【朽ちた子宮筋腫をなぜきらない方がいいのか?】

有本政治 2012.6.25

 明治37年生まれで、1月2日に102歳で大往生した私の母が、自分
の顔にできた1センチ位のじゃがいもの芽のような皮膚病を、こう話して
いました。

「顔にできるものは、いじったりとったりしてはいけない。自然にときが
たてばひとりでに落ちてなくなるから。」
母の言葉のとおり、皮膚病はい
つのまにか見事になくなっていました。長い経験から培った昔の人の知恵
は、たいしたものだと、つくづく感心させられた記憶が今も鮮明に残って
います。

 けがをしたり,おできのあとにできるかさぶたも、無理にはがさない方
が予後がきれいに治ります。かさぶたを無理にはがしてしまうと、出血を
伴うだけでなく、ばい菌が入ったり、再び化膿してしまうことがあります。
そして患部は、またあらたにかさぶたを作りなおすため、回復を大幅に遅
らせる事になります。

 車のドア等に指をはさまれたり、爪を強打したときに、爪の内部に出血
が起こり黒い血まめができることがあります。「爪が死ぬ」と表現します。
この死んだ爪が生え変わるときに、下から新しい爪が生えてきて爪がぐら
ぐらになり、取れそうになるときがあります。これを無理やり取ってしま
うと、出血が起こり、痛みが再発し化膿してしまいます。新しく生えてき
た爪が根づけば古い爪は自然に抜け落ちていきます。

 このように患部というものは、しっかり再生されれば、不必要な部分は
壊死し、自然に取れていきます。壊死とは、血液が流入しなくなることで、
組織が死んでゆくことをしめしています。


 朽ち果てた子宮筋腫を、不要だから切開してしまうことがよくあります
が、この状態はまだ壊死の段階ではありません。切開することによって、
炎症を起こし、化膿する場合もあります。筋腫は朽ちても血が通っていて、
まだ生きている状態にあります。まだ子宮とつながっていて、かさぶたの
ような役割を果たして、子宮を雑菌や炎症から守ってくれているのです。
 日本伝承医学の治療で全身の血液の循環・配分・質を整え血液の状態
を良くしていけば、低下した子宮の機能は回復していきます。筋腫の腫
れと充血がとれて、体は筋腫を作らなくても良くなっていきます。

 筋腫とは、子宮壁にできるオデキ(腫よう)のかたまりになります。
体内に貯まった内熱や毒素を、通常の手段で排出できなくなった場合に、
筋腫(オデキ)を作ることによって、内熱や毒素を出血と共に体外に排出
しようとします。

 この筋腫を異物だからといって手術によって取り去ってしまうと、体は
熱や毒素の排出先を失い次の対応にせまられていきます。症状を、より内部
に進行させ最終的にはがんを形成してまでも命を守ろうとしていきます。

 体に生じるものは、役目を終えて不必要と判断された時点で、自然に剥
離し体外へ排出されていきますので、人為的に取り去ってはいけません。

 子宮は、女性にとって最も免疫力が高く、体外に熱や毒素を排出しやす
い場所になります。
また、血液の排出、再生に関わる器官であり、女性は
子宮を通して血液を浄化しています。血液の排出、再生場所である子宮に
筋腫を作ることで、体内の血液を子宮に集めては排出させ、新しい血液を
再生する準備を繰り返しています。だから初期の段階であれ、朽ち果てた
状態であれ、切除してはならないのです。

 

【患者さんからの手紙】

『昨年来からの入退院により、先生には大変ご心配をおかけしましたが、
おかげ様で元気になりましたのでご報告いたします。ありがとうございま
した。

 15年前に発病したときから、「体は、命を守る対応はするけれども命
を死に至らしめることはしない」という先生の言葉を信じ、大量出血を繰
り返しながらも何とか生活を送ってこられました。「心臓機能をあげてが
んばっていきましょう。」と、有本先生がこれまで治療して下さったおか
げです。

 でも昨年50歳を迎え更年期になったことで、体に異常なむくみが出始
めました。生理が来なくなったことで体が熱の出場所を失ってしまったの
だと思いました。がんばって日常生活を送っていたのですが、倒れて動け
なくなってしまい、救急車で運ばれて入院になってしまいました。心不全
という診断でした。

 入院した時にMRIをとり、15年間共存してきた粘膜下筋腫が(子宮
の粘膜の中にできている、最も出血量を伴う筋腫)、子宮壁から茎のよう
につながってぶら下がり、子宮口から脱出して、膣の入り口まで下がって
きていることを知らされました。

 「筋腫は、握りこぶしぐらいの大きさで、朽ち果てて外へおりようとし
て膣の入り口まで、もう出てきています。茎をカットするだけの簡単な手
術なので、切りましょう。」と病院の先生に言われました。この手術は
「筋腫分娩」と言い、外来だけで簡単にできるものだからと言われ、私も
もうぶら下がっているだけなのだから切ってもいいと思ってしまいました。
 「切った茎の部分は、ばい菌が入り感染症になるといけないので、切り
口を焼いて処置します。」という説明でした。手術の日、私は緊張のせい
か、突然けいれんが起きて意識を失ってしまいました。すぐに点滴と酸素
吸入の処置がなされました。その日の手術は中止になりました。

 有本先生から、筋腫は朽ちても切ってはいけないというお話を伺い、手
術が中止になってよかったと思いました。病院の方には、手術は延期では
なく、中止したい旨連絡しました。

 昨日大学病院へ検診に行ってきました。「貧血もないので、筋腫もこのまま
様子を見ていきましょう。」と言われました。

 止まっていた生理が1年3か月ぶりに来ました。有本先生のおっしゃる
通り、まだ閉経ではなかったです。出血量はやはり多いのですが、仕事に
はちゃんと行かれています。また貧血にならないように、食事には気をつ
けるようにしています。いろいろほんとうにありがとうございました。』