精神的ストレスの極限的症状として“ショック死”とい
うものが存在します。その例として第二次世界大戦時、ナ
チスドイツが行ったアウシュビッツ収容所での生体実験虐
殺事件があげられます。電気いすで次々に処刑を行い、見
せられてきた者は、実際にいすにすわらなくてもその恐怖
とショックで死んでしまいます。死体を解剖してみると全
身の血液が肝臓に集まっていました。肝臓が充血し、肥大
していたことが明らかになったのです。精神的ストレスが
肝臓を充血肥大させ、極限に達した場合、人は死に至って
しまうのです。
 心労の持続、精神的ストレスの持続は明らかに肝機能を
減退させ、肝臓の充血、肥大を引き起こしていくのです。
極度のストレスで一夜にして、黒髪が白くなるということ
もあります。これは、肝の充血のために、脳内が虚血状態
にさらされ、頭髪に血液、栄養が行き渡らなくなり起こり
ます。この軽度の症状が円形脱毛症になります。また山で
遭難したときなど、命の危機にさらされた場合、極度の精
神的ストレスで、2〜3時間で胃に穴があくといわれていま
す。これも、肝臓に血をうばわれるため、胃に血液がめぐ
らなくなり、胃の生理失調によって起こる現象であります。
 現在では胃潰瘍、十二指腸潰瘍が精神的ストレスによっ
て、引き起こされるといわれるようになりましたが、この
起こる機序は、実は肝臓に血をうばわれることによるもの
だったのです。
ストレスは肝臓を充血させる