指の関節の強張りやバネ指はどうして起きるのか、
その本質と対処法
 
2017.5.24. 有本政治


昨今、指の関節の強張りやバネ指で悩まれる方が増えています。その原因として
様々な要因があげられていますが、どれも一面の真理はあるものの、本質が的
確に捉えられていないのが現状になります。その証拠に原因が確定していれば、
治療法もあり、改善するはずですが、その成果は思わしくなく、再発を繰り返し、
遂には手術に移行する人が増えています。また手術しても結果はあまりかんば
しくなく、予後に苦しむ方が多くいます。これはこの病気の本質が正しく捉えきれ
ていないからです。以下、日本伝承医学的に本質を解明し、対処法を解説して
いきます。


『生きている体の示す反応には全て意味がある』

日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、一方的な“負”の対応ではなく、“正”
の対応として捉えています。正の対応と捉えることで、その病の根拠と機序が明
らかになり、本質が示され、対処法も自ずと見えてきます。
日本伝承医学が首尾一貫して主張している「生命の法則」に則った観点で、指の
強張りやバネ指の症状を正の対応として捉え直す必要があるのです。

生命の法則を要約すると以下になります。全ての生物は、その個体の生命の維
持とその生命体の「種の保存」を目的に生きています。自らを滅ぼすために存在
する生命体などひとつもありません。従って体の組織器官や機能は、個体生命の
維持や種の保存という目的に合致する様にできています。これが生体の「合目的
性」です。簡単に言えば、体には病気や危険を避け、自らの健康を守り、生命を
維持するための対応力が幾重にも完璧に備わっているのです。

例えば、毒を飲み込めば、即座に吐いたり、下したり、また自然に解毒作用が働
きます。外部から細菌やウイルスが入ってくれば、各種の免疫物質や免疫細胞を
駆使して細菌やウイルスに対抗します。さらに体内に死に至る様な病原菌が発生
しない様に、あらゆる手段を講じてこれを排除したり、発生しない環境を整えます。

つまり、生物の示す全ての反応は、自らの体をより悪くなる方向にしたり、ましてや
早く死ぬ方向に導くことは決してありません。全て意味があって起こしています。
その意味とは最後の最後まで自らの命を守り抜くように、“対応”として全ての症
状を表わしているのです。今回のテーマの指の関節を強張らせるのも、バネ指を
呈するのも全て意味があって起きています。

生きている体の示す対応は、そこまでやるかという、正に人智を超えた驚きの対
応を表わします。指を強張らせ、バネ指を呈することで何かの循環を確保しようと
するのです。以下解説していきます。


『指の強張りやバネ指は整形外科的な疾患でないーー関節リウマチの前駆症状』

結論的に言えば、指の強張りやバネ指は整形外科的な疾患ではありません。
いわゆる使いすぎによる腱鞘炎や関節や筋肉、靭帯の炎症とは違う疾患になり
ます。まずこの理解が必要です。この症状は「関節リウマチ」の前兆として現われ
る疾患になるのです。

関節リウマチは、血液の質が低下して起きる難病指定の難しい疾患です。
身体各部の関節に炎症や疼痛、運動障害、関節の固着や変形をもたらします。
つまり、リウマチや痛風の分類は、整形外科的な疾患ではなく、血液の病気の範
疇に入ります。

関節リウマチの診断は血液検査で特定物質の数値を見て診断されますが、指の
強張りやバネ指の段階では、血液検査に数値の異常は現われません。謂わば指
の強張りやバネ指の段階は関節リウマチの前駆症状として現われる症状になります。


『指の強張りやバネ指が何を守る対応なのかを知るためには、関節リウマチの
手指のくの字変形の意味を知る必要がある』

指の強張りやバネ指は、関節リウマチの関節の固着の前段階の対応になります。
前項で指の強張りやバネ指が関節リウマチの前駆症状という解説をしました。
関節リウマチの症状の代表的な現われ方は、手指の関節の腫れと炎症、疼痛、
関節の固着等です。その中で、特に問題になるのが関節の固着です。関節リウ
マチの人の手指は関節が固着して、曲げたり伸ばしたりができなくなり、「く」の字
を呈して固まります。これは不可逆性の変性で、関節運動ができなくなります。

この状態は生活上、不自由をもたらしますが、血液の循環を守り、ひいては命を
優先させる上では、関節の固着が必要なのです。関節が「く」の字型を呈する事
で関節周辺の毛細血管内の血液の流れを強く早くする対応をとっているのです。

