骨に「気」を通す   2018.4.20. 有本政治

 *これは今から約30年前の文章に加筆したものになります

 これまで『骨を捉えなおすⅠ~Ⅲ』と題し、人体の骨の多面的な働きを探り、
骨が生命活動において、重要な役割を担っていることを解説してきました。

この『骨に「気」(電気・磁気)を通す』においては、骨が生命活動において、な
くてはならない重要な働きを担っていることをより深化させて解説いたします。
結論的に言えば、骨は生命の仕組みとしての三態となる「物質」・「エネルギー」・
「情報」のすべてに関わり、生命物質の貯蔵庫であり、エネルギーの発生場所
であり、エネルギーと情報の伝達系の中心であり、情報の記憶場所であり、
発信場所でもあるのです。

生命の仕組みの三態となる「物質・エネルギー・情報」の中の物質面におい
ては、骨は生命物質としてエネルギー代謝に不可欠なCa(カルシウム)P(リン)
の貯蔵庫であり、必要に応じて体内に補充し、また格納しています。

エネルギー面においては、骨は体内電気の発電場所であり、また蓄電場所
でもあるのです。そして、情報面においては、骨伝導を介して体内で最大で最
速のエネルギーと情報の伝達系としての役割を担っています。また、骨内に
電気を発生させ、流れる電気から起こる電磁誘導を応用して骨内に磁気を
発生させて、情報の受容・伝達・処理・反応、情報の格納の役割を担ってい
ます。

さらに、骨の中の骨髄においては、骨髄幹細胞にスイッチが入り、遺伝子の複
製、遺伝子の機能発現が起こります。また、細胞呼吸とエネルギー代謝など、
生命活動の要となる場所となっています。

つまり骨格系とは、単なる体の支えではなかったのです。体の中で実際に
目に見えて活動している部分は主に内臓でありますから、私たちはどうしても
そちらに目がいってしまいますが、臓器としての内臓と同じ位に重要な働きを
しているのが「骨」なのです。このことを古代の日本人は、その卓越した洞察
力で発見研究し、骨を主体とする治療技術を開発していたのです。 

 この骨のもつ作用を高めることができるのが、日本伝承医学の技術になり
ます。日本伝承医学の基本技法となる「三指半操法」「リモコン操法」「心臓
調整法」という技術があります。日本伝承医学の治療は、この三つのシンプ
ルな技法で完了するのです。これを可能にするのが、骨のもつ圧電作用と骨
伝導になります。骨に圧やヒビキ(ゆり・ふり・たたき)を与えることで、骨のもつ
圧電現象(ピエゾ効果)と骨伝導が起動し全身に波及するのです。つまり生命
活動の中心である骨に電気や磁気を流すことを目的に技術が構築されてい
ます。表現を変えれば、まさに「骨に気を通す」技術なのです。

骨に気(電気・磁気)を通せば、生命の仕組みの三態(物質・エネルギー・情
)全ての機能を発現することができるのです。これにより低下した生命力や
免疫力をよみがえらせ、病気を治癒に導くことができます。この原理を応用す
ることにより、技術を骨に一元化できたのです。故に日本伝承医学の技術は
シンプルながら大きな治療効果をもたらすのです。

 今、医学界は遺伝子工学に目が向いています。その中より誕生したものに
遺伝子治療というものがあります。遺伝子治療とは、人工的に作り出した正
常遺伝子を骨の中の骨髄造血幹細胞に移植する方法です。以前は不治の
病と考えられていた遺伝子病も、正常遺伝子を体内に投与することによって
治療ができる時代になりました。1回の移植で永久的に悪い遺伝子の生産が
中止され、正常な遺伝子が作られるという治療法です。近い将来、必ずや
がん治療の最前線に出てくるものと思われます。日本の古代人は、この事実
を既に骨の中に見出していて、世界で唯一骨髄機能を発現できる治療法を
開発していたのです。これは荒唐無稽なことではなく、まさに現代の「遺伝子
治療」を既に行なっていたと言えます。

