頻尿(尿失禁、夜尿症を含む)の本質


日本伝承医学における疾病観の特徴は、病気や症状を一方的に悪い事、
つまり負の対応として捉(とら)えず、低下した機能を元に戻すための
一時的な必要対応として捉えています。つまり正の対応として捉えてい
ます。
病気や体に生じる症状を正の対応として捉え直してみると、今ま
で見えなかった新たな原因が見えてきます。また正の対応として捉える
事で、不安な気持ちが解消されていき、正しい対処法を見つけることが
できます。


今回は頻尿について、その本質を説明していきます。
まず現代医学からみた頻尿の原因と治療法を解説します。

頻尿とは、小水が近いこと、つまり尿の回数が通常より多い事を指しま
す。排尿の回数は通常、
1日5回位が平均とされています。それが起きて
いる間に8回以上の排尿、寝てから2回以上の排尿をするようになると、
頻尿と診断されています。


こうした頻尿によって悩んでいる人はたくさんいます。「おしっこのこ
となんて恥ずかしくて言えない」と言う気持ちや、「年をとればトイレ
が近くなるのは仕方ない」という諦めのために、多くのかたが悩みを抱え
ています。

現代医学的からみた原因は
加齢によるもの
男性は前立腺肥大による膀胱圧迫によるもの
女性は膀胱炎によるもの、骨盤底筋のゆるみ(女性特有の原因)
過活動膀胱といって、膀胱が過敏に反応する事で起こるもの
心因性によるもの
水分摂取の過剰によるもの

以上等が挙げられます。また頻尿は命に関わる症状として、深刻には考え
られていないようです。
そしてその対処法は、排尿の回数が過度となり
日常生活に支障が出る場合は、尿の回数を抑える薬が処方されたり、
骨盤底筋や尿道括約筋の運動療法が指導されます。また、膀胱を拡げる
手術や尿道を吊り上げる手術、肥大した前立腺を削る手術も行われます。
しかしなかなか成果はあがらず、慢性的に頻尿が続き悩んでいるかたが
多いのが現状になります。


次に日本伝承医学の疾病観に基づいて、頻尿を解説してみます。
日本伝承医学では体に起こる全ての反応は、必ず意味があるものと捉え
ています。生物として生まれて、自らの体を悪くなる方向に持って行っ
たり、早く死ぬ方向に向かわせる事はありません。命ある生物の起こす
反応には、無駄なことは存在しません。それはまさに人智を超えた対応
として、私達の命を守るために反応してくれているのです。何かを守る
ための対応と言う視点で頻尿を捉えてみますと、本質が見えてきます。
その本質とは、頻尿は排尿の回数を増やす事で、脳内の圧力、つまり
脳圧の上昇を低下させるための
"ガス抜き作用"として排尿を活用してい
るという事です。


脳内の圧力が限界を超えると脳溢血やクモ膜下出血、脳の神経が切れる等
の危険な状態を引き起こします。これらを回避するために、体は排尿さ
せる事で脳内の圧力を下げ、脳血管、脳神経障害を防いでくれているの
です。わかりやすく説明するために以下の例をあげてみます。


"
脳圧を抜く"という対応の代表的な例が「失禁」になります。失禁とは
自らの意思と関係無く尿が漏れることをいいます。人が死の恐怖に直面
したり、突然に身の危険を感じたり、強烈なプレッシャーを受けた時、
尿を漏らしてしまう事は、知られています。それは脳が極度の興奮や精
神的緊張により、脳圧が一気に高まり、脳の神経が切れたり、脳の血管
が破裂する事を回避させるために発生させています。つまり頭で考えて
いては間に合わないために、起きている現象になります。
 これは脳溢血やクモ膜下出血の危険時にも、同様に発生します。異常な
脳圧の上昇を回避する対応として、失禁させる事で脳圧を下げて命を守ろ
うとするのです。脳溢血の罹患患者の半数以上の方が尿失禁と夜間頻尿の
症状が出ていることが明らかになっていますが、これは脳溢血の再発を
防ぐ対応を、体が自然に行なってくれているのです。


その他、脳圧を抜く対応は、体にたくさん備わっています。頻尿、おう吐、
発汗、嗚咽、涙、鼻水、クシャミ、あくび等も脳圧を下げる手段として起
きているのです。これらの対応の中で、一番素早く実行できて、効果が高
いのが排尿による対応になります。


