地の気としての電気・磁気 2018.5.18. 有本政治

*これは今から約30年前の文章に加筆したものになります

 人間に限らず、あらゆる生物が自然環境の変化に順応する感受性をもってい
るということは、様々な形で立証されています。五感を総動員し、あらゆる方法で
地球と対話し、地球の変化に対応しながら生物は生きているのです。それを最も
よく実践してきたのが人間でした。人間は古代より地球と対話する術を心得てお
り、最も望ましい形で対応してきたのです。しかし、いつの間にか人間はその術
を忘れてしまったようです。地球上の生物全てが「天の気」と「地の気」を受けて
誕生し、生命を営んでいるという大原則をどこかに置き忘れている気がしてなりま
せん。今こそ、その置き忘れた対話術を思い起さなければならない時期に来た
ようです。この項では、「地の気」としての電気・磁気的作用を説明してみたいと
思います。

 まず、地球をとり巻く磁気()の生物への影響を考察してみましょう。カナダの
生物学者V.Jピットマンは、北アメリカの穀物や海草が、常に地球磁場の水平方
向の力と並行して南北面に向きを揃えていることを発見しました。また、ある穀
物の場合、種子の芽を磁石の北に向けると発芽を促進できることを発見しています。

 アメリカ・コロラド州の研究者H.Lコックスは、磁気を帯びた鉄鉱石(磁鉄鉱)を混
ぜた土で植物を育てると成長が劇的に促進されることを確認しています。フラン
ク・ブラウンのじゃが芋を使った実験によれば、月が昇り、頭上を通過し、沈む時
にじゃが芋の代謝データが変化することがわかりました。そして太陰月、太陰日
の磁場変動に敏感に反応することが判明したのです。マサチューセッツ大学の
R.Pブラックモアは、最も単純な細胞からなるバクテリアも常に南北方向を向くこ
とを発見し、外部からの磁石の力にも反応することを確認しています(走磁性細菌)

また蜂やツバメ、鯨、サケ、イルカなども磁気感覚を備えていることが知られて
います。体内に小さな磁気結晶をもっており、鉱物の一つ一つが薄い膜に包ま
れているので、磁石のように地球磁場に反応し、方向を読みとることができるの
です。その中でも、ツバメの帰巣精度は驚嘆に値します。人類が開発した最新の
電磁誘導システム(ミサイル、ナビシステム)よりも、はるかに正確にほとんど誤
差なく磁気情報を探知します。昨年、巣立った巣に寸分違わず、帰巣できるので
す。これは、大気中や大地の微細な磁気を探知し、誘導できるシステムを体内に
備えている証拠です。

 こうした機能は、人体にも備わっていることはいうまでもありません。電気()
磁気()が人体のあらゆる生理機能に影響を与えていることは、現代生理学で
も立証されています。前項でも述べてあるように、人体中の松果体(脳にある器
)は、0.30.5ガウス程度の地球の磁気場の変化によってホルモンの分泌量
を変化させることが知られています。それらのホルモンは、人体の主要な生命活
動のコントロールを司り、精神活動とも深く関わり、様々な形で神経系の活動を
左右します。

 また、電気・磁気は細胞の生命活動すらも左右するといわれています。ノーベ
ル賞受賞者アルバート・セントジュルジは、「細胞は電気()、磁気()を利用
する高度で複雑な生命体で、細胞膜は半導体の作用をする」と主張しています。
電場、磁場の状況に応じて、細胞の活動を生起したり、停止したり細胞の分割率
をも左右することがあると説明しています。アメリカの整形外科医R.Oベッカーは、
「人体のあらゆる組織、器官は、様々な種類の電荷を生むか帯電している」とい
うデータを発表し、骨折の治療や手足の再生に電気()・磁気()を与えて「場」
の環境の変化を利用する技術を開発できないか、問題を投げかけて話題を呼ん
でいます。

 実際に骨折治療に関しては、「骨」のもつピエゾ(圧電)効果を利用して骨に人
為的に「圧」をかけて、骨の表裏に電荷を発生させることにより、骨の増殖が著し
く早まり、骨折の治癒期間を飛躍的に短縮させることができるのです。逆に骨に
電気を流すことで、骨に振動が起こり、この振動が骨の生理活動に変化を生じさ
せ、これも骨折の治癒率を高めるということも立証されています。

また電荷(イオン)が、場の環境を左右する問題があげられます。空気中のイオン
が、大量に反応することによって人体の生命活動に重大な変化を与えるという
環境内の電気効果です。イオンとは、電子を失ったり、獲得したり、帯電状態に
ある原子または分子のことを指しています。

 マイナスイオンは、人間などの動物の代謝活動を活発にして生理状態を良好に
保ち、精神をも安定させます。逆にプラスイオンは、人体内の生理活動を停滞さ
せ、精神的にもうつ状態にさせ、疲労感を強め、病気につながる要因として働き
ます。マイナスイオンは、海辺の波や滝など水流のもみ合う場所に発生し、緑の
多い場所や山の空気に多く含まれます。大変興味深いことに、古い神社の境内
はマイナスイオンの宝庫なのです。最近では、「木炭」や「鉱物」がマイナスイオン
発生装置として活用されています。これに対し、プラスイオンは、空気を揉む台風
や季節外れの季節風などによって発生し、人の多い場所、満員電車の中、締め
切った部屋に充満しやすいといわれています。