 もうひとつ遺伝子治療で注目しなければいけないのが、遺伝子の移植先で
す。重要なのは骨髄の中にある造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)です。この
骨髄の中の幹細胞は特殊な細胞で、他の細胞は死滅しても幹細胞は生き続
けます。幹細胞のもつ情報の元さえあれば、いつでも新しいものを同じように
作り出せます。これは遺伝子の総元締めともいうべき存在です。骨に気(電気・
磁気)を通すことで、この幹細胞の働きを高めることができるのです。

 この幹細胞は生命情報の源(みなもと)と言えます。漢方的にいうならば「先
天の気」というものです。骨に気(電気・磁気)を通すことができる日本伝承医
学の治療法は、この生命情報の源ともいうべき「先天の気」に影響を与えるこ
とのできる技術なのです。また、幹細胞の中の造血幹細胞は血液を作り出す
細胞なので、骨に気(電気・磁気)を通すことで血液を増やす効果をもっていま
す。血液とはすべての生理活動の媒体であり、「血は生命」といってもよい存
在です。日本伝承医学の治療法はこの血の総元締めを発動させる技術でも
あったのです。事実、骨髄において血液(赤血球・白血球・血小板)は作られ
ており、骨髄幹細胞にスイッチを入れることで、造血は行なわれるのです。

 これを実証する例として骨の作用を応用して骨折治療において、骨に電気を
流すことで破骨細胞と骨芽細胞の二つの機能を促進し、骨折の治癒が著しく
早まるという実験結果が報告されています。これは外部から電極を骨に装着
し、電流を流す方法です。これに加える電気量は極めて微弱なものです。しか
し、これと同じことが実は骨に圧をかけることで生起されることが実証されて
います。骨に圧力が加わる側にマイナスの、引っ張る力のかかる方にプラス
の電位が流れることがわかっています(ピエゾ電流)。これにより、上記と同様
の結果が得られるのです。この二つの方法は、すでに治療に応用されています。

 骨に圧をかけて発生するピエゾ電流の電気量はわずかなものです。しかし、
この微弱な電流によって骨はその機能を発現できるのです。これは電気のエ
ネルギー作用というよりは「情報」といってもよいでしょう。情報なのですから
何百ボルトという高い電圧をかける必要はないのです。これは磁気について
も同様のことがいえます。何千ガウスという高い磁気力は人体に対して有害
なのです。エネルギーとしてよりも、むしろ情報として作用するレベルの磁気
力がかえって有効なのです。

 そもそも生物は自然界において高電界、高磁界の中で生息しているわけで
はありません。何億年と続くある一定の電界、磁界の中で、それを天の気、
地の気として受け、生存してきました。電界の強さとしてはせいぜい500V、磁
界の強さは0.30.5ガウス程度です。これは極めて弱いレベルの電気、磁気
です。これに協調するように人体機能は作られています。故に人体がもとも
と備えている「自己発電システム」を作動させて発生する電気、磁気力が、一
番有効に作用するように生命体は作られているのです。その電気と磁気の
発生場所が人体の骨なのです。

人体の骨に電気と磁気を発生させて骨に気(電気・磁気)を通していく日本
伝承医学の技術は、計り知れない可能性を秘めています。私は、日本伝承医
学の技術を現代の遺伝子治療とみています。これは長い臨床の中で、客観
的な事実として証明しています(治療前と後の血液検査のデータを比較)

特に、赤血球・白血球・血小板は一回の治療で正常値に導くだけの効果を発
揮しています。つまり日本伝承医学とは、「骨に気(電気・磁気)を通すことで、
骨髄機能を発現させ、骨髄幹細胞の遺伝子に働きかけ、細胞新生と造血を
生起させることで、命を蘇生させることのできる医学」であるのです。まさに
古代人は骨に「神」を見出していたとしか思えません。「骨」への高い洞察と
見識は驚嘆すべき内容を含んでいました。「骨に気を通す」ことのできる日本
伝承医学の技術は、世界に例を見ない高次元な治療技術といえるのです。