「逆流性食道炎」は2006年に記したものになります。

 逆流性食道炎  有本政治

 心労や極度の精神的ストレスの持続は、肝臓や胃に内熱を生じさせます。
この異常な熱の発生により、食道の内管壁の粘膜の水分質がとばされ、
ねばねばした痰となり、内管壁にへばりついたり、食道や気管をふさぎ、
せまくしていきます。

逆流性食道炎は、塩酸を多く含む胃酸を食道に上げることにより、管内に
へばりついた汚れやつまりを溶かし、除去する役割を果たしています。

 元来心肺機能が弱い場合が多く、粘液質の痰を自力でうまくきることが
できなくて、蓄積した痰が気道を大きくふさいでいきます。胸苦しさ、息
苦しさから、せき、吐き気、頭痛、耳鳴り、めまい等の様々な症状を併発
させていきます。

また、体はせきによって肺を鼓舞させ、なんとか気道を確保しようと働く
ため、胸部、また背部(心臓裏)の骨に、刺すような、拍動性の痛みが生じ
てくる場合もあります。

 初期症状は胃かいよう、十二指腸潰瘍と似ていますが、これらを下水管
(下部)での症状ととるならば、逆流性食道炎は下水管のつまりが上まで上
昇し、吹き上がってきた末期に近い対応の姿とみなしてもよいでしょう。
これ以上、物を上から入れないように、 食事をしないように、という体か
らの危険信号でもあります。 

 胃かいようの段階では、なんとか小分けにして食べられていた食事も、
胃酸が上に逆流してくるこのような段階に入ると、ほとんど受けつけなく
なっていきます。気持ちが悪く、丸1〜2日間、全く物を食べられない状
態が続くこともあります。しかし、食事をとらないことによって体は胃腸
を休め、血液の循環、配分を取り戻して修復しているので、無理して食事
をとってはいけません。
また、潰瘍の段階ではゲップを自然に出せていたのが、逆流性食道炎まで
移行してくると、自力ではなかなか吐き出せなくなっていきます。

 ゲップには胃の内圧を除去する大事な役割がありますが、つかえて出なく
なると胃部が膨張し、心臓、肺を突き上げ、呼吸困難におちいることがあ
ります。逆流性食道炎は、胃が膨満し横隔膜を突き上げ、心臓、肺が圧迫
されるのを防ぐために、噴門(胃の上の口、幽門は胃の下の口)を開いて胃
液を出し、胃の内圧を抜いて心肺機能を守っている対応の姿でもあります。

ゲップがつかえたときにはあせらず、赤ちゃんのゲップを出すような要領
で、背中から誰かにすぐたたいてもらうことが大事です。誰もいないとき
には背を少しまるめて、自分でこぶしでたたきます。

 赤ちゃんはゲップがつかえて出ないと、泣いてミルクと一緒にゲップを吐
き出し、気道を確保します。赤ちゃんは噴門部がまだ未熟で、きちんと閉
じていないため、ミルクをのんだまま寝かせてしまうとミルクが気道に入っ
てしまうため、窒息してしまいます。余分な空気はいち早くゲップを吐く
ことで抜いてあげなければなりません。

 逆流性食道炎は、この噴門部を赤ちゃんのようにゆるませて、中からの
ガス、余計な空気を抜いて、内圧を下げている症状になります。胃の入り
口である噴門をゆるませることで、胃の内容物や消化液を逆流しやすくし、
食道に炎症を起こさせ、体を守ってくれている対応の姿といえます。

 現代医療ではこの逆流を悪い対応とみなし、これを放置しておくと、
がんになるという論理で薬や手術によって対処してしまいます。しかし私
たちの体は必要があって胃と食道の接合部をゆるませ、逆流させているの
であって、これを抑えてしまったり、接合部の締まりを良くする手術をし
てしまえば、必ず体は次なる対応をせまられてきます。

逆流性食道炎を放っておくとがんになるのではなく、この症状を薬や手術
で阻止してしまうことによって、最終対応の姿であるがんに移行してしま
うのです。 逆流性食道炎はけっして悪い症状ではなく、命を守るための
必要な対応になります。

 私たちの体は肝臓の機能が低下すると、胆汁の生成機能を著しく害し、
胆汁の分泌低下をもたらします。脂肪の消化に欠かせない胆汁が不足する
と消化酵素を出す、すい臓に大きく負担をかけ、すい液の分泌低下をも引
き起こします。すい液が出なくなると胃から出る胃酸を主成分にした胃液
を大量に出すことで体は食べ物の消化を助けようとします。これが胃酸過
多になり、胃の膨満、内圧の上昇を引き起こしていきます。この内圧を抜
く対応が逆流性食道炎となります。

 この症状を改善していくには、まず、肝臓の充血、炎症を取り去り、肝機
能を上げ、胆汁不足を補うことです。胆汁が生成されればすい臓にも負担
がかからず、胃の機能を取り戻すことができます。

体に出ている症状は単に現れている症状だけを封じ込めてしまうのではな
く根本的要因から見つめ直し、正しい選択眼をもって対処して頂きたいと
思います。