どうして左利きになるのか~日本伝承医学的考察 20125.12.15 有本政治


世の中には右利きの人と左利きの人がいますが、昔は左利きは良くないと言われ
強制的に直されたものです。最近では左利き専用の物も数多く見かけるようになり
ましたが、まだ大半は右利きの人が生活しやすいようになっています。
しかし左利きには左利きになる理由が存在し、本来は無理矢理、右利きにしようとし
てはいけません。なぜならば左手を動かすことで心臓のポンプ力を助け、脳への血
流を促してくれているからです。
また最近では左利きは個性のひとつとして認識されるようになり、スポーツ界での
活躍や学問、芸術分野でも秀でている方々に、左利きが多いような気が致します。
左と右を用途によって使い分け、両方使える方々も増えてきています。日本伝承医
学では、なぜ左利きになるのかを考察していきたいと思います。


< 日本の古代人の発見した、右手と左手の作用の違いから、左を使う理由がある>

前項の院長日記「手首の痛みと運動障害の考察」の中で解説してきましたが、右手
と左手では人体に対する作用が異なります。右手には物を下げる作用があり、左手
には上げる作用があるというものです。これは日本の古代人(縄文以前に日本の
地に生きた人々)が、命の物理や人体生理、また骨への高い見識の中から発見した
気づきになります。この真意については、日本の古代人の高い精神性と物事への抽
象能力の高さに注目すべきだと考えます。縄文土器や土偶の芸術性の高さと抽象性
は世界に例を見ないものであり、日本の古代人の感性と脳の使い方には特筆すべ
き点があります。

また古代人は自然界の音を48音に分類し、表音文字と表意文字を同時に使いこなし
日本語を作り上げた高度な分析力と抽象力をもっていました。これだけ高度な洞察力
を有する人々であるなら、命の物理や人体生理の解明、また骨のもつ多様性を発
見開発しても不思議ではないと考えられます。
古代人が発見した両手両足の作用は、人体を臍(へそ)を中心に上下左右に4分割し、
右下肢と左上肢には物を上げる作用をもたせ、左下肢と右上肢には物を下げる作
用があるという事です。
前項の「手首の痛みと運動障害の考察」の中では、上記の原理を当てはめて、ピ
アニストがリサイタル等の当日に、右手首の突発的な固着と痛みを表す例をあげて
解説しました。故意に右手首を使えなくする事で、脳の血液が下がる事を防ぎ、精神
的ストレスの蓄積と極度のプレッシャーで脳の酷使からくる、脳の血液不足を回避して
いるということです。

また脳の血液不足を助ける対応として、右足の物を上げる原理を活用します。右足
の踵に突発的に痛みを起こす事で、踵を着かせないようにします。そしてつま先歩き
を余儀なくし、足とふくらはぎのポンプ機構を強力にする事で、右足の血液をもち上
げる働きを高め、心臓まで血液を還し、脳への血液供給を増進しようとしていくのです。
体は、緊急時にさらされると、このような対応手段をとっていきます(詳細はHP院長
の日記、突発性難聴の項参照)。非常手段としての右手と右足の原理の活用は上
記になりますが、左手には逆に物を上げる作用があります。これは血液を脳や心臓
に戻す働きを意味します。これが左利きを解明する手掛かりとなります。


<左手は、血液を脳にもち上げ、また血液を心臓まで戻す作用があるーーー遺伝
的に心肺機能が弱いタイプの人は左手を使う>

左手の物を上げる作用とは、具体的には、血液を脳までもち上げる力が補助され、
脳へ血液を送りやすくします。これは心臓のポンプ力の弱い人にとっては助けられる
作用で、手の末端から心臓までの血液の還りを増進します。この左手の血液をもち
上げる作用は、遺伝的に心肺機能の弱い体質の人にあてはまります。
左手を動かす事で、脳への血液供給を助け、心臓に血液が還りやすくなり、その分
心臓の血液の噴出量が増し、全身に血液が供給でき、さらに脳への血液供給が確
保できるようになるからです。特に心臓機能が減退して、心臓のポンプ力が低下する
と命に関わってきます。体はこの機能を守るためにあらゆる手段を尽くして対応してい
くのです。このための対応として、心臓の収縮力を助けるために、心臓を体ごと絞り
込む事で、心臓の血液の噴出力を助けます。この対応の一環の中に、左手を動かす
事で血液を心臓まで還りやすくし、また脳への血液供給を補うという対応が入ります。

体が示す命を守る対応は、幾重にも構築されていて、あらゆる手段を駆使します。
つまり左手をより多く使用して、左手のもつ、物を上げる作用を活用するのは必要
な対応なのです。左手を使う事が優先されるという事は、左利きを生む一つの要因
になるのです。左利きになるのは、偶然ではないのです。

生物として生まれて、その生を全うする事は必然です。自らの命を育み、種を保存
する事が生物の大命題です。そのためには、簡単に死に至っては意味を成さない
のです。命あるものは、何億年もかけて、ありとあらゆる環境の変化、疫病等を乗り
越えて、耐性力を身につけ、最後の最後まで、命を守り抜くように完璧な防御手段を
構築しています。この観点から、左利きになる原因を考察していくことが必要と考え
ます。左利きになるにはなる理由が存在するのです。生物は意味のない事は一切
起こしません。その根本原理と理念は、全て命のためになるかどうかが問われてい
ます。命の摂理に反する事は行なわないのです。

