婦人科不正出血の本質  2016.10.15 有本政治
  

 <出血は止めるのではなく、出し切る事が必要>

日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、正の対応の視点でその本質を解説して
います。しかし現代医学では、一方的に悪の反応として、全てを負の対応として捉え
ています。不正出血の場合、婦人科を受診すれば、子宮筋腫等、様々な病名が付
けられ、出血を止める処置がとられます。しかし止血剤等で出血を封じ込める処置
を施したり、手術をしたり、子宮筋腫等を内視鏡で切除しても、ほとんどの場合が再
発してしまいます。また、こうした処置を繰り返すことにより、体はさらなる重篤な事
態に移行することになります。出血は止めるのではなく、出し切る事が必要なのです。

出血を止めてしまうと熱の排出先を失うため、他の部位に腫瘍等を誘発させ、最終
的には脳腫瘍を発生させていきます。脳に腫瘍を作ってまでも、体は最後まで命を
守ろうとするのです。脳圧を下げ、脳内にこもった余計な熱を排出させるために、
脳に腫瘍を形成させていくのです。このように病気や症状は、正の対応の視点から、
その本質をみていく事で、病気や症状の根拠と機序が見えてきます。これにより正し
い対処法を選択していくことができます。


  <不正出血は毒素や内熱を体外に排出する対応
                 本来は調整出血と呼ぶべきものである >                          

生きている体の起こす全ての症状は、体をより悪くなるように発生しているものでは
ありません。ましてや早く死ぬ方向に導く事は決してありません。逆に何かを元に戻
し、回復に向かわせ、最後の最後まで命を守るために段階的に構築されている対
応手段なのです。体の状態に応じて最善で最適な対応手段を講じてくれているのです。

この視点から生理時の多量出血や、生理時以外の不正出血を捉えてみます。婦人
科の出血は体内や子宮、膣内の毒素や内熱を体外に出す手段になります。婦人科
の出血以外で外に排出させる対応としては、汗、涙、唾液、鼻水、嘔吐、尿や便、
鼻血、下血等が挙げられます。実はこれらの対応と不正出血は同作用があるのです。
この関連を解説する上で、嘔吐と下痢、鼻血を例にとり上げてみます。

嘔吐とは食道や胃の中の物を吐き出す症状です。腐った物や毒物を体内に入れた
場合、いち早く体外に排出する必要が生じます。これを一気に吐き出す手段が嘔
吐になります。悪心が起こり吐き気を催し嘔吐が起こります。また、お酒を飲み過ぎ
て、気持ち悪くなった時に吐く事もありますが、これは未消化物を出し切るまでは、気
持ちの悪さはとれません。全て出し切る必要があるのです。つまり体内に留めては
有害になる毒素をすてたり、命に危険を及ぼすものをいち早く体外に排出する手段
が、吐くという対応になります。下痢も同じ機序による対応手段になります。これは
腸内に留めてはならない物や毒素を排出する手段になります。腹痛を伴う場合が
多いのですが、これも体を守る必要な手段になります。

次に鼻血をとり上げてみます。鼻の中の傷による出血ではなく、所謂”ノボセ”によ
る鼻血は、鼻をいじらなくても突然に起こります。これは何故起きるかと言うと、脳
内に熱がこもり、脳圧が上昇して、これ以上脳圧が上がると危険な状況になった時
に、脳圧と脳内の熱のこもりを抜く対応として発生します。つまり命を守る必要な対
応手段として鼻から出血させているのです。婦人科の出血も、この鼻血と同じように、
脳内の熱のこもりと脳圧の上昇を除去する働きがあります。つまり体内に留めては
ならない物や毒素、脳内の熱のこもり、子宮や卵巣にこもった内熱や毒素、内圧の
上昇を抜く対応になります。出血を通してこれらを体外へ排出させているのです。
体外にすてる事で体に及ぶ害を守っているのです。故に不正出血という呼称は正し
くなく、調整出血と呼ぶべきと、私は考えています。


