月経困難症の本質 2016.10.20 有本政治

月経困難症とは、生理時の子宮の痛みや多量出血、生理時の体調不良等全般を
言います。以前に比べると月経困難症の女性の方が増加傾向にあります。元々生
殖器(子宮や卵巣)は、生物としての種の保存を全うするために、免疫力が高く、病
気にかかりにくい様に丈夫にできています。容易に病気に侵されては、種の保存が
できなくなるからです。

この様に免疫力が高く作られた器官に症状が発生する事を、重大な問題として受
け止めていく必要があります。つまりは病気に侵されにくく、症状の出にくい生殖器
に症状が出るということは、自身の生命力や免疫力がかなり落ちている事を表わし
ています。単に生殖器だけの問題ではないのです。

月経困難症の人は将来的には、不妊症に移行する場合が多くみられます。
女性の健康は、古来から”血の道症”と言われ、生理の順不順、生理痛があるか
ないかが健康の基準となっています。月経困難症をこの様に認識し、根本的に改
善していくことが大事です。激痛を一時的に緩和するための鎮痛剤等の使用は、
症状を封じ込めるため、より深部に病状を進行させてしまいます。鎮痛剤等はでき
るだけ使用してはいけません。それではどう対処すべきかを以下に記載します。


 <痛みの意味について>

生きている体の表わす反応には必ず意味があります。痛みの信号を発する事で、
心臓の拍動を強め、血液を速く循環させ、患部に一刻でも速やかに大量の血液を
集めることで、患部の機能回復と修復を図ろうとします。充分に血液が行き渡れば
痛みは治まっていきます。痛みを悪いこととして捉えず、痛みの意味をこの様に認
識する事が必要です。

痛み止めを使用して痛みの信号を封じ込めてしまうと、患部に血液が集められなく
なり、機能回復と修復ができなくなります。そうすると体は、以前より強い痛みを発
して血液を集めようとします。薬の効果が切れ始めた時に、前より激痛が起こるの
は、このような理由があるからです。痛み止め等を繰り返していくうちに、症状は
益々激化していきます。そのため体はより強い鎮痛剤を必要とし、ホルモンのバ
ランスを完全に崩してしまうのです。


 <激痛は、痛みの信号を発して血液を集めようとする必要対応>

痛みを発している所は、血液不足が生じている場所になります。血液不足の状態
と緊急性に応じて、痛みのレベルが上がります。生理痛が激痛の場合は、子宮の
血液不足が深刻で、痛みの信号レベルを高め、緊急に血液を集める対応をとって
います。それでも血液が集まらない場合は、子宮を痙攣(けいれん)させる事で、ス
ポンジ効果で、周囲から血液を吸いとってまでも血液を集める緊急対応をとってい
くのです。体はこのようにして、血液を集めるために、ありとあらゆる対応手段をと
っていくのです。

腹部や頭痛、めまい等の痛みも、虚血(血液不足)が起きることで、血液を集める
ために、発生する対応になります。また精神的な不安やイライラ、情緒不安定な状
態の持続は、脳内の神経伝達物質を大量に消費する事になります。これも脳内に
血液不足を生む要因となり、頭痛やめまいを発生させます。

虚血を起こす部位は、その人の遺伝的に弱い所に生じます。つまりは血液が不足
して機能低下を起こしている所に痛みや異和感は発生するのです。これらも全て
血液を集めて修復を図る体の必要な対応になります。


 <血液不足が起こるのは局所の問題ではなく、全身の血液の循環・配分・質の
  乱れが起因していて、遺伝的に心肺機能が弱い人に起こりやすい>

月経困難症を含む全ての病気や症状の直接的な要因は、全身の血液の循環・
配分・質(赤血球の連鎖によるベタベタでドロドロの血液)の乱れがあります。月経
困難症を発症する人は、特に遺伝的に心肺機能の弱いタイプの人がなりやすくな
ります。

心臓と肺は生命維持に直接関わる臓器で、呼吸が阻止され、酸素が供給されな
いと3分50秒で死に至ります。また心臓が停止すればこれも死に直結します。この両
方が遺伝的に弱いという事は、虚弱体質を意味します。心臓のポンプ力が弱いと、
血液の循環に支障が生じます。また、肺の機能が弱いと、血液に十分な酸素を溶
け込ます機能が弱くなり、血液の質の低下が起きやすくなります。

