フィギュアスケートの浅田真央選手の膝の故障と
左下肢筋力低下の原因
           2016.3.9. 有本政治


これまで多くのスポーツ選手の怪我や故障の真の原因について言及してきましたが、
今回は日本の国民的アイドルというべきフィギュア界の、浅田真央選手の膝の故障
について、その根本的な要因を解説いたします。

日本国中の人が浅田真央選手の復活を祈っていますが、中々、完全復活が厳しい
状況です。休養とあらゆる治療、リハビリ、筋力トレーニングを徹底的にやっても、
状況は思わしくありません。これはどうしてなのか、日本伝承医学的にその根拠と
機序を解説していきます。

私は今年で臨床歴44年目を迎え、その間スポーツトレーナーとして、ソウル五輪
も経験し、長くスポーツ界に関わってきました。その経験の中から得られた持論と
して、スポーツにおける選手の怪我や故障は起こるべくして起こっていて、不可抗
力なものは全体の2割というものです(詳細はホームページ院長の日記、スポーツ
界の怪我と故障の本質の項を参照ください)。

浅田選手は現在26歳です。女子フィギュア界においてはベテランの領域になりま
すが、まだまだ二十代後半に入ったばかりで、一般的には加齢による衰えを感じ
る年齢ではないと思われます。しかし浅田選手の体質からすると肉体的な衰えが
出てきても不思議ではないのです。人それぞれ、生まれもった遺伝的な体質という
ものがあります。この浅田選手の遺伝的な体質が今回の故障には関係してい
るのです。浅田選手の左膝の故障と左下肢の筋力低下は起こるべくして起きてい
るのです。以下詳細に述べていきます。


『遺伝的な体質の弱さが原因で、姿勢に“ねじれ”のゆがみと胸の突出姿勢を
 作り出す』

浅田選手の手足の長い細い体型、顔の小ささ、顎の細さという特徴から、彼女の
遺伝的体質は心臓と肺臓の弱い、いわゆる「心肺機能低下体質」に分類できます。
この体質の人の姿勢的な特徴は、上体が右にねじれ、上部胸椎が直線的になり、
胸の胸骨が前方に突出する体型になりやすい事です。それを裏付けるように、浅
田選手は小学生の頃より、スカートを履いて歩いていると、スカートが自然に右に
回ってしまうのです。日本伝承医学の理論上、間違いなく右にずれていくタイプなの
です。

これはどうしてかと言うと、遺伝的に心臓と肺の弱い人は、特に心臓の機能を無意
識に高めるように体が対応するのです。心臓は胸の肋骨の籠の中に格納されてい
ます。位置的には胸骨の下で、やや左寄りになります。心臓の形は御存じのように、
裾のすぼまったハート型(円錐状)をしていて、大きさは人の握りこぶし大です。
心臓はこの大きさで、死の瞬間まで一時も休む事なく、全身に血液を供給し続けて
くれる偉大なポンプ装置です。そのため実に精妙に、巧妙に合理的に作られてい
ます。

実はこの心臓は、内臓の中で唯一ねじられた形をした臓器になります。この理由は、
心筋を収縮させて血液を噴出する場合に、雑巾を絞るように心筋を絞ることでポ
ンプの収縮効率を上げて噴出力を高める役割があるからです。また四つ足動物
から二足直立に移行する事で、狭くなった胸郭部に、コンパクトに収納する目的の
ためにねじられているのです。そのために心臓を上部から見て、右側に一ひねりし
た形で胸郭部に格納されています。

遺伝的に心臓の弱い体質の人は、どうしても心臓に負担がかかり、心臓のポンプ
力に低下が起きやすくなります。人体はこれを回避する対応として、心臓ポンプ
の収縮を助ける対応をとる事になります。

この対応が、元々噴出力を高めるために、右にねじられた存在の心臓を、より強
くねじって噴出力を助けるために、人体の上体の姿勢を右にねじって、よりねじ
れを強くする対応をとっていきます。また心臓は血液噴出のための心筋収縮を、
心臓下部の円錐にすぼまった二つの「心室」に置いています。この円錐状の形を
した心室の心筋収縮を助けるために上部胸椎(胸椎の3番、4番、5番)を前方に突
出させて、胸骨とはさみ込む事で心室を圧迫し、心筋の収縮を助ける対応をとるの
です。

