アキレス腱痛の操法

 外傷的にアキレス腱やふくらはぎの筋肉をいためた場合を除
き、アキレス腱痛は、精神的な緊張が持続している場合に起こ
ります。
猫が身構えたときの手足の形を例にあげてみます。猫は身に危
険が迫ったとき、素早く行動が起こせるように両手両足の爪を
地面に丸めて踏みしめています。私たちも精神的な緊張状態が
続くと、無意識に手足をこのような形にしています。精神的
緊張のため常にふくらはぎの筋肉が収縮し、足首が底屈し五趾
が丸まります。
ふくらはぎの筋肉は一本のアキレス腱となって踵の骨に付着
しているため、この下腿部の筋肉の収縮状態の持続により、
距腿関節の距骨を常に前方へ回転させていくことになります。
このようにふくらはぎの筋肉の収縮と距骨の位置に異常が生じ
たときに、アキレス腱炎やアキレス腱痛が起こります。この
状態で走ったり、過度のジャンプを繰り返すとアキレス腱に
強い負荷がかかり、アキレス腱断裂まで及びます。
 漢方的にいえば、精神的ストレスの持続により、まず肝臓、
胆のうに充血、炎症が起こります。中身の詰まった人体最大の
臓器である肝臓に全身の血液が集まってしまうと血液の配分が
乱され、脳(頭部)に虚血状態(血液不足)が生じます。また、
全身の血液の配分の乱れはその人の遺伝的に弱い臓器に影響を
及ぼします。
 遺伝的に心肺機能の弱い人は、まず心臓、肺に血液不足が起
こります。体は速やかにその機能回復をはかろうと、交感神経
を優位に働かせ、心肺機能を守ろうと作動します。交感神経が
緊張すると神経が過敏になり、後頭部、頸部、肩背部の筋肉を
緊張させ、「こり」の状態を作り出していきます。この「こり」
は体の後背面を後頭から足部までめぐる膀胱経に波及します。
アキレス腱につながる下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)は膀胱経
のルートであるため、ここに筋肉の異常収縮が起こります。
(経絡相関の心―膀胱、肺―膀胱の関係)
この状態が前述した足関節の底屈位、足趾の底屈(趾の丸め込み)
と複合されてアキレス腱痛、アキレス腱炎、アキレス腱断裂を
生じさせます。
このアキレス腱の痛みや炎症をとり去るには、上記の発生の
機序を認識し、肝臓の充血炎症をとる処方と自律神経の調整法
も重要になります。