以上の観点に立って左利きを考察した場合、日本の古代人が発見した左手の原理
は、その謎を解く大きな指針となるものと考えます。その意味からすると、遺伝的に
心肺機能の弱い体質の人が、心臓の機能を助ける対応として、左手を動かし、心臓
に還る血液を補助し、脳への血液供給を助けていると考えられます。また現代では
受精して胎児になって10~12週で既に左利き、右利きになるかが決まっていると
言われ、その左か右かを決定する遺伝子が発見されました。つまり本人だけの問題
ではなく、母体に心肺機能(心臓機能や肺の機能)の弱さがあると、先天的に、生ま
れてくる子どもは左利きになりやすいということになります。


<遺伝的に心臓機能の弱い体質の人は、体全体が右にねじれている>

体のゆがみは、自分ではなかなか気付かない事がほとんどです。体のゆがみに
気付く例として女性のスリット入りタイトスカートの着用があります。タイトスカートは
下半身をタイトに包む構造になっていて、歩行によるよじれが出やすいのとスリットの
位置がずれる事で、スカートが回っているのがわかり易いためです。
スリット入りのタイトスカートを履いて歩いていると、知らない間にスカートが回ってい
ることに気付きます。これはどうして起こるかというと、体全体が右ねじれを起こして
いるからです。

この右ねじれがどうして起こるのかがこの項のテーマになります。前項で既に解説し
てあるように、心臓の血液の噴出を助ける対応として、心臓を体ごと半身を絞り込む
事で、心臓ポンプを補助するのです。この体勢をとるためには、全身を使います。
特に上体を右にねじり、上部胸椎を前方に突出させ、左肩を前下方に巻き込む姿
勢を余儀なくされます。また上体だけではなく、下半身も心臓を絞り込む姿勢をとっ
ていきますます。骨盤を右にねじり、左下肢を上方に引きつらせる体勢をとるのです。
これにより、体全体が右にねじれ、左半身が縮まり、絞り込まれていきます。スカート
が右回りする理由はここにあります。という事は右にねじれた姿勢を示してる人は、
遺伝的に心肺機能が弱い事を意味します。傾向的には、手足が長く、痩せ型のきゃ
しゃな体型の人に多く見られます。

全身を使って心臓を絞り込む体勢をとるのですが、それをもっと助ける対応として、
上部胸椎を前方に突出させます。これは、心臓の収縮は心臓の下部の尖った
形の心室で行なわれるために、この心室をより収縮しやすくする対応です。生きて
いる体の対応はここまで徹底してやるのです。正に見事な対応手段です。心臓の
遺伝的に弱い人の体型は上記の右ねじれと左半身の絞り込みと本来は後方彎曲し
ている上部胸椎(3、4、5番胸椎)が、逆に前方に突出させる姿勢を示すのです。

特に第3胸椎と第5胸椎が凹んだ状態になっています。これは日本伝承医学の診
断において、心臓の状態を診る反応箇所になっています。また心臓調整のための
治療場所にもなります(狭心症や心筋梗塞は第3胸椎と第5胸椎のヒビキ操法に
より著効を示します)。

この左半身に起こる右ねじれと心臓の絞り込みや胸椎の突出姿勢により、左肩は
右にねじれ、前下方に巻き込まれます。これに伴い左上肢も右にねじれ、右上肢
より前に位置します。この両手の位置関係は、手で物をつかむ場合に左を使い易く
します。逆に右手で物をつかむ場合には、体をねじれの逆の方に動かす事になり、
体の使い方が窮屈になります。
この状況が左手を優先的に使わせる事につながるのです。例えば乳幼児に向き合
って物を持たせる場合に、左手がやや前に位置し、体が右にねじれていれば、左手
を使う方が楽であり、左を使う頻度が高くなります。
この様に心臓ポンプを助ける姿勢の上体の右ねじれと左肩の前下方にへの移動は、
左利きになる要因の一つとして挙げられます。
(参)フィギュアスケートにおける何回転ものジャンプ回転は、右利きは左回転になり、
左利きは右回転になることがほとんどです。これは左利きは体全体が右にねじれて
いるため、右回転がやり易く自然の動きになるからです。


<母親自身の体が右ねじれしていれば、乳幼児を左手に抱く事が多くなる>

遺伝的に心肺機能の弱い体質の人は、体全体が右ねじれになっています。母親が
この姿勢をしている場合の乳幼児の抱きかかえ方は、左上腕と前腕で乳幼児の頭
と体を支え、授乳や抱っこをすることが多くなります。それは逆の腕で抱きかかえる
と、体のねじれの反対に抱えた体を向かせる事になり、楽な姿勢ではないからにな
ります。それ故左腕に乳幼児を抱きかかえる事が多くなっていくのです。
また、母親が右利きの場合、右手が自由に使えるように左腕で乳幼児を抱きかかえ
ることが多くなります。この抱き方は、乳幼児の右手が母親の体側に位置する事にな
り、自由度を制限する事になります。逆に左手は解放側にあり、自然に左手を使う頻
度が高くなっていきます。乳幼児が左手で物をつかんだりしていく機会が多くなってい
くのです。

左利きになるにはこうした様々な理由が存在しています。左利きは決していけないこと
ではなく、体を守るために生じている命を守る対応となります。自分自身でなぜ左利き
なのかを理解し、体に対する認識を深めて頂きたいと思います。