似たような現象として「気絶」があげられます。
突然目の前で衝撃的な出来事が起きた時に、瞬時に気を失って倒れたり
することがあります。これは、脳圧が一気に上がって、神経が切れたり、
脳の血管が破裂するのを回避するために起きています。体を倒して横た
わらせる事で脳圧を下げると同時に、これ以上脳を使わないようにする
ために意識を失わせるのです。このように体は瞬時に命を守る対応を備
えているのです。


私たちは日常的に精神的な緊張が続いたり、極度のプレッシャーを受け
たりするとトイレが近くなります。このように頻尿は精神的な作用の影
響を受けやすくなります。しかしこれは、脳内の圧力の上昇を回避する
ために、排尿する事で脳圧を抜く対応をしてくれているのです。これが
失禁や頻尿の本質になります。
故に、排尿の回数を薬で抑えてはいけな
いのです。薬で症状を抑えることで脳溢血やクモ膜下出血の危険度を自ら
高める事になるということを認識して頂きたいと思います。


また子どもの夜尿症も同じ機序で発生する場合があります。これは夜間
に起こる尿失禁です。(夜尿症は抗利尿ホルモンの分泌量の不足からも
起こります)。無意識に、精神的緊張の持続や我慢の蓄積による脳圧の
上昇を、尿を漏らす事で回避しているのです。これは体の自然な対応な
ので、叱ったり、矯正を強いたりしてはいけません。夜尿症は単に肉体
的症状として捉えるのではなく、その子の内面を見つめ、うまく引き出
し同調してあげる事が改善の手掛かりになります。また尿を漏らす機序
を話してあげる事も大切です。


以上が頻尿(尿失禁、夜尿症を含む)を捉える上で大切な見解となります。
頻尿の本質をこのように捉え直す事で改善していくことができます。

難しいのは自分では気付いていない自らの精神的ストレスの蓄積要因を
探る事です。これは長い時間の経過があり、様々な条件もあることです
から短時間での解決は難しいものです。まず頻尿の直接的要因となる脳
圧上昇の機序を知る事が改善に繋がります。


脳圧を高めるには高める理由と訳があります。これは脳だけの問題では
なく、全身の血液の循環、配分、質の乱れという背景があって、必要な
対応として起こしています。
全身の血液の流れが悪くなったり、一部の
場所に大量に血液が集められたり、血液中の赤血球がくっつき合って大
きくなり、ドロドロの血液になる事で、全身の毛細血管の流れが遅くなる
と、体の中で一番血液を消費する脳に、血液の供給不足が起こります。

脳は常に新鮮な血液を必要とするため、これを補う対応として脳圧を高
める事で血液を早く巡らせようとするのです。これが脳圧上昇の理由に
なります。
故に脳圧が高くなるのは、必要な対応ですが、脳圧が一気に
高くなったり、脳圧の高い状態が常に維持されると、脳溢血やクモ膜下
出血の危険が生起されます。この危険を回避するために失禁や頻尿を起
こすことで脳圧を抜く対応が必要になるのです。


全身の血液の循環、配分、質の乱れに大きく関わっているのが、心臓と
肝臓・胆嚢になります。心臓は血流のポンプとして働き、肝臓と胆嚢は
血液の配分と質に一番関与しています。肝臓・胆嚢と心臓、つまりは

"
肝心要"の働きを元に戻す事で改善を図る事が出来るのです。これによ
り脳への血液供給が良くなり、脳圧を高めなくても脳内の血流が確保さ
れるのです。脳圧が低下すれば、頻尿により脳圧を抜く対応を取る必要
がなくなり、頻尿は改善されていきます。このように失禁、頻尿、夜尿
症の背景に存在する脳圧の問題も合わせて改善していかなければ、根本的
解決には結びつかないのです


日本伝承医学の治療は、肝心要と言われる心臓、肝臓の機能をあげてい
く技術で構築されており、全身の血液の循環、配分、質の乱れを速やか
に改善することができます。また生命力・免疫力の低下を骨髄機能を発
現させる事で高める事ができます。さらに家庭療法として頭と肝臓の氷
冷却法を合わせる事で、脳圧の上昇を効果的に抑える事が出来ます。

このように頻尿の根拠と機序に根ざした対処法により症状の改善に取り
組んでいます。