クルム伊達公子選手の負傷の真の原因 2015.8.28 有本政治

日本の女子テニス界を代表する現役テニスプレイヤーである事は、誰もが認める
ところであります。かつて女子テニス界でシングルス世界ランク4位を記録した
事は、皆記憶に留めています。一度現役を引退し、37歳からまた復帰し、現在44
歳、現役最年長で、今だに世界ランク100位以内にいます。飽くなき向上心と未だ
衰えを見せぬ闘争心、卓越した技と戦術、鍛え抜かれた肉体はみるものを感動さ
せます。しかし最近は、度々肉体の故障に悩まされ、それでもコートに立ち続ける
姿は痛々しく感じます。日本の多くのファンが故障のない状態でのプレーを待ち望
んでいます。

伊達選手は、世界を代表するトップアスリートです。故に医療チーム、トレーニン
グコーチ、トレーナー、栄養士の元で体調管理、怪我故障の治療、リハビリ等を
徹底して行なっているものと推察されます。また、伊達選手の気質からすれば、自分
自身もどうすれば故障を防げるか研究し、ありとあらゆる事を実践されていると思
われます。それでも一向に故障は減らず悪化していってる節も見受けられます。
これを打破するためには、これまでとは、違った観点からのアプローチが必要と思
われます。

私は日本伝承医学を提唱し41年になります。その間スポーツトレーナーとして、
多くの運動選手の治療に携わってまいりました。その経験と実績の中から、伊達選
手の故障の真の原因を解説していきます。
伊達選手の故障は、各種関節、様々な筋肉、腱の炎症と多岐にわたっています。
徹底した自己管理と筋力トレーニング、持久トレーニング、スピードトレーニング、
ストレッチ等を課し、また休養もとりながら、どうして疲労性の関節や筋肉の故障が
出るのか、自分でも疑問に感じていることと思います。大きな外傷が加わらなくて、
体の様々な所に炎症が発生してしまいます。実は伊達選手の場合は、休養や筋力
を鍛えて防げる種類の疾患とは違うのです。内臓に起因した、血液の質が絡んで
いるのです。

一番最近の診断名は、股関節の滑液包炎になっています。関節の故障は、外傷性
のものを除いて、痛風、偽痛風、リウマチ、偽リウマチ性の結晶性関節炎と化膿性
関節炎があります。伊達選手の場合は、これまでは偽痛風に近い症状の出方と
思われます。(詳細は、日本伝承医学のホームページ、痛風リウマチ性疾患の本
質を参照)伊達選手の右大転子滑液包炎の場合は今の段階では化膿性のもので
はないですが、何れにしても、滑液包炎は完治の難しい疾患と言われています。
一時的にステロイド剤や抗炎症剤で炎症を鎮めても、根本的な治療とはなり得ず、
再発を繰り返すからです。

滑液包炎の診断がつくという事は、化膿性の関節炎に移行する可能性はあります。
化膿性の関節炎は、ある意味、「敗血症の延長上」と言えるものです。つまりは
血液の質が低下して起こる疾患に属します。現段階で血液検査で指摘を受けるレ
ベルではないと思われますが、血液の質が落ちている事は間違いありません。
また血液の問題は、質だけではなく、全身の血液の循環、配分の乱れも合わせて
もっています。伊達選手の故障の真の原因は実はここに問題があるのです。

この全身の血液の循環、配分、質の乱れから伊達選手の全ての故障は端を発し
ているのです。また過去の体調の全てもこれと関連しています。さらに、自身の生
命力や免疫力の低下、遺伝的な体質と気質とも大きく関わっています。
その中でも、血液の質の低下が最大の理由になります。以下血液の質について
述べます。

血液の質の低下とは、血液の成分もさる事ながら、赤血球同士のくっ付き=連鎖
を意味します。血液が連鎖してベトベトでドロドロの状態で、赤血球がくっ付くことで、
一個一個の赤血球が大きくなり、形もいびつになった状態を言います。命の源で
人体の全ての生理機能を養っている最重要物質である血液が、このような状態に
なっているという事は、血液としての働きを十分に果たせず、組織器官を養う事が
出来ない事を意味します。

また連鎖して大きくなった赤血球は、毛細血管の内径よりも大きくなり、体各部の
隅々にまで血液を送り届ける毛細血管の中の血液の流れに停滞と詰まりを生起さ
せます。これは全身の組織器官に血液の供給を遅らせる大きな要因となります。
血液の質の低下と毛細血管内の流れの停滞及び詰まりの問題だけでも、すでに筋
肉を正常に機能させられないし、養う事ができない事が判明します。これは初期兆
候で、血液不足の筋肉は、スポンジ効果で血液を集めようとして、筋肉に痙攣や引
きつりを起こして対応します。筋疲労や痙攣を起こしやすい人は必ず上記の条件が
背景にあります。

