頭に生じる痛み
 

【頭の神経痛】

 神経痛と言うと坐骨神経痛や肋間神経痛が浮かびますが、実は頭にも神経痛が
あります。頭の神経痛には三叉神経痛、舌咽神経痛、後頭神経痛等が挙げられます。
 三叉神経(さんさしんけい)とは、顔の感覚を脳に伝える抹消神経のひとつで
左右に一対ありそれぞれが顔の半分の感覚を司っています。三叉神経痛は顔面の
半分に突然痛みが、顔面神経痛とも言われます。
 三叉神経は脳の中枢部である脳幹から出ていて頭蓋底の骨を貫通しています。
故に脳幹部に炎症が起きるとこの三叉神経に障害が生じ、神経の伝達が正常に働
かなくなります。機能障害を起こした部位は痛みを起こすことで脳への血流を
確保する対応をとります。
 人間の脳は非常に熱(炎症)に弱く、脳内温度は42度を超えると脳神経細胞が
壊れていきます。脳に炎症が起きると中枢部である脳幹が機能障害を起こし、
生命維持にとって重要な神経が
遮断されていきます。三叉神経のみならず脳の
ネットワークすべてが破壊されていきます
。この脳幹部の機能が停止した状態
が脳死と判定されます。

 日本伝承医学で推奨している頭部冷却の意味はここにあります。脳の炎症は
後頭部、ひたい、首筋を冷却することで、速やかに除去しなければならないから
です。
 舌咽神経は喉、舌の後方3分の1から耳にかけての感覚を担っている脳神経に
なります。頭蓋外から頚静脈孔を通り頭蓋内に入り脳槽を通過し脳幹に入る経路
をたどります。脳に炎症が起き脳幹部に熱がこもると舌咽神経は障害されます。
機能障害が起きると脳は脳内の圧力(脳圧)を上げて、血液をいっきに集めて血流
を促します。
 舌咽神経痛は、クモ膜下腔内で脳血管がふくれあがり神経にあたることで突発
的な痛みを発症させます。脳は虚血(血液不足)になると脳が養えなくなくなる為、
血管がふくれて腫れて、脳への血流を確保しようと働きます。舌咽神経(第9脳
神経)の機能不全により舌の奥、扁桃付近、耳の周辺、あご等に痛みが生じます。

※くも膜下腔とは脳を包んでいるくも膜と軟膜との間にある空間をさし、ここ
は脳脊髄液で満たされています。


 神経は電気信号によって情報伝達する、絶縁体に包まれた電線に例えられます。
電気が電線の外にもれるのを防ぐために絶縁体は存在します。
 脳の虚血により血管がふくれて神経にあたって強く圧迫され続けると絶縁が
うまく働かず、ショートのような現象を起こします。この状態が痛みとして大脳
に送られます。
後頭神経痛は、後頭部の頭皮の感覚神経に起こる頭痛になります。片側の耳
から後頭部、首筋から頭頂部にかけての痛み、耳の後ろ側の痛み、ピリッと一瞬
電気が走るような痛み、チクチク、キリキリ、ズキズキするような痛みが起きます。
精神的なストレスが起因し、肝臓の充血、胆のうの腫れにより胆汁分泌不足が
生起され、血液が熱を帯びてくると(血熱)、脳への血流が阻害されるので、肩の
こり感から後頭神経痛が起きやすくなります。

 精神的ストレス(不安、いかり、恐怖、心配事、心労等)は、セロトニンやノル
アドレナリン等の疼痛抑制(痛み緩和)の神経伝達物質を著しく減少させてしまう
為、人間は精神的ストレスを受けると、痛みが強く感じられるようになり、痛み
の悪循環(負のスパイラル)を引き起こします。

【一次性頭痛】

●緊張型頭痛・・・精神的ストレスや長時間同じ姿勢で座って作業をしている
場合、頭の横の筋肉や肩や首の筋肉が緊張することで起きます。筋肉の緊張で血
流が悪くなり、筋肉内に老廃物がたまり、周辺神経が刺激されることによって
生じます。後頭部から首筋にかけて、ぎゅとしめつけられるような痛みが生じます。


●片頭痛(血管性頭痛)・・・脳の血管が拡張し三叉神経周辺を刺激し、刺激で
発症する炎症物質や女性ホルモンの変動によっても生じます。

●群発頭痛・・・・アルコールや血管拡張薬によって頭部の血管が拡張すること
で起きやすくなります。目の奥の方に生じます。

【二次性頭痛】

 頭部の外傷や脳血管障害等によって起きる頭痛になります。代表的なもので
くも膜下出血が挙げられます。突然激しい頭痛、吐き気にみまわれ、痛みで意識
を失うことがあります。くも膜下出血の多くは脳動脈瘤という血管のこぶが破裂
することで起きます。脳動脈解離の場合は脳の後方へ行く椎骨動脈に起きること
が多く、後頭部に強い痛みを生じます。

【頭に起きる痛み】

 頭痛は単にその部位だけをみていくのではなく、内臓との関連の中で捉えて
いかなければなりません。心臓のポンプ作用の低下、肝臓の充血、胆のうの腫れ
等の内臓機能の弱りが背景にあり、血液の循環・配分・質に乱れが生じると、
全ての生理機能に減退が起こります。脳に一過性の虚血が起こる為、体はこれを
回避しようと働くため、脳圧を上げて痛みを起こさせ、そこに血液を集めようと
します。

 日本伝承医学では低下している心臓機能を高め、血液の循環と配分の乱れを
正し、肝臓の炎症、胆のうの腫れを除去し、血液の質を改善することを主体に
技法を構築しています。

 また家庭療法として、肝臓と頭部の局所冷却法が必修となります。頭部は人体内
で最も熱がこもる部位になります。故に目、鼻、口、耳等、穴がいっぱい開いて
いるのです。こもった熱を速やかに体外へ放出するためです。頭痛は後頭部、
ひたい、首筋を冷却していくことでかなり改善することができるので実践されて
ください。

  ≪参考文献≫有本政治:著
     「頭痛を捉え直す
     「人の体のナゼとワケ~頭痛はなぜ起こるのか?その本質とは