顔面神経麻痺の本質と対処法 2017.6.15 有本政治


顔面神経麻痺は、顔の片側半分に突然、皮膚の感覚麻痺と表情筋の筋肉麻痺
が起こり、随意的に顔の表情を変えたり、目を閉じることができなくなります。物を
食べるときに、麻痺側の口からこぼれたり、よだれがたれたりします。食べ物は、
口の中にゴムの様な物や金属の様な異物が入っている感覚になり、おいしく感じら
れなくなります。

顔面神経麻痺は、はっきり原因が特定できていない疾患になります。原因が特定
できないという事は、本来治療の手段がない病気です。しかし現代の医学は、症状
を消す事だけに終始しているため、様々な薬物治療や外科手術を行ないます。
これは治癒しないばかりか、ますます症状を複雑化させ、再発を繰り返し、後遺症
を残し、さらにはより重篤な疾患へと移行させてしまうことになります。

原因が特定できないのは、症状を悪の対応として捉えている事に問題があるから
です。この顔面神経麻痺を“正”の対応の視点から捉え直していく事で、その根拠
と機序が明らかになり、本質が見えてきます。これにより、対処法も自ずと構築で
きるのです。以下解説していきます。


『生きている体の起こす反応には、必ず意味がある』

日本伝承医学が首尾一貫して主張している病気や症状の捉え方は、生物として生
まれて、自らの体をより悪くしたり、ましてや死を早める方向に体を導いていく事は
ないという事です。一時的に辛い症状であっても、必ず何かを補い、何かを元に戻
し、何かの代わりを務めたりする事で、体にとって必要な機能を守ろうとする“対応”
をとっているのです。ひいては命を守る対応であるのです。これは生物として極め
てあたり前に備えている防衛手段の一環です。

この真理を、何処かに置き忘れた所に現代医学の“悲劇”があるのです。あらゆる
疾患において、症状を一方的に悪と捉えてしまった事から、その原因と本質を見失
ってしまったのです。

顔面神経麻痺という、辛く不自由な状態であっても、命を守る対応として、発症させ
ています。そして命にとって必要で意味があるからこそ、一時的に症状を発生させ
てまでも対応せざるを得ないのです。

顔面神経麻痺は頭部に起こる疾患です。顔面の皮膚や筋肉は、内部を映す鏡です。
特に表情筋は、その名の通り、“情”を表わす筋肉であり、心の状態が現われる筋
肉になります。この観点に立って考えてみると、顔面神経麻痺が精神的要因に起
因し、内部の脳との関わりの中で発生しているということがわかってきます。


『顔面神経は脳の五感を司る脳神経12対の中の一つで、顔面神経麻痺は他の脊
髄神経からの分枝からくる麻痺と違い、脳との関わりの中から発生している』

顔面神経麻痺は、頭部に起こる麻痺で、脳神経が支配しており、他の手足の麻痺
とは異なります。脳神経の支配ということは、脳の機能との関連の中から発生して
いる事に着目する必要があります。つまり脳の機能を守る対応として、発生させて
いるという観点に立って顔面神経麻痺を捉えていく必要があります。


『麻痺とはどういう状態を言うか』

麻痺とは大まかに分類すれば、感覚麻痺と運動麻痺になります。感覚麻痺とは、
痺れている様な状態で、触覚や温冷感覚等が低下した状態です。運動麻痺とは、
関節や筋肉を動かそうと思っても、随意に動かす事ができない状態です。

この二つの麻痺状態をわかりやすく例えれば、正座を長時間したあとに、立ち上が
る時の感覚になります。正座をすると膝から下の下腿部が、初めは痛く感じられ、
次第に感覚が無くなります。そして起き上がろうとすると、足関節が動かず、膝から
下の感覚が無くなり、床に触れている感覚が無く、立ち上がる事ができません。
そして血液が通ってくると、下腿部の筋肉に猛烈な痺れ感が起こり、次第に時間と
共に正常に復します。このような状態が感覚麻痺と運動麻痺の状態です。

これはどうして起きるかと言うと、正座という膝を最大に屈曲する状態が持続する
事で、脊髄神経から出る知覚神経と運動神経が途中で遮断される事と、血液の
流れが遮断されるからです。つまり神経を介して送られる「情報」と「エネルギー」が
遮断され、また生命物質として最重要な血液が遮断される事で膝から下の下腿部、
足関節に痛み、痺れ、麻痺が起きるのです。