これが人体の上体に右ねじれのゆがみと胸の突出姿勢を作り出すのです。縦長
な構造の人体が右側にねじられるという事は、当然骨盤部も右にねじれ、女性の
場合はスカートが右へ右へと回転する事になるのです。また胸を突き出すという事
は、本来上部胸椎は後弯といって後方に湾曲するのが生理的ですが、それが直
線的やあるいは凹んだ形状になるのです。


『全体の姿勢の右ねじれと胸の突出姿勢の影響が、左骨盤から左股関節、左膝関
節、左足関節と及び、左臀部の筋肉、左膝の関節や半月板、筋肉、腱、靭帯故障
の原因』

姿勢の右ねじれのゆがみは、当然縦長な構造の人体の下肢に影響を及ぼします。
まず体幹部の骨盤と関節する股関節の大腿骨骨頭の位置異常が起こり、その流
れは左膝にねじれの応力を起こし、地面に接する足関節まで及びます。特に地面
に接する足関節と股関節の中間に位置する膝関節にねじれの応力が集中する事
になるのです(詳細はHP、「人体バナナ理論」を参照ください)

膝関節がねじられた状態で飛んだり跳ねたり、着地する事を繰り返す事は、次第
に膝関節を構成する筋肉、腱、靭帯、半月板に異常な負荷を生みます。これが左
膝の故障につながったのです。スポーツ選手で左膝に故障が発生する人のほと
んどが、浅田選手と同じ様に右ねじれのゆがみをもった人になります。当然左膝
だけではなく、股関節や足関節にも故障が発生しやすくなります。特に左足関節が
ガクガクと緩み、内反捻挫をしやすくなります(これは心臓の弱い人の特徴でもあり
ます)。

また胸の突出姿勢の影響は、左の臀部に座骨神経痛性の痛みと臀筋の弱りを生
起させます。これは胸椎3番と5番の椎骨の位置異常と不可動が起こる事で、腰痛
の座骨神経痛性の”関連痛”の症状を発生させ、左臀部に痛みが放散するのです。
痛みと同時に臀筋の筋拘縮を生み、臀筋の弱りを作り出します(座骨神経痛の”
関連痛”は、整形外科本のカリエ博士の痛みシリーズ参照ください)。

また左胸椎の3番と5番と左肩甲骨の間は、肺と心臓の反応の発現する場所で、
ここにコリ感や痛みを自覚する事が多いのです。東洋医学のツボ(経穴)としては
胸椎3番の横は肺の反応が表われる”肺兪”というツボがあります。また胸椎の5番
の横は、心臓の反応の表われる”心兪”というツボに相当します。まさに心肺機能
の弱さが体表に表われる場所です。

さらに肺と心臓の弱りは、左の肩甲間部にコリや痛みを出すだけでなく、東洋医学
の“経絡”(共通するツボをつないだ線上の反応場所)や“経穴”(内臓の反応が体表
に表われる点)の相関関係から、肺と心臓が弱い人は肺経ーー膀胱経、心経ーー膀
胱経という関係から、東洋医学の膀胱経上に反応が出る事になります。膀胱経とい
う線上の反応場所は背部全面から臀部を通り、大腿部後面から下腿後面を通って
います。故に左背部から左臀部、大腿部後面、下腿筋後面全体にコリと痛み、筋肉
のけいれん等を表わしやすくなります。また、下肢後面全体の筋肉硬縮は筋肉の収
縮力を低下させ、下肢全体の筋力低下をもたらします。特に左臀部に座骨神経性の
痛みと臀筋の弱りが出ます。これが浅田選手の左下半身の弱りの最大要因となる
のです

正に現代医学の整形外科的な腰痛の「関連痛」と東洋医学の「経絡相関」が合致す
る症状になります。臀部の座骨神経性の痛みや弱りは、腰椎や胸腰椎移行部に原
因があると捉えがちですが、もっと上部の上部胸椎(3番から6番まで)に問題がある
場合が多いのです。しかしほとんど見落とされる場合が多いのが実状です(日本伝
承医学では、難治な座骨神経痛性の腰痛のほとんどを上部胸椎の異常として捉え、
大きな成果を上げています)。