つまり、筋肉をいくら鍛えても、肝心の血液が十分に供給されず、さらに質の悪い
血液であるならば、鍛えた筋肉の力を出せないばかりか、すぐに故障してしまうと
いうことになります。例えれば、恰好良いスポーツカーであっても、燃料供給のパイプ
が詰まり、劣悪なガソリンではスピードは出ないばかりか、すぐにエンジンがストップ
してしまうという事です。

全身の血液の質の低下と毛細血管内の血液の停滞と詰まりを 解説しましたが、
これはまだ一部で、さらに全身の血液循環、配分の乱れの問題が加わります。こ
れらを総合的に捉える事で、伊達選手の故障の真の原因が明らかになってきます。
以下に循環と配分の問題をとり上げます。

全身の血液の循環を担うのは、心臓になります。伊達選手の場合は、体型的には
痩せ型に属します。痩せ型の人は基本的に心臓、肺臓の機能が弱い遺伝的体質を
もっています。さらにやや色黒の皮膚の色をしているので、腎機能も弱い事を表し
ています。本人に何の自覚もなく肉体的に強いように思われますが、基本的な体質
は弱いものをもっていて、生命力や免疫力は低下しやすいタイプです(女性の場合
は、父親の遺伝子を受け継ぎやすいと言われます)。それを強靭な精神力でカバー
しているため、徐々に様々な所に負担がかかってきています。心臓機能が遺伝的に
弱いという事は、血液を隅々まで送る能力に弱りが出やすくなります。つまり、全身
に血液を循環させる力が弱くなります。また腎機能が弱い事は、血液の濾過再生能
力が弱い事であり、悪い古い血が体内をめぐり、血液の質の低下のもう一つの要因
となっています。

全身の血液の配分を乱す要因は何かと言いますと、大量に血液を集め、消費する
場所が体内に存在するためです。それは頭と肝臓になります。これらの臓器器官
は、二つとも中身の詰まった人体内で大きな臓器になります。この二カ所に常に全身
の血液を大量に奪われるために、配分が乱れ、血液が行き渡らない場所が発生して
しまうのです。それが筋肉や関節であれば、上記したように、筋肉や関節の機能を落
とし、炎症を起こしやすくする要因として働きます。頭に虚血が起これば、頭痛を起こし、
子宮に起これば、生理痛や子宮痙攣を引き起こします。ただこれら全ての症状は
悪ではなく、血液不足を補おうとする必要な対応として認識する事が必要です。

以上が、全身の血液の質、循環、配分の乱れの機序となります。ではどうして、
血液の質を低下させ、毛細血管内の血液の流れに停滞と詰まりを起こす、赤血球
の連鎖(くっ付き)が起こり、全身の血液が頭や肝臓に集まるのかを明らかにして
いきます。これらが明確になる事で、修復と予防が可能になるからです。

赤血球の連鎖(くっ付き)は何によって引き起こされるかと言いますと、それは
血液が熱を帯びる事に起因します。熱変性により、生卵の白身が熱により固まる
のと同様に、赤血球同士がくっ付くのです。くっ付いて大きくなったり、形がいびつ
になります。血液が熱を帯びるのは、血液の熱を冷ます働きを担う胆汁(たんじゅう)
が分泌されないからです。胆汁の分泌不足が、赤血球連鎖の根本的な原因になり
ます。

胆汁は成人で1日約600mlから1000ml位分泌されます。その働きは、十二指腸
で脂肪の分解吸収を助ける作用と大腸に於いて便の生成を成すのが現代医学的
な作用です。しかし実は一番大切な働きが見落とされています。
それは胆汁のもつ苦味成分です。苦味には熱を冷ます作用があるのです。「良薬口
に苦し」と言われるように、漢方薬はそのほとんどが苦い成分で構成されています。
別名、”苦寒薬”と言われるように、苦い成分が体の炎症を鎮める抗炎症作用の働
きを果たし、内臓の病気を治してくれるのです。つまり、体内では薬等を使わなくても、
胆嚢(たんのう)から分泌される胆汁が苦寒薬の役割を担い、炎症を鎮め病気になる
のを防いでくれているのです。このように胆汁は、血液の熱を冷まし炎症を防ぐとい
う生命にとって、たいへん重要な働きを任されているのです。

