自己治癒力をなくし、自分の力で回復しようとする力(免疫力や生命力)
を消失させていきます。

私たちの体は、幾重にも体を守る対応手段を構築しています。それは生物として
あたり前の事です。例えばゴキブリは発生以来約三億年間生き延び続けています。
その間ありとあらゆる環境変化や外敵、細菌やウイルス、疫病から身を守り、生き
延び、子孫を残してきたからこそ現在があるのです。現代では日進月歩する強力
な殺虫剤から身を守るために、彼らは次々と耐性力を獲得し、生き延びています。
まさに幾重にも張り巡らされ、命を守り抜こうとする対応力のなせる技です(細菌
やウイルスの世界も抗生物質に対して耐性菌が増え続けているのも同様です)。

つまりありとあらゆる手段を総動員して、生物は命を守るように最後の最後まで
生き抜こうと対応していくのです。その対応の一段階が各種の症状になります。
つらく苦しい症状は、いっときも早く脱したいのは人情ですが、大事なことは症状
や病気の本質と、その根拠と機序を正しく認識し、正しい処置を選択していく事に
なります。処置を間違ってしまうと治らないばかりか、さらに重篤な病に移行する事
にもなりかねないことを認識していく必要があります。
以上の視点に立ってじんま疹の症状を捉え直してみると、その本質が見えてきま
す。じんま疹の根拠と機序が明らかになればその対処も自ずと明確になります。

<体内で分解吸収、及び排出できなくなった毒素や熱を体外にすてる対応>

通常の手段で処理できなくなった、体内にこもっている余計な熱や毒素を、体外
にすてる対応手段は、嘔吐や下痢、小便、汗等になります。これ以外の手段が、
皮膚病による対応になります。その皮膚病対応のひとつがじんま疹になります。
皮膚に赤みや膨隆(ぼうりゅう)、かゆみを発症させることで、皮膚から内熱や分解
できない毒素をすてる非常対応手段になります。

私たちは腐った食べ物が体内に入った場合、すぐに嘔吐や下痢が起こって、体
外に排出する対応がとられます。通常食べ物は体内に取り込まれ、胃や小腸で
分解吸収されますが、有害な物質は嘔吐や下痢によって、即、体外へ排出されて
いきます。また、アンモニア等の大量に発生させてはならない物質は、肝臓のも
つ解毒(げどく)作用と胆汁(たんじゅう)が働いて分解され、便や尿として体外に排
出されていきます。この機能が低下し解毒できなくなり、体内に留めてはならない
毒素や熱を速やかにすてなくてはならなくなった時の対応が、じんま疹による非常
皮膚病対応になります。故に皮膚病の出方が他の皮膚病と異なり、目的が達成
されると速やかに消失し、じんま疹は傷痕が残らないのです。

<肝臓の解毒作用の低下と胆嚢からの胆汁分泌不足がじんま疹を引き起こす
最大の要因>

私たちの体内には栄養となる食べ物以外にも、ばい菌やウイルス等色々なもの
が入ってきます。さらに、食べ物や不要物を分解する過程で、様々な有害な物質
が発生しています。それらを分解処理して無害化し排出する働きを解毒作用と言
います。この解毒作用は肝臓で行なわれます。

有害物質としては酒類のアルコールや薬剤、添加物等を分解処理して無害化し
ます。また体内で合成発生するアンモニアを分解処理します。アンモニアはその
ままだと脳に悪影響を及ぼすため、肝臓でアンモニアを尿素に変えて尿として排
出していきます。これがうまく処理できないと肝性脳症のように、脳に大きな障害
を引き起こしてしまう場合があります。また、体は肝臓の解毒作用だけでは処理
できなくなると、次なる対応として、血中の尿酸値を高くする事で、有害物質の害
を防ぐように働きます。

次に胆汁の役割について説明していきます。胆汁は肝臓で作られ胆嚢(たんのう)
という袋に集められ、約20倍に濃縮されて極めて苦い物質になります。この胆汁
は1日に約1リットル分泌され、脂肪の消化吸収に不可欠な消化酵素になります。
また腸内で合成される脂溶性ビタミンのビタミンA、D、E、K等の吸収に重要な働
きをしています。これ以外にも尿と同じように、体の中の有害な物質や不要な物を
排出する役割を果たしています。肝臓で処理された薬剤をはじめ、体の中の有害
なアンモニアや銅なども排泄しています。このように胆汁は命にとって重要な役割
を受けもっているからこそ、1日に1リットル近くも分泌され、尚且つ腸内から門脈
(もんみゃく)を通って再吸収されて肝臓に還っていくのです(腸肝循環)。

さらに現代医学が見落としている最も大事な役割が、胆汁にはあるのです。それ
は胆汁の持つ極めて苦い成分です。胆汁の苦い成分が、漢方薬のもつ”苦寒薬”
(くかんやく)の作用と同じように、体内の様々な炎症を鎮めてくれます(抗炎症作用)。
また胆汁には血液の熱を冷まし、熱変性による赤血球のくっ付き(ベタベタでドロド
ロの状態)を抑え、血液の質の低下を防いでくれる働きがあります。