つまり麻痺状態とは、該当組織に血液の供給不足と神経からのエネルギーや情報
が充分に伝達されない事で発生するのです。


『顔面麻痺を捉え直す上で、心の緊張や状態を表わす表現の“顔面の強張り”や
“顔面の引きつり”と瞬時の“顔面蒼白”と“顔面紅潮”の発生が参考になる』

顔面の強張りや引きつりは、当然顔面神経麻痺とは違う状態ですが、顔面神経麻
痺の本質を考える上で重要なヒントを与えてくれます。

顔が強張っているとか、顔が引きつっているという表現は、心の状態を表わす言葉
です。顔が強張ったり、引きつる状況は、急激な恐怖や驚き、怒りの場面で出てき
ます。また瞬時に顔面が蒼白になったり、真っ赤に紅潮するのも心の状態の反映
になります。

この様に、心の状態に瞬時に反応するのが、顔面神経の支配下にある表情筋に
なります。上記の顔の強張りや引きつり、顔面蒼白、顔面紅潮は自分の意思とは
無関係に起こり、随意的にコントロールする事は困難です。

なぜこの様な反射が起きるかを正の対応の視点で考察してみると、顔面の強張り
や引きつり、蒼白、紅潮も、生きている体の起こす反射に意味のない事は無いこと
がわかってきます。

上記の症状の中から、顔面蒼白を例に考察してみると、顔面蒼白とは、顔から血
の気が引く事で、同時に顔面の強張りや引きつりも起こっています。顔から血の気
がひき、顔面に引きつりが起こる状態になるのは、命の危険に遭遇したり、極度の
恐怖に襲われた時です。

命の危険や極度の恐怖に襲われた時に、生きている体のとる行動や反応は、必
ず命を守るために生起されます。命を守る上で何が一番重要な要素かと考えると、
それは命を守るために重要な働きを担う中枢部に、血液と生理機能を働かせるた
めに必要なエネルギーや情報が十分に供給伝達される事です。

その中枢部とは、別名“命の座”と呼ばれる脳の中心に位置する「脳幹」部になり
ます。ここは基本的な生命維持機構(呼吸、心拍、体温等の中枢)に指令を出す
場所で、命を守る上でここの機能を低下させるわけにはいかないのです。
つまり“脳幹部”に血液の供給とエネルギーや情報を確保するためには、頭部の血
液の循環、配分を一気に変えて脳幹部に血液を集める対応をとるのです。そのた
めには顔面に血液とエネルギーや情報を供給している場合ではなく、血の気を引
いて、脳幹部に廻すのです。これが顔面から血の気を奪い、表情筋の動きを停止
させて、命を守る対応の方に血液とエネルギーや情報を使うのです。

この機序が、顔面神経麻痺の原因を解く上で重要なヒントを与えてくれるのです。

「備考」ーーー死の恐怖や極度の恐怖に遭遇した時、“失禁”するのは、脳内の圧
力が急激に高まってこれ以上脳圧が上がると、脳内血管の破裂の危険ある場合
に、尿を出す事で脳圧を抜く対応になります。この延長上に各種失禁や頻尿、夜間
尿があります。また熟年男性に多くみられる外傷性以外の多量出血を伴う「鼻血」
も上記の脳圧の急激な上昇から脳血管障害を守る対応になります。

また、極度の恐怖や大きなショックな出来事にみまわれると、一気に血液が肝臓
に集まり肝臓が充血します。恐怖やショックで失神し倒れたときに、肝臓がパンパ
ンにはれてしまうのです。血の気がひいて肝臓に集まるのです。これは命の危機
にさらされたときに、極限時に起こる対応になります。これ以上脳を使うと危ない状
態になると、肝臓に血液を集めて、失神させて体を横たわらせ、血液を浄化濾過し、
各臓器に新鮮な血液をいち早く循環させようとするのです。
この状態は、顔面麻痺などを起こしている場合ではない、急性、緊急状態の時に
起こります。


『顔面蒼白や顔の強張りや引きつりの根拠と機序が顔面神経麻痺にもそのまま
あてはまる』

顔面蒼白や顔の引きつりは、顔面から血の気が引いて、顔面が青白くなり、表情
筋が拘縮する状態は、緊急時に備えて脳幹部の血流とエネルギーや情報を確保し
ようとするからです。生きている体の起こす反応には全て意味があり、備考欄に示
した脳圧を抜く対応の二例以外にも、最後の最後まで命を守る対応手段を完璧に
備えているのが生命体になります。