この対応をわかりやすく解説するために以下の例を挙げます。
柔らかいゴムホースの中を流れる水の流れに例えれば、真っ直ぐなゴムホース
の中を流れていた水が、ゴムホースがくの字に曲がると折れた部分は扁平に狭
くなります。菅が折れて扁平に細くなるという事は、その場所の水の流れは強く
速くなります。水ホースの口をすぼめれば、水が勢いよく飛ぶのと同じ原理です。

生きている体は、あらゆる手段を駆使して何かを守ろうとします。関節リウマチの
手指のくの字型変形は、毛細血管内の血液の循環を守る最終対応の姿なの
です。血液が停滞して流れなくなれば、最終的には壊死を起こします。水の淀み
に細菌やぼうふらが湧くように、血液の流れが停滞したところには、細菌やウイル
スが発生し、菌血症や敗血症を起こし、瞬く間に命の危険にさらされます。

これを守る対応が手指のくの字変形の本質になります。正に「流水腐らず」の例
え通りです。命を守るためには、体はここまでやるのです。関節リウマチの他の症
状である異常な熱や腫れ、激しい痛みも、局所の分子運動を活発にして細胞運動
を活性化させ、高熱や内圧を高めることで、血液の停滞と詰まりを流す対応を
とっていきます(詳細はホームページ、院長の日記、痛風リウマチ性疾患の本質
の項を参照ください)。

手指の強張りやバネ指は、この前段階の血液の循環を守る対応になるのです。


『手指の強張りやバネ指の段階的機序について』

手指の強張りを一番自覚するのが、朝の目覚めの時です。初期の頃は手指が
むくんだような感覚が生じ、次第に手指関節を曲げ伸ばしすると強張りを感じる
様になります。この段階では特に大きな痛みはなく、自覚症状も毎日ではなく良い
日と悪い日が現われます。その症状も朝の短い時間に限られ、手指を動かして
いるといつの間にか消失します。

この様な状況からスタートし、自分では気付かない場合がほとんどですが、次第
に指の第二関節が太く肥厚してきます。そして毎朝起きがけに指関節が腫ぼった
い様な感覚が生じてきます。指を屈伸するとやや腫れぼったさと動きのスムース
さが失われていきます。そして次第に強張りを感じる様になります。

この段階になると、指を意識する様になり、意識的に関節の屈伸を繰り返し動き
を出そうとします。強く握っては伸ばすという動作を繰り返すうちに、次第に動く
様になってきます。ただまだこの段階では朝の短い時間だけの症状で、起きて活
動している時は自覚は消失します。

次の段階に入ると、日中も腫れぼったさと動きの悪さが現われます。そして次第
にバネ指(弾発指)に移行してきます。バネ指は、関節を曲げて、伸ばそうとして
も固まって動かず、意識的に強く勢いよく伸ばす事でやっとカキンという感じで
伸ばせる様になります。これも次第に自力では動かせなくなり、もう一方の手で
引き伸ばしの補助をしないと指が伸ばせない段階に入ります。この段階では、カ
キンと伸ばす時に痛みも発生してきます。

最初に強張りやバネ指が生じるのは、左右とも示指、中指、薬指が多く、次第に
全部の第二関節に移行していきます。


『手指の強張りとバネ指は、関節を意識させ、関節に強い圧をかける事で血液を
流す対応』

指の強張りとバネ指の段階的な機序を解説しました。これが体にとってどういう
対応になるかと言いますと、指関節に腫れぼったさや強張りを自覚させる事で、
これを回避するためには関節に強い屈伸力をかける事になります。この関節にか
かる強い圧が、関節周辺や関節内の毛細血管に停滞したり詰まったりしている血
液を流す対応になるのです。バネ指の場合はもっと強い屈伸力と圧がかかること
で、関節周辺や関節内の血液の流れと関節内の滑液の流れも同時解消する対
応になります。

この様に、関節の強張りやバネ指は、関節周辺や関節内に停滞した血液や関
節液を流す対応手段として体に作用させ、血液の循環を守り壊死や血液の毒や
細菌の発生を防ぐ働きを担っています。また体への異常を知らせる警告サイン
という側面も担っているのです。


『関節周辺や関節内の毛細血管に何故血液が停滞したり詰まったりするのか』

毛細血管に詰まりや停滞を引き起こす要因は、血液成分の赤血球の連鎖と変形
によります。人体の毛細血管の細い部分の内径は、赤血球の直径よりも細いの
ですが、赤血球がパラシュート型に変形する事で充分に通過することができる様
になっています。しかし赤血球同士がくっ付いたり(連鎖)、本来の形が崩れる事
で、パラシュート型に変形できず、これが毛細血管に詰まりや停滞を引き起こす
のです。