『全体と局所の二面から左膝の故障と左臀部から左下肢の筋力低下を捉えないと
復活は難しい』

上項に示したように、浅田選手の左膝の故障と左臀部から左下肢の筋力低下の真
の原因を捉える必要があります。
この浅田選手の体の全体に起こった姿勢のゆがみと局所の痛みや弱りとの関係
を無視しては、休養をとっても、どんな治療やリハビリ、筋力トレーニングを行なっ
ても根本的に回復する事は難しいと言えます。

特に浅田選手の代名詞とも言える得意のトリプルアクセルジャンプを復活させる
には、踏切足の左下肢の筋力と左の臀筋の筋力の回復が不可欠です。最近の浅
田選手のジャンプを見ていると、左の臀筋と左下肢の筋力の衰えが顕著です。
今のままでは飛び上がる筋力が低下したために、ジャンプにキレと空中での微妙
なバランスがとれないために着地で支えきれないのです。
特に臀部の筋肉は、踏切足を支える一番重要な筋肉です。元々浅田選手は冒頭
で述べてあります様に、細身でやせ型体型ですから、お尻も小さく臀筋が発達した
タイプではありません。それが左の臀筋の筋力を衰えさせては、ジャンプに支えと
キレがなくなるのは必然です。

さらに左膝の故障により、膝を支える筋群にも筋力低下が出ています。多分膝の
主要な筋肉の筋力検査では右足とそれほど変わりはないはずです。膝を伸ばす大
腿四頭筋と膝を屈曲する大腿二頭筋の筋力に大きな衰えがないのですが、膝を支
え、筋力を上に伝えるためにはもっと総合的な筋肉の微妙なバランスが必要です。
それは膝を円錐状に動かす筋肉のバランスです。膝関節の主要な動きは伸展と屈
曲で、これを担うのが前述の大腿四頭筋と大腿二頭筋という大きな長い筋肉です
が、膝関節を円錐状(螺旋状)に動かすには、他の内転筋を含めた総合的な筋肉
のバランスがなければ達成できません。

それが前述の様に、上体の右ねじれが左下半身に及び、特に左下肢の中間に位
置する膝にねじれの応力が加わり、膝にねじれのゆがみが生起されているのです。
これは当然膝の故障の隠れた最大要因となり、半月板、内外側の靭帯、腱、筋肉
に異常を発生させます。またこの膝のねじれた状態は、当然膝関節の円錐状の
動きに大きな支障を及ぼし、膝の本来の支える能力に低下が起こったのです。

膝関節の筋肉強化は伸展のための大腿四頭筋と屈曲のための大腿二頭筋を中
心に行なわれますが、膝にねじれた状態がある中での筋力強化は、膝を円錐状
に動かす総合的な筋肉を強化する事ができないのです。これが主要な筋肉の筋
力検査で異常が出なくとも、本来の膝を支える円錐状の動きの筋力にはならず、
膝の筋力低下を招いているのです。
上記の二つの問題を解決するためには、体全体に起きたねじれのゆがみと局所
に起こっている故障の両面からのアプローチが不可欠になります。


『どう対処すれば良いか』

これまで浅田選手の左膝の故障の原因と左下半身の筋力低下の根拠と機序は 、
詳細に解説してきました。故障の原因の根拠と機序が示されているという事は、
既に答えは出ています。体全体に起こっている右ねじれのゆがみと胸椎の3番から
5番の凹みの異常を修正すると共に、左膝に発生しているねじれを修復させるとい
う二面からのアプローチが求められます。

この両面からのアプローチを合理的に行なえるのが、日本伝承医学の治療法に
なります。日本伝承医学の技法は、人体のねじれを修正する事を目的に作られて
おり、体幹部に起きているねじれのゆがみを、古代人の開発した“踵落とし”の技
法である三指半操法(さんしはんそうほう)で修正します。次に心臓調整法を用いて
胸椎の3番から5番までの凹んだ上部胸椎を修正します。そして局所に発生してい
る膝のねじれを“ひびき操法”を用いて合理的に矯正していきます。
この様にして全体のゆがみと局所のゆがみの両面からのアプローチにより、浅田
選手に起こっている膝の故障と下半身の筋力低下を速やかに回復に向かわせる
事ができるのです(日本伝承医学の治療法の詳細は、ホームページを御覧ください)。
浅田選手の復活を心より願っています。