 <歯の痛みやオデキの時の出血にも内圧を抜く作用がある>

歯の痛みやオデキの疼痛は我慢できない位の症状を伴います。歯の痛みは歯根
部や歯肉に強い炎症や化膿がある場合が殆どです。この場合歯根や歯肉の内部
の内圧が高まり、周囲の神経を刺激して痛みが発生しています。しかしこうした痛み
は、激痛を発生させて、心臓を鼓舞させ、脳内に速やかに血液を集める対応になり
ます。故にむやみに痛み止めを使用してはいけません。歯根部の炎症がひどい場合
は穴が開き、出血することがありますが、これは歯根部まで穴を開け、出血と膿を排
出させることで、脳圧を抜き、脳内と心臓の熱を排出させているのです。
オデキも同様です。オデキの口が開かず腫れ、炎症、内圧がピークの時は激しい疼
痛が生じますが、機が熟すと自然に膿が出て出血してきます。そうすると内圧が一気
に下がり疼痛が自然に収まっていきます。この様に出血させる事で、体は内圧を除去
し、腫れや炎症、化膿を鎮静しているのです。


 <脳貧血や頭痛、めまい等は多量出血が根本的要因ではない>

脳貧血や頭痛、めまいの発生時は、脳に虚血が生起されています。脳に血液不足
(虚血)が起こる原因は、出血多量とその持続が原因でなく、これはあくまで引き金に
すぎません。その前提となる大きな要因として全身の血液の循環・配分・質(赤血球
の連鎖によるドロドロでベタベタな状態)の乱れが既に存在しているのです。

血液の循環が悪くなれば、当然脳への血液供給が遅れ、虚血が生じます。全身の
血液の配分が悪くなると脳への血液配分も乱れ、脳が虚血になります。さらに質の
低下の一因となる赤血球の連鎖により、全身を網羅する毛細血管内の流れに停滞
や詰まりが起これば、これも脳への血流を遅れさせ、脳に虚血を生じさせます。
このような状況が前提にあり、それに大量の出血と出血の持続が発生する事で、
一気に脳の虚血が助長され脳貧血や頭痛、めまいが引き起こされるのです。

故に脳貧血を改善するために増血剤を飲んだり、頭痛やめまいを封じ込める薬を
服用しても、対症療法にすぎず、根本的な解決にはなりません。薬の副作用で、か
えって自律神経のバランスを崩し、症状を重篤化させてしまいます。

多量出血が引き金による脳貧血や頭痛、めまい、全身の倦怠感等を回復に向かわ
せるためには、前提となる全身の血液の循環・配分・質の乱れを整える事が不可欠
です。これは多量出血や不正出血のみならず、全ての病気と症状の直接的な要因と
なっています。


<不正出血を根本的に改善するためにはどうすれば良いか>

ほとんどの病気や症状の根底には、自身は気付かない場合が多いのですが、その
人自身の生命力や免疫力の低下が存在します。不正出血を根本的に改善するため
には、この様に”氷山の一角”に相当する”水面下”に隠れた部分の改善が求めら
れます。つまり局所だけでなく、全体との関連の中で、全体と局所の両面からのアプ
ローチが必要です。

生命力とは細胞新生力に置き換えられます。また免疫力とは白血球を中心とした
血液力に表わし、つまりは造血力に置き換えられます。細胞新生と造血はいずれも
人体の骨髄が担っています。生命力や免疫力を元に戻すためには骨髄機能を発
現させる事が一番有効に作用します。日本伝承医学の治療法は骨髄機能を発現
する事を目的に構築されており、低下した生命力や免疫力を向上させる事ができます。

次に病の直接的な要因となる全身の血液の循環・配分・質の乱れは、内臓の肝臓
(胆嚢を含む)と心臓の機能低下が関与しています。日本伝承医学の施術法は”
肝心要”となる肝臓と心臓を中心に技法が開発されていて、効率よく肝心機能を
改善できます(詳細はHPの日本伝承医学の治療の項を参照)。

さらに局所としての子宮や卵巣の症状の改善は、日本の古代人が開発した婦人科
疾患に著効を示す技法「ふり操法」が大きな効果をもたらします。一回の施術でも
子宮や卵巣の炎症や腫れ、内圧の上昇を改善できる方法になります。

家庭療法として推奨する頭と肝臓の氷冷却法は、脳内の熱と脳圧の上昇をとり、肝
臓の熱と腫れを除去します。また脳貧血や頭痛、めまい、全身の倦怠感等には、
横たわり、頭と肝臓と共に額や首、心臓を真上からの局所冷却が症状を緩和させ
ます。出血量が多いと貧血症状を起こし、倒れたりしやすくなるので、出血が多い時
はできるだけ安静に横たわる事です(後頭部と額と左首の氷冷却を同時に行なう)。
これは緊急時の処置としても大きな効果を発揮します。以上の様な統合的なとり組
みにより、不正出血を改善に向かわせる事ができます。不正出血の本質を理解し、
正しい対処法を選択して頂きたいと思います。