顔面神経麻痺は、上記の状態が長時間持続し、程度が進行して麻痺に移行した
状態と捉える事ができます。これは脳の機能を確保するためには、頭部の表面の
機能を維持する血流とエネルギーや情報を使っている状況ではなく、持続的に脳
内に血液とエネルギーや情報を送り込む必要に体が迫られていることを表わして
います。顔面神経麻痺を起こしてでも優先的に守らなければならないのです。


『何故、麻痺を起こしてまでも守らなければならない状況になるのか』

人間は他の動物たちと違い、体内の生理機能をコントロールする機能が、本能的
な制御よりも、大きく発達した脳が、生理機能を支配する割合が多くなっています。
そのために脳の機能を守る手段を幾重にも構築する必要があるのです。

そのためには、脳への血液供給とエネルギーや情報伝達量を多く供給処理できる
ように作られ、脳内にその指令を出す中枢を充実させています。実際、脳は大量
の血液を消費する場所で、常に新鮮な血液を必要とする場所になります。また使
用するエネルギーや情報量も膨大です。
当然これに対応できるように脳内の機能は作られているのですが、脳の血液とエ
ネルギーや情報の消費が限界を超えてしまうと、これを守る対応にせまられてくる
のです。

つまりもうこれ以上血液とエネルギーや情報の消費が続くと、脳内の機能を維持
できなくなる状況に追い込まれてしまったのです。これを防ぐ対応が、部分的に
血液とエネルギーや情報を遮断する場所を作り、守らなければならない重要箇所
となる脳幹の血液とエネルギーや情報を確保する対応手段を講じるのです。


『精神的ストレスの持続からくる脳の酷使が、血液の大量消費とエネルギーや情
報の過度の使用を生んだ』

精神的なストレスの持続は、常に脳を興奮状態にさらします。あれこれと休みな
く考えを巡らし、脳を過度に酷使します。この状態は血液を大量に消費し、エネ
ルギーを浪費し、情報の受容、伝達、処理、反応過程を疲弊させます。また物質
としての血液だけでなく、脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンをも大量に消費し
ます。

この状態が持続する事で、脳内の血液供給とエネルギー供給や情報処理能力が
限界に達してしまったのです。この状態を家庭内の電気の消費に例えますと、もう
これ以上電気を使用すると電力消費量が限界に達して、ブレイカーがシャットダ
ウンしてしまうのです。これを回避するためには、何かの電気器具の使用を一つ
控える事で対処するしかないのです。


『脳の酷使の中でも、脳の機能を疲弊させ、顔面神経を疲弊させたのが心の“我
慢”と心の“つくろい”にある』

よく「顔で笑って、心で泣く」とか「面従腹背(めんじゅうふくはい)」と言う言葉があり
ます。顔の表情は、情けを表わすと書き、心の状態が反映されます。悲しければ
泣き、嬉しければ喜び、怒れば怒り全て表情に素直に表われます。これが順な反
応の出方です。しかし心は悲しいのに顔では笑う、腹の中は煮えくり返る様に怒っ
ているのに顔では服従すると言う行為は、常に自分の心に“我慢”と嘘の“つくろい”
を強要させてしまう事になります。

この心の我慢とつくろいが日常的に持続するということは、心と裏腹な表情を始終、
装う事になります。顔の表情筋は、心のままに順に反応して情けを表わす筋肉です。
これがむりやり脳の指令で自分の意思とは違う反応を強いられる訳です。
この表情筋は脳神経の一部の顔面神経の支配になります。

つまりこの心の素直な反応とは違う、偽りの反応、つくろいの反応、我慢の反応の
持続が脳を疲弊させ、脳神経支配の顔面神経を疲弊させたのです。もうこれ以上
“つくろう”反応はできないという、心の叫びなのです。


『脳が疲弊し、顔面神経の疲弊した事で、これを守り回復させるための対応が顔
面神経麻痺を発生させた』

これ以上、脳を酷使し、顔面神経をも酷使する事が続けば、前述の様に、脳内の
物質(血液、神経伝達物質、脳内ホルモン等)補充、エネルギー(電気)供給、情報
処理に限界が生じ、脳内ブレイカーがシャットダウンしてしまうのです。