心肺機能が遺伝的に弱い人は、上記の様に全身の血液の循環が悪くなりやすく、
血液の質の低下が起きやすくなるのです。さらにこの二つに精神的なストレスの持
続による肝臓、胆嚢機能の低下が加わると、全身の血液の配分が大きく乱されて
いきます。中身の詰まっていて血の固まった様な大きな臓器である肝臓に、大量の
血液が機能回復のために集まるため、全身の血液の配分が大きく乱れるからです。

また胆嚢から分泌される胆汁が胆嚢の腫れのために分泌不足になると、血液の
熱を冷ます働きが低下します。これは血液に熱をこもらせ、熱変性によって赤血
球のくっ付きを生じさせます。この赤血球の連鎖は血液の質を低下させます。また
毛細血管内の血流が阻害される事で、血液の循環をさらに遅らせる要因となります。

以上の機序により、全身の血液の循環・配分・質の乱れが生起されます。この様
に遺伝的に心肺機能の弱い人は、全身の血液の循環・配分・質の乱れが起きや
すくなります。これが子宮や卵巣に血液不足を引き起こす最大の要因になります。
病の根底にまず前提となる要因があって、起こるべくして月経困難症は発症してい
るのです。この様に自分自身の遺伝的な体質を知る事も月経困難症を改善してい
く上で大切です。弱い体質の人が外食や夜更かし等の不規則な生活を送っていて
は回復はできません。病気や症状を改善していくためには、自助努力による生活
習慣等の改善も必要になります。


 <痛みの信号を封じ込める対処法は、重篤な病に移行させる>

現代医療においては、月経困難症を改善する方法として様々な薬物投与を行ない
ます。しかしどの方法も根本的な誤認があるのです。これまで詳細に月経困難症の
根拠と機序を解説してきたように、生きている体は必要な対応として痛みの信号を
発しています。この痛みは封じ込めてはならないのです。

強い鎮痛剤、生理を止めるピル療法、ホルモン療法、リュ−プリン療法等が行な
われますが、皆一時的に痛みや症状を封じ込めるだけになります。薬を止めれば
また再発していきます。元々強い鎮痛剤やピル、ホルモン療法は副作用が指摘さ
れています。これを長期に繰り返すことは、病を慢性化させ、様々な副作用を引き
起こします。それだけにとどまらず、必要な対応を封じ込める事で、体は次なる対
応を迫られるのです。つまり、より重篤な病に移行し始めるのです。次なる対応
は子宮筋腫や脳腫瘍等になります(詳細はHPの婦人科の項を参照)。


<どう対処すべきか>

月経困難症の根拠と機序が明らかにされてくると、どうしたら良いかの答えは出て
きます。子宮や卵巣に血液が十分に供給されれば、血液不足が解消され、痛み
を発して血液を集める必要がなくなるのです。

そのためには、全身の血液の循環・配分・質の乱れを整える事が不可欠になります。
また全ての病や症状の背景に存在する、その人自身の低下した生命力や免疫力
を高める事も必要です。特に遺伝的に心肺機能が弱い人は、この部分へのアプ
ローチがないと根本的な解決は望めません。

この二つを同時に行なえるのが日本伝承医学の治療法になります。生命力とは
細胞新生であり、免疫力とは造血(赤血球、白血球、血小板)です。細胞新生と造
血は共に人体の骨髄の中の造血幹細胞が受けもっています。つまり骨髄機能を
発現する事で、一番合理的に効率よく生命力や免疫力を高める事ができるのです。

日本伝承医学の治療は骨髄機能を発現する目的で構築されており、生命力や免
疫力の低下を上げていくことができます。また、全身の血液の循環・配分・質の乱
れに関与しているのが心臓と肝臓(胆嚢を含む)になります。日本伝承医学は内臓
的には”肝心要”と言われる、肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を高める様に技法が
構築されています。

さらに日本の古代人が開発した、子宮や卵巣の腫れや炎症を鎮める独自の「ふり
操法」が効果を発揮します。家庭療法として推奨する頭と肝臓の氷冷却法も、症状
の改善を早めます(詳細はHP、院長の日記を参照)。この様に全体と局所の両面か
らのアプローチにより、月経困難症を改善に導く事ができます。