また、心臓のポンプ力が弱ったり(遺伝的に弱い人)、血圧が低いと血液を流す力
が弱くなり、毛細血管に停滞が起きやすくなります。上記の赤血球の連鎖と変形
にこれが加わることで、毛細血管に停滞とつまりが発生します。


『赤血球の連鎖と変形は何故起きるのか』

血液成分の98%を占める赤血球の連鎖と変形は、血液が熱を帯びる事による熱
変性が原因です。例えれば、卵の白身が熱が加わることで白く固まるのと同じ原
理になります。血液が熱をもつことで、熱変性が生じ、赤血球同士がくっ付いた
り、形の変形が生起されるのです。


『血液が熱を帯びるのは何故か』

体内の血液の温度を一定に保つ働きを担っているのは、胆嚢から分泌される
苦い成分の”胆汁”になります。「良薬口に苦し」と言われる様に、漢方薬の薬効
は”苦味”の成分にあります。漢方薬の苦い成分によって、体内の組織器官の炎
症を鎮め、病を治癒に向かわせるのです。この様に苦い成分には熱を冷ます効
果があるのです。

人体はそのほとんどが液体成分で構成されており、この体液の温度を一定に保
つために、苦い胆汁成分が体液(血液、全ての体液)の温度を冷まし、温度上昇
を抑え、温度を一定に保っているのです。特に人間の体は恒温動物と言われ、
体内の温度が36度5分近傍に保たれる事で、全ての生理機能が円滑に働く様に
設定されています。この役割を胆嚢から分泌される胆汁が担っているのです。

この様な重要な役割を果たすことから、胆汁は1日に約600mlから1000ml位分泌
されて、生命維持に大きく貢献しているのです。故にむやみに胆嚢を摘出する事
は命を縮める事につながるのです。
この胆汁の分泌が滞ると、血液が熱を帯びてくるのです。そして前項で解説した様
に、血液が熱を帯びる事で、熱変性が生じ、赤血球の連鎖と変形が生起されてし
まうのです。


『胆汁の分泌が減退するのはどうしてか』

胆汁は胆嚢という袋から、袋が収縮する事で胆管を通って十二指腸に噴出され
ています。胆汁の噴出が減退するのは、胆嚢という袋が、炎症によって腫れ、
収縮できない状況にあるからです。

胆嚢が腫れるのは、機能低下した臓器を元に戻す対応として、胆嚢を充血させ、
炎症と腫れを一時的に発生させるためです。これは命にとって必要な対応なの
ですが、一時的に胆汁の分泌を減少させる事になります。

また胆汁は肝臓で作られ、胆嚢に蓄えられ、濃度を濃くして苦い物質になります。
大元の肝臓の機能が低下すると、胆汁を作り出す作用が減退し、胆汁不足を生起
します。この二つの要因によって胆汁不足が起きるのです。


『肝臓や胆嚢の機能低下はどうして起きるのか』

「肝胆相照らす(かんたんあいてらす)」ということば通り、肝臓と胆嚢は表裏一体
の臓器になります。レバーと言われ、血を固めたような大きな臓器である肝臓と
胆嚢は”肝っ玉”(きもったま)と言われるように、精神面と結びついた臓器であり
ます。

肝が大きいとか小さいとか、肝がすわっているとか、肝を冷やすと表現される様
に心理面との関わりが深く、いわゆる精神的なストレスの影響を一番受ける臓器
になります。そして精神的なストレスの持続は、肝臓の働きに負担をかけ、肝臓
の機能を低下させる最大要因となるのです。肝胆相照らすの関係で胆嚢も同様
に機能低下します。


『肝臓と胆嚢の機能低下は、全身の血液の配分と血液の質(赤血球の連鎖と変形)
を大きく乱す』

肝臓と胆嚢の機能低下を元に戻す対応として、肝臓胆嚢に血液を集め、炎症(熱
と腫れ)を起こさせる事で、機能の回復を図ります。この場合、血の固まった様な
大きな臓器に大量の血液が導入される事で、全身の血液の配分が大きく乱され
ます。これは、体内に血液が不足する場所が出ることを意味します。命の源とな
る血液が不足したり、滞る場所に病気が発生するのです。