また別名“命の座”と言われる、基本的生命維持機構に指令を出す脳幹部に血液
とエネルギーや情報を供給できなくなり、生命維持に支障が生まれるのです。

これを回避する対応が、脳幹部に生命維持のための物質(血液)、エネルギー(電
気)、情報(磁気)を確保するために、表面に当たる顔面から血液とエネルギーや情
報を一時的に遮断する対応をとるのです。また疲弊した顔面神経をしばらく反応
できない状態に置いて、回復を促しているのです。

以上が顔面神経麻痺の根拠と機序になります。全て命を守るための必要な対応
手段になります。


『どう対処したら良いか』

これまで顔面神経麻痺の根拠と機序を詳細に解説しました。この病状の本質と根
拠と機序が明らかになれば、どう対処すべきかは自ずと見えてきます。
大切な事は、顔面神経麻痺の本質を理解して、間違った処置をしない事です。特
に初期の対処を間違えると、治らないばかりか症状を悪化させたり、慢性化して
症状を複雑化させます。またそれ以上に生きている体が必要な対応として脳幹部
に血液を集めたり、顔面神経を休養させているものを薬や手術でとり去ってしまう
と、次なる対応に迫られ、さらに重篤な状態に移行したり、命の危険を伴う事態に
進行する事が十分考えられます。

麻痺させる事で一時的に顔面神経を休息させ、回復を図っているのですから、そ
のまま見守る事が重要です。症状を消す処置をとってはならないのです。

どう対処すれば良いかと言いますと、まずやる事は酷使されている脳を休ませる
事が一番重要になります。もちろんこれまで述べた様に、顔面神経麻痺の真の
原因は精神的なストレスの持続にあり、この精神的なストレスはすぐに解決できる
問題ではありません。しかし脳を休ませる事は可能です。体を横たえる時間を多
くとり(HP、院長の日記内の本気で病気を治すにはの項を参照)、気分転換に積
極的にとり組む事が必要です。

そして肉体的には、生命の仕組みの三態となる「物質、エネルギー、情報」の乱
れを改善する事が不可欠になります(詳細はHP院長の日記内の日本伝承医学の
治効理論の項を参照)。

具体的には、虚血(血液不足)を起こしている脳に新鮮な血液(物質)を供給できる
様にする事と、脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンを補充供給する事です。
また脳の機能を作動させる「エネルギー」となる電気力の低下を補い、「情報」
の受容、伝達、処理、反応を司る磁気量を高める事が求められます。

これにより疲弊した脳の機能を元に戻す事ができるのです。つまりは脳に物質と
しての血液、神経伝達物質、脳内ホルモン量を十分に供給し、低下した電気エネ
ルギーのレベルを上げ、脳の情報の伝達を司る磁気量を正常にする事です。一番
は脳に如何に血液を供給できるかにかかっています。


『上記の方法を合理的に行なえる日本伝承医学の治療法』

日本伝承医学の治療法は、生命力や免疫力の根源となる骨髄機能を発現できる
世界で唯一の治療法になります。骨髄機能を発現させる事で、全ての病気や症
状の背景になっている生命力と免疫力を元に戻します。また骨髄は生命の仕組み
となる「物質、エネルギー、情報」の貯蔵庫に当たり、これらを高める上で一番合理
的な場所になります。

さらに、病気の直接的な要因となる全身の血液の循環・配分・質の乱れに関与す
る肝臓(胆嚢を含む)と心臓の働きを高める事を目的に技術が構築されています。
肝心要となる肝臓と心臓の機能を上げる事で全身の血液の循環・配分・質の乱れ
を修正し、脳の虚血を改善させます。

これら二つの事が達成されれば、どういう疾患に対しても回復に向かわせる事が
できます。そして日本の古代人が開発した顔面神経麻痺のための大腿骨叩打法と
交感神経緊張をとる後頭部擦過や顔面部擦過法が麻痺を回復に向かわせます。

脳は、最も熱をおびやすい所になります。顔面麻痺が起きているときは、脳内に炎
症が起きているので、就寝時の後頭部冷却は毎日しっかり行なうようにしてください。
脳内に血液を供給するためには肝臓冷却も大事です。

家庭療法として推奨している、この頭と肝臓の冷却法が、脳内の熱のこもりをとり、
脳幹の機能を向上させてくれるのです。また肝臓の冷却は、肝臓の熱と腫れを除
去し、肝臓機能を元に戻す効果を生み、表にでている症状を緩和させてくれます。

日本伝承医学では、この様な合理的で統合的な方法により、自然治癒を促進し、
体力を元に戻し、免疫力と生命力を高めていきます。