アスペルガ―症候群

アメリカ精神学会によるDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)では、アス
ペルガー症候群と自閉症は、自閉スペクトラム症として統一され、このふたつは
ひとつの疾患概念として考えられるようになりました。以下は旧表示、アスペ
ルガー症候群として記載させて頂きます。

DSM-5Dignostic and Statistical Manual of Mental Disorders - 5
アメリカで作られた精神疾患の基本的な定義を示したもの。国際的に使用され日本でも精神疾患の診断に
用いられています。

 【脳の炎症】 

アスペルガー症候群は、先天的な脳機能障害により引き起こされると考えられ
ていますが、原因遺伝子の特定はされていません。

日本伝承医学ではアスペルガー症候群をはじめ、精神的症状を、先天的心肺
機能
(心臓と肺の機能)の弱さからくる、脳の虚血(血液不足)と捉えています。

心肺機能は遺伝的に丈夫な人と弱い人がいます。子どものときからすぐ熱を
出して具合が悪くなる子と風邪ひとつひかない元気な子がいるのと同じで、人に
は生まれもった体質や気質というものがあります。

心肺機能が弱いと、頭部や末端まで十分な血液が速やかに回らない為、脳に
虚血が起こりやすくなります。脳は血液によって養われているので、虚血になる
とその状態を回避しようと懸命に働き、脳細胞もフル活動するので、脳に炎症が
起きやすくなります。精神的疾患は脳の炎症といっても過言ではありません

脳に炎症が起きると脳内のたんぱく成分が固まり、脳内物質の生成が妨げられ、
神経伝達物質に乱れが生じます。自律神経、運動神経、感覚神経すべてに乱れが
生じてくるため、体はこれらを調整するために様々な症状を発生させていきます。

 【感受性について】

アスペルガー症候群の人は感覚が人並外れて敏感になります。感受性がすごく
強くなります。感受する能力が先天的に強い為、小さい頃は、少し変わっている
子と言われますが、小学校、中学校と成長するにつれて、協調性がない、こだわ
りが強すぎる、集団行動ができない、自己主張が強い、対人関係が苦手、人と
コミュニュケーションがうまくとれない、人の好き嫌いが激しい、倫理に反する
ことは絶対に許せない、感情的になりやすい、自己中心的、わがまま、食べ物の
好き嫌いが激しい、自分が関心のあることしかやらない等、全てにおいて、まる
で全人格を否定される場合があります。適応できないことから登校拒否、摂食障
害、引きこもり等にもなりやすくなります。周囲からの病症に対する理解、認知
度が低いことから、学校の教師からは毎回何かあるたびに注意され、親は、家庭
での育て方に問題があるのではないですか?と責められてしまいます。会社では、
組織や団体、集団行動に適応できにくいことから、何度も転職を繰り返したり、
仕事につけない状態が長期に及ぶこともあります。うつ病等のあやまった診断
を受けて、安易に薬を服用してしまうことで、脳内物質がバランスを崩し、さら
に症状を悪化させてしまうこともあります。

人間の脳や心は宇宙のように神秘で未知なるもので、いまだ解明できないこと
ばかりです。精神状態は計り知れなく、定義という尺度もあいまいなため、医者
でもはっきり診断することは困難な分野になります。

アスペルガーと診断されたら、全てが悪いことのように思われがちですが、
感受性が強いということは個性的なことで、自分が好きなことしか興味をもた
ないということは、ひとつのことに秀でた才能があるということになります。
現況否定するのではなく、個性としてその才能を見出し、理解し、認めてあげ、
伸ばしてあげることが大事です。

幼少期からひとつひとつの事象を注意され、人格否定され続けて育つと、子ど
もは親や人を信じられなくなります。自分の居場所がなくなり、生きる意味を
感じられず、自分の殻に閉じこもるようになってしまいます。

【ニューロン】

脳内で情報処理を行なっているのはニューロンと呼ばれる脳細胞になります。
人間の脳内には数千億個にも及ぶニューロンがあります。そしてニューロンには
さらに複数の枝分かれした突起があり、そのひとつひとつが他のニューロンと
接続して回路を形成しています。この接続部分をシナプスといい、ひとつのニュ
ーロンには数千個のシナプスが存在しています。ニューロンは電気信号
(電気的
活動
)で信号を送り、シナプスで化学物質に置き換え情報を伝達していきます(
ナプス伝達
)。脳がフル回転しているときは、脳内のネットワーク上を電気パル
スが飛び交って、高速にシナプス伝達が行なわれています。

シナプス伝達は一定ではなく、脳内環境や状況に応じて変化します。この現象
をシナプス可塑性
(かそせい)といいます。次に掲げるグリア細胞は、シナプス
可塑性を支持しています。

※神経細胞間で情報を伝えるシナプスの働きが、シナプス活動によって長期間、持続的に変化すること
  をシナプス可塑性と言います。記憶や学習の基礎的な過程と考えられています。

【グリア細胞】

脳内に存在するニューロン以外の脳細胞をグリア細胞といいます。グリアとは
接着物質という意味になります。グリア細胞は脳の構造を支えている支持細胞と
してだけではなく、脳内環境を一定に保つ働きも担っています。ニューロンと
グリア細胞の比率は
110ではなく、11ではないかと近年言われ始めました。
記憶や学習等の脳の高次機能はグリア細胞によって支えられている可能性が高い
という所までわかってきました。

グリア細胞のひとつにミクログリアというものがありますが別名炎症細胞と
言われます。脳に炎症がみられるときは、炎症細胞であるミクログリアが活性
化している状態と言えます。

【日本伝承医学】

日本伝承医学では、自律神経調整法と後頭骨擦過法を用い、交感神経の緊張を
とり、脳内の炎症を除去します。また
家庭療法として推奨している氷枕での
後頭部冷却、アイスバッグでのひたいや首筋冷却は、脳の炎症を速やかに除去し、
脳内温度を下げるため、症状を緩和することができます。