 このように、「地の気」としての電気・磁気の人体への作用は、生命活動そのも
のを左右する重大なファクターとして私たちに働きかけているのです。

このことを、実は私たちの祖先である縄文古代人はすでに知り得ていて、見事に
活用していたという事実が最近の研究で明らかになりつつあります。縄文古代
人は、地球と対話する術を心得ており、地球と人体を同じ生命をもっている生命
体として捉え、「地の気」の活用法を知り得ていたのでしょう。

 日本の古代人は、人体に有効な「地の気」を発生させる場所を「癒(いや)しろ
(イヤシロチ)」と呼び、その反対を「気枯れ(けがれ)(ケガレチ)」と称していま
す。環境内の電気効果の高い場所を「癒しろ地(イヤシロチ)」と呼び、地表の電
位密度も高く還元電圧値になっています。縄文古代人は、このような場所を選択
してそこに祭祀場を建立したり、住居として利用しています。そういう場所はマイ
ナスイオンが多く樹木の育成もよく、そこにいるだけで人体の代謝活動を活発に
し、精神を安定させ、病気治しにつながることを知り得ていたのです。また、その
ための特殊な装置としての“生体活性装置”を作り出したり、山の頂上に築いて
いたと思われる形跡が日本各地の縄文遺跡から発見されています。驚くべきこ
とに、縄文時代の住居には、人為的にマイナスイオン発生装置としての木炭と陶
磁器の破片を混ぜ合わせた「土」を「床」に敷き詰めていたのです。

 縄文の土器は、土を特別に吟味し、制作技術面でも秘儀に属する特別な工夫
が施されています。実験により明らかになったことですが、素焼きの土器に水を
入れた場合、常識的に見れば水はじわじわと外に染み出て、ついには空っぽに
なってしまいますが、縄文土器は一滴たりとも漏れることはないのです。現代の
陶磁器は、ウワ薬を使用することで水漏れを防いでいるのですが、縄文土器の
場合それを使っていません。それでも水は漏れないのです。

ある素材開発技術者の実験によれば、材料となる土に対して、ある割合で火
山灰を混ぜ瞬間的に超高圧の人工プラズマをかけるとガラス結晶質ができ上が
り、土粒と土粒の間にできる穴を塞いでしまうのだそうです。これが縄文土器の
水漏れしない理由なのです。水漏れがしないだけではなく、焼き入れを施された
土は微弱な電気磁気波を放つ「磁性体」となるのです。それが土器の内部に保
存される食料を腐らせなくしたり、水が磁気水としての不思議な力を発揮する理
由なのです。肉眼には見えない「神の力」とはそういうものなのかも知れません。

 また、縄文古代人は方位に関しても重大な神の力を知り得ていたようです。

神社の鳥居を南北に合致させたり、死人を埋葬するのに「北枕」を使用しました。
これは、地の気としての磁気場が南北に流れていることを知り得ていたし、その
エネルギーによって死者を蘇らせたり、病気治しの為のエネルギーの供給をより
よく受ける方位でもあったのです。縄文古代人は、神の力としての「地の気」を、
電気・磁気的エネルギーとして見事に活用していたのです。

 このように、「地の気」としての電気・磁気的極性のバランスをとる方法を古代
人は構築していたのです。古代人の伝えた「地の気」を、電気・磁気的解釈によ
り考察することで、古代人の生命観・人体観がより具体的に見えてきました。
このことは、天の気・地の気を妨害された現代文明社会で暮らす現代人が生命
力や健康レベルを大きく低下させることを意味します。これを防ぎ、生命力を高め、
健康レベルを上げる方法を日本の古代人は技術として残してくれていたのです。

 つまり、天の気・地の気を合理的にとり込み人体内の「電気・磁気的極性」のバ
ランスをとっていくことなのです。電気・磁気的バランスを失った人体をどうすれば
元に戻すことができるのか、その答えは古代日本人の生命観・人体観の中に
見出せるのです。日本伝承医学の技術はまさにこの延長上に存在し、「アマウツ
シ」の技法として伝えてくれています。その技法を研究し、知れば知るほど、その
高度な生命への解析力には驚かされます。

生命とは何か、生命はどうやって生まれるのか、生命を成り立たせている仕組
みや要素は何なのかを明確に示してくれています。この根拠と機序が明らかに
なれば、低下した生命力を元に戻す方法が構築できるのです。天の気・地の気
としての電気・磁気を含めて人体生命は、電気をエネルギーとし、磁気を情報とし
て生命を営んでいるのです。命を蘇生し、病気を回復させるためには、天の気・
地の気としての電気・磁気を十分に人体にとり込み、人体内の電気・磁気の過
不足を調整することが不可欠となります。これを可能にするのが、日本伝承医学
の技法なのです。古代日本人の開発した「アマウツシの技法」を現代に復活させ
る時期に来たようです。