日本伝承医学の技法は骨の物理的法則を用いる
                                2022.10.24. 有本政治

日本伝承医学の技法は、骨の物理的法則である圧電作用と骨伝導を
用いるため、人体に確実に作用します。骨の圧電作用と骨伝導は科学
的事実であり物理的法則になります。骨の圧電作用は既に現代医学の
骨折の修復治療に応用されています。また音のような微細な振動を
伝播させる能力を有している骨伝導の原理は、聴覚障害の分野で鼓膜
に変わる音の伝導体としても実用化されています。

骨には圧や振動(ゆり・ふり・たたきのヒビキ)を与えると微弱な
電気を発生する性質があります。その発生する電気量は、45ミリ
ボルトという微弱なものになります(1ミリボルトは1000分の1ボルト)
しかし、人体内の各種器官を動かす電気エネルギーのレベルはわずか
なミリボルト単位で作動するのです。それを立証するのが心臓の筋肉
(心筋)で、収縮させるには15ミリボルトから150ミリボルト程度の微弱
な電圧になります。電流量は200マイクロアンペアー程度です。
運動筋収縮の電気レベルも同様です。脳波のように脳に作用する電気
レベルは、さらに低い電位で作動します。

  人体内の電気レベルはミリボルト単位で低下しても、全ての組織器
官は機能低下してしまいます。機能低下した場合は骨の圧電作用(ゆり・
ふり・たたきのヒビキ)により微弱な電気を発生させ、骨伝導を介して
全身の骨に伝播させます。全身の骨に伝播された微弱な電気により
各種細胞と細胞の元となる幹細胞にスイッチが入ります。そして骨の
代謝を促進する骨芽細胞と破骨細胞を活性化させ、エネルギー代謝を
高めます。最も肝要なのが骨髄幹細胞の機能を発現させることです。
これにより赤血球、白血球、血小板が増産されます。遺伝子の複製、
遺伝子の機能発現を促進することも可能になります。これまで考えら
れていた伝達系は神経組織でありますが、もっと最大で最速のエネル
ギーと情報の伝達系は、実は骨伝導だったのです。

 つまり骨の圧電作用により発生する電気量はわずかであっても、
人体内の組織器官に十分にその機能を発現させることができるという
ことです。骨伝導を介して全骨格に電気が流れるということは電磁
誘導により「磁気」も発生します。
これは人体内の情報系(受容・伝達処理・反応)の主作用として作動
します。骨のもつ圧電作用により、人体内のエネルギーとなる電気、
情報の媒体となる磁気は発生しているのです。

 日本伝承医学の技法は踵(かかと)10cm位もち上げて落下させた
り、下肢全体を内旋させて踵を落下させたり、体全体を波打たせる
ようにゆすったり縦方向に細かくふったり大腿骨をたたいたりします
(ゆり・ふり・たたき操法)。これらが人体に与える刺激量は少ない様
に思われますが、下肢全体の質量(10kg以上)は大きく、わずか10cm
程度の高さから踵を落として発生する電気量は微弱でも想像以上に
人体の骨に大きな圧電作用と骨伝導作用を生起させます。圧や振動は
確実に骨伝導を介して全身の骨格に瞬時に伝播されるのです。
この骨のもつ物理的法則が人体に大きな作用を及ぼす原理となります。