また、胆汁の分泌不足は赤血球の連鎖と変形を生起し、血液の質を低下させます。
血液の質が低下するという事は、例えれば粗悪なガソリンで車を走らせる事と同
じです。この状態が続けば必ず不完全燃焼による有毒ガスの発生と、エンジンの
オーバーヒート、排気管の詰まりは必然です。そして車そのものが壊れてしまいます。

このように、血液の質の低下は、血液組織の破壊を意味し、リウマチや膠原病に
代表される血液疾患を引き起こし、今回のテーマとなる手指の強張りやバネ指の
原因となるのです。さらに重篤な疾患を招く最大要因となるのです。


『血液の質の低下は生命力や免疫力が大きく衰えた証明ーーー手指の強張りや
バネ指もその延長上にある』

手指関節の強張りやバネ指は、手指関節の周辺や関節内の毛細血管の詰まり
や停滞を意識させ、関節に強い屈伸圧力をかけることで、これを流す対応として
発生しています。

この背景には、生きる上で一番重要な血液の質の低下が隠されていたのです。
故に手指の強張りやバネ指は、単なる局所の関節の炎症という問題ではなく、
体の弱りを表わす危険信号であり、警告サインであるのです。

この認識に基づき、早急に血液の質を元に戻す処置を講じる必要があるのです。
体はその事を我々に教えているのです。故にこの警告サインと症状を単純にステ
ロイド剤等で消し去ったり、安易な手術等で封じ込めてはならないのです。この症
状は、そのような処置で良くなる様な単純な疾患ではないからです。当然徐々に
関節リウマチに移行する事は必然です。そして、次第にステロイド剤が効かなくな
り、新たな生物製剤が導入される事で、ますます体の免疫力を低下させ、各種の
感染症のリスクを高め、遂にはさらに重篤な病気を併発していくこととなるのです。


『どう対処するか』

これまで手指の強張りやバネ指の根拠と機序を詳細に解説してきました。根拠と
機序が示されているという事は、どう対処すれば良いかのの答えは既に出ていま
す。

低下した血液の質を元に戻す事が不可欠になります。そして局所の手指関節をと
り巻く筋肉、靱帯、腱の硬直を解き、関節液の循環も改善する必要があります。
この両面からのアプローチが必要です。血液の質を元にもどすためには、肝臓
と胆嚢の機能を高め、特に胆汁の生成力を元に戻し、直接的には胆嚢の腫れを
とり、胆嚢が収縮できる様にする事です。

肝臓の充血がとれる事で、全身の血液の配分が修正され、胆汁の生成と分泌が
回復する事で血液の質が整ってきます。これに加えて全身の血液の循環を担う
心臓のポンプ力を高めれば、全身の血液の循環・配分・質の全ての乱れを修復
する事ができ、毛細血管に詰まりや停滞が生じなくなります。
つまり、「肝心要」(かんじんかなめ)と言われる肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を
修復すれば、全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖と変形)の全てを整える
事ができるのです。これらを全て達成することができるのが日本伝承医学の治療
になります。


『日本伝承医学の治療が目指すもの』

日本伝承医学の治療は、細胞新生と造血を行なう骨髄の機能を発現する目的で
構築されています。骨髄機能が発現する事で、生命力(細胞新生)と免疫力(造血力)
が高められます。

内臓的には肝心要を整える事を目的にした技術で、全身の血液の循環・配分・質
の乱れが修復できます。また古代人が発見開発した、血液の質を高める技法(リウ
マチの操法)としての大腿骨の前面の叩打法が効果を発揮します。

そして手首や手指の痛みをとる個別の操法で局所の治療を行ないます。
さらに家庭療法として推奨する頭と肝臓の氷冷却法が脳内の熱のこもりと肝胆の
炎症を鎮めるのに効果を発揮します。この様な統合的な治療で指関節の強張り
やバネ指に対処する事ができるのです。


『リハビリテーション及び予防法について』

@おはじき運動

「昔の遊び」のおはじき(指はじき)運動を全指に行ないます。手指の骨に心地良いひ
びきが入ることを意識して、指をはじきます。湯ぶねにつかりながら、水をはじくよう
に行なうと、水圧がかかるのでより効果的です。一日に何回行なっても良い運動に
なります。リハビリと予防法との両方に使用できます。

A温冷法

毎日の入浴時につぶ氷を何個か用意し、患部の関節周囲をくるくる回し溶かしながら、
アイスマッサージを行ないます。次に「湯」につけて温めます。冷と温を交互に繰り返し
ます。これを3セット行ない、最後は冷却して終了します。入浴時以外でも氷とお湯(蒸し
タオル)があれば、どこでも可能です。