胆汁の分泌が悪くなるのは、肝臓で作られる胆汁の生成力が落ちて、胆嚢内に胆
汁そのものが不足しているのと、胆嚢という袋が熱をもち腫れて、胆汁噴出のた
めの袋の収縮ができなくなっている事が原因になります。元々、肝臓と胆嚢は一体
のもので、”肝胆相照らす”(かんたんあいてらす)の言葉通り、表裏一体(ひょうりい
ったい)の関係になります。肝臓、胆嚢両方とも機能が低下する事で、胆汁の分泌
は減少します。肝胆の機能が低下して、胆汁の生成量が落ち、直接的には胆嚢の
袋が腫れて収縮できず、胆汁の分泌が悪くなっていきます。それでは一番肝心な
肝臓と胆嚢の機能低下が何故起きるのかを解説致します。また頭と肝臓に血液が
大量に集まる機序と心臓の弱りの機序も合わせて説明します。

肝臓と胆嚢の機能低下の最大の要因は、精神的ストレスと自己へのプレッシャー
の持続になります。ストレスやプレッシャーの持続は、常に脳を刺激します。脳の
神経を使い脳を興奮状態に置きます。 この状態は脳の神経伝達物質や脳内
ホルモンを大量に消費する事になります。これらの物質のほとんどは、肝臓で作ら
れ、また肝臓に還って分解されます。この過度の持続が徐々に肝臓の働きを低下
させていったのです。

胆嚢と肝臓とは表裏の関係にあり、肝臓が弱れば胆嚢も弱ってきます。また胆嚢
は、別名”キモ”と呼ばれ、キモっ玉が座っているとか、キモが太い、キモが小さい
等根性、精神性と関わっています。つまり、根性や意欲と一番関わる臓器になりま
す。物事を最後まで諦めずやり抜く精神力と関わっています。目標貫徹能力や強
い意志は、物事を成就する上で必要な気質なのですが、これが強すぎたり、自己を
励まし、勇気付ける気持ちが続き過ぎた場合、やる気と関わる胆嚢に逆に負担が
かかり、内熱を生じさせる結果となるのです。

伊達選手の場合は、その強い精神力と目標貫徹力、自己起励力が徐々に体へ
の負担を蓄積していったのです。(この能力が高いからこそ今の伊達選手がある
事も事実です)特にこの胆嚢を酷使し続け、機能低下させたのです。
以上の機序で肝臓、胆嚢が弱った場合、生きている体がとる対応は、肝臓胆嚢の
働きを守り、元に戻すために、肝臓と胆嚢に大量の血液を集め、熱を発生させる
事で、機能の回復を図るのです。これは必要な対応なのですが、血の固まったよ
うな大きな臓器である肝臓に、大量の血液が集まる事で、全身の血液の配分が大き
く乱される事になるのです。これが全身の血液の配分を乱す要因のひとつに挙げら
れます。

また前述してありますように、精神的ストレスとプレッシャーの持続は、脳内の血液
をも大量に消費します。この状態の持続は、脳へ常に新鮮な血液を供給し続けな
ければなりません。これが頭と肝臓に大量に血液を奪われる理由になります。
以上の状態の持続は、全身の血液配分を大きく乱す要因となったのです。
配分が乱れるという事は、血液が不足する場所が出てきます。その場所に血液を
供給するためには、心臓のポンプを過度に働かせる結果となり、心臓の機能を徐々
に低下させる要因となるのです。遺伝的に心臓の弱い体質の人は、より顕著に現
れます。これにより全身の血液の循環が乱れていったのです。

さらに胆嚢に熱と充血が起きる事は、炎症状態を意味し、胆嚢に腫れを生起させ
ます。すでに詳しく解説してありますように、胆嚢が腫れる事で、袋の収縮が制
限され、胆汁の分泌不足が引き起こされるのです。伊達選手の場合は、物事を最
後まで諦めずやり抜く能力が極めて高いため、胆嚢に負担が生じたのです。年齢
の若い時代は、生命力、免疫力、体力も高く、体に負担とはならなかったのですが、
40代に入れば、誰しもこれは気力だけでは補えなくなってきます。ここ4年間の状況
は、これに該当しています。これが次第に全身の血液の質を低下させる要因となっ
っていったのです。

また熱変性による赤血球の連鎖は、毛細血管の血液の流れに停滞と詰まりを起こ
させ、これを流す対応として心臓のポンプに大きな負担をかける事になります。
これも心臓の機能低下のもう一つの要因となっています。
以上が肝臓、胆嚢の機能低下の根拠と機序になります。また頭と肝臓に大量に血
液が集まる理由と心臓の機能低下の機序になります。これが全身の血液の循環、
配分、質の乱れの根本的な原因になります。その中でも、胆汁の分泌不足から引
き起こされる血液の質の乱れの原因が明らかになりました。