胆汁が不足して血液が熱をもつと、赤血球の連鎖が起こり、全身の毛細血管内
に流れの停滞と詰まりを生起させ、毛細血管に熱をこもらせ、皮膚や筋肉、関節
に熱を発生させていきます。この内熱を排出する対応として、じんま疹やアトピー性
皮膚炎を起こします。こうした血液の質の低下は痛風やリウマチ等の根源的な
要因にもなっていくのです(詳細はホームページの院長の日記リウマチ性疾患の
本質参照)。

このように肝臓の解毒作用の低下と胆汁の分泌不足は、体内に留めてはならな
い有害な物質と発生させてはならない内熱を異常に生起させてしまうのです。この
事態は命にとって危険な状態への移行を意味します。これらの毒素と内熱を通常
の手段で処理できなくなった時の非常対応がじんま疹を発生させる根拠と機序に
なります。

<皮膚にじんま疹を出す事で何をしているのか>

全身の皮膚上に赤みと皮膚の膨隆、かゆみを生起させる事で、皮膚から毒素と
内熱をすてています。すてる毒素や内熱の量、どの臓器や毛細血管に熱がこもって
いるかによって、じんま疹の程度や大きさ、発症時間は異なります。帯状疱疹が、
炎症の発生した場所や臓器の当該部位に発生するのも同様になります。
毒素や内熱を排出できれば症状は速やかに消失していきます。また、皮膚をかき
むしると次々と拡散してしまいますが、時間が経過すれば消失していきます。かゆ
みがひどい時はアイスバックや氷水に浸したタオル等をあてたり、軽く叩く事でかゆ
みを軽減することができます。

<じんま疹を封じ込める抗ヒスタミン薬の使用の弊害と副作用について>

現代医学ではじんま疹の治療薬として抗ヒスタミン薬が使用されています。これは
体内の免疫物質であるヒスタミンが当該組織の受容体と結びつくのを阻止する働
きをします。これによりじんま疹の発赤、炎症、膨隆、かゆみを抑え、封じ込めて
いきます。しかし第一世代の抗ヒスタミン薬は副作用が大きく、今は幾分改善され
た第三世代の抗ヒスタミン薬が使用されています。多少の副作用の改善は見られ
ても、これらは封じ込める薬であり、根底から治すものではありません。故に服用
をやめればまたすぐに再発してしまいます。

本来細胞から放出されるヒスタミンは、体内に侵入した異物や有害物質を追い出
す作用があります。この作用が皮膚に働きかけると、じんま疹や腫れ、膨隆等の
空間(場)を生み出して対処していこうとします。ヒスタミンが生み出してくれたこうし
た空間内で、免疫細胞が有害物質を排出させようとしていきます。このようにヒス
タミンとは、免疫細胞を働きやすくしてくれる場を設け、免疫力を高めてくれる重要
物質になります。ですから抗ヒスタミン剤で封じ込めてはいけません。免疫力を低
下させてしまうからです。

<どう対処するべきか>

じんま疹の発生する根拠と機序を解説してまいりました。根拠と機序が明らかになっ
ていけば、どう対処していくべきかの答えは自ずと出てきます。要約しますと、じんま疹
とは自己の体内で解毒排出できなくなった毒素と発生した異常な内熱を皮膚病として
すててくれる対応になります。

そのためには体内で解毒作用を担う肝臓の機能低下と胆汁の分泌不足を改善し
ていくことが不可欠になります。この二つの臓器の機能を元に戻すことが根本的な
治療につながるのです。また症状の背景にある自身の生命力や免疫力の低下も
高めていくことも必要です。これらの条件を満たすことができるのが、日本伝承医
学の治療法になります。

生命力や免疫力の源は人体の骨髄にあります。骨髄で命の源となる血液の造血が
行なわれ、すべての新細胞の元になる幹細胞(かんさいぼう)が作られ、細胞新生
が行われています。生命力や免疫力を高めるためには、新たな強い細胞が作られ、
造血が活発になされることです。これを達成するためには骨髄機能を発現させる事
が一番効果的です。日本伝承医学の治療は世界で唯一骨髄機能を発現させる目的
で構築されており、低下した生命力や免疫力を高めることができます。これをベース
にして、全身の血液の循環・配分・質の乱れを元に戻すために、肝心要に当たる
肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を高める技法で構成されています。

肝臓と胆嚢の腫れと炎症を鎮め、肝胆の機能を元に戻す技法としては、大腿骨の
叩打法があります。また、じんま疹を含む皮膚病一切を改善する技法も、日本の
古代人は伝え残しています(上体のねじれをとり、胆嚢と脾臓の働きを改善する
技法)。日本伝承医学では、こうした日本古来から伝承され続けてきた手技療法
を用いて、合理的に効率的に、じんま疹の改善を図っていきます。また家庭療法
として推奨している、頭と肝胆の氷冷却法も、肝臓と胆嚢の機能を改善していくの
に効果的です。じんま疹は単にその部位だけをみていくのではなく、体全体との関
連の中でとらえていく必要があります。