以上の事が、伊達選手の体に起こっていたのです。胆汁の分泌不足による、血液
の熱変性から起こる赤血球の連鎖の問題は、現代医学的にはまだわかっておらず、
誰も指摘できなかったのです。また全身の血液の循環、配分、質の問題も同様で
す。伊達選手が出産を断念された背景には、この問題が存在し、子宮や卵巣に血
液が循環できず、また配分も行き渡らず、血液の質も低下し、毛細血管の詰まり
と停滞が血液の流れを遅らせたのです。これにより子宮や卵巣の機能が出産出来
る環境に至らなかったのです(詳細は日本伝承医学のホームページ、出産はいつ
でも出来る訳ではない、妊娠出産するためにはを参照)。

伊達選手の筋肉、腱、靭帯、関節に起こっている偽痛風性の疾患及び滑液包炎は、
全て赤血球の熱変性と連鎖による肥大化と形の歪化による質の低下があり、また
全身の血液の循環、配分、質の乱れが根本的な原因になります。
具体的な例を挙げれば、筋肉内の血液の質が悪く、また毛細血管の血液に停滞や
詰まりが起これば、筋肉は強い収縮力を発揮出来ず、すぐに疲労し、疲労物質は
貯まりやすくなります。また血液の供給が遅れる事で、組織に血液不足が起こり、
血液を集める対応から、痙攣を起こしスポンジ効果で血液を集めようとします。
故に夜間に筋肉の痙攣が多発します。

当然筋肉の伸展収縮は弱くなるため、筋肉の疲労は早くなります。練習時におい
ては、持久性は維持出来ても、試合に於いては、精神力的なストレスにより、肝
臓と頭に血液がとられるために血液配分が乱れ筋肉に行き渡らなくなるのです。
最近の試合に於いてはこの傾向が顕著に見られるようになっています。
血液が不足する個所は痙攣だけではなく、痛みという信号を発して、心臓機能を
鼓舞して、患部に血液を集めようとします。また炎症を起こして熱と充血や腫れ
を起こして組織の修復を図ります。それでも対応できなくなると、偽痛風や偽リウ
マチ、滑液包炎を発症させたり、関節を化膿させる事で、敗血症や菌血症になるの
を防いでくれているのです。(敗血症や菌血症は細菌感染が原因とされていますが、
これは結果であり原因ではありません。弱っている個所に結果的に菌が繁殖した
のです)。

伊達選手の今の状態は、血液の質の低下がかなり深刻になっており、滑液包炎ま
で進行しています。このまま進行すれば化膿性の滑液包炎になる確率が高くなっ
ていきます。化膿性の滑液包炎になった場合は、細菌を殺す抗生物質投与になり、
何ヶ月かはテニスができない状態になっていくと推測されます。
こういう状態を回避するためには、何を成すべきかは、これまでは解説してきまし
た根拠と機序の中に、明確に示されています。自身はあまり気付いていなくても
加齢にも伴って、生命力や免疫力は確実に低下してきています。

改善していくためには直接的な要因となっている、全身の血液の循環、配分、質の
乱れを整えていく必要があります。特に胆嚢の熱と腫れの除去は不可欠になります。
その上で局所の症状として出ている関節、筋肉、腱、靭帯の治療を入れていきます。
日本伝承医学では骨伝導を応用して、骨髄機能を発現させる事で、細胞新生力と
造血力を蘇生させ低下した生命力や免疫力を高めていきます。そして全身の血液
の循環、配分、質の乱れの元になっている、肝臓(胆嚢も含む)と心臓の機能を元
に戻していきます。肝臓と胆嚢の炎症と腫れをとる、大腿骨叩打法を用いて、腫れ
と熱を除去します。そして胆汁のを分泌を促進する個別操法も使用します。そして
赤血球の連鎖を解消する、大腿骨膝上の叩打法を用いて、連鎖をとり毛細血管
の流れを回復させます。さらに家庭療法として、頭と肝臓(胆嚢も含む)の氷冷却
法をとり入れ、脳の熱のこもりと脳圧の上昇を抑え、肝胆の熱と腫れを除去してい
きます。最重要な事は、如何に早く胆嚢の腫れと熱を除去し、胆嚢が収縮力をとり
戻し、胆汁の分泌を回復出来るかにかかっています。胆汁が正常に分泌されれば、
血液の熱を冷まし、熱変性による赤血球の連鎖が解消されるからです。症状を速
やかに改善していくためにはアイスバッグでの肝臓胆嚢の24時間体制での